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野鳥シリーズ45 ツグミ、クロツグミ

INDEX ツグミ クロツグミ
  • 冬鳥の代表格・ツグミ(スズメ目ヒタキ科)

     翼を下げ、そり返るように胸を張って立ち止まり地上で採食する赤茶色の鳥。シベリア東部からカムチャッカにかけて繁殖し、冬鳥として全国に渡来する。5月頃まで残る個体が多い。農耕地、草地、牧草地、河原、公園など開けた場所を好む。非繁殖期にやってくる冬鳥のため、鳴かずに口をつぐんでいることが和名の由来。
  • 見分け方・・・白色からクリーム色の眉斑が目立つ。翼上面の赤褐色や胸の黒班がよく目立つが、淡色のものから黒が濃いものなど個体変異が大きい。雌雄同色で、外観からの識別は困難。 
  • 正面から見ると、白い眉斑が逆立ち怒ったような顔に見える
  • ・・・「クワッ、クワッ」「クィクィクィ」。春には、「キョロロ、キョケッ」など。北に帰る直前になると、しきりに鳴く。 
  • 動画「ツグミの鳴き声」
  • 全長 24cm 翼開長39cm 
  • 生 活・・・低地から山地の林や農耕地、公園の芝生、河原、干潟など、広く棲息する。秋に渡来すると群れで見られ、カラスザンショウ、ハゼノキ、イイギリ、柿など木の実を好んで食べる。冬に入ると、群れは分散し、開けた場所で見られることが多くなる。地上を数歩歩いては立ち止まり、ミミズなどの小動物を捕食する。庭のエサ台にも良く現れる。 
  • 公園の芝生の上を歩きながら、ミミズや昆虫を捕食 
  • 動画「ツグミの群れと採餌」
  • 採餌中にしきりに胸をそらせるのは何故か?・・・開けた地上でエサを捕食するので、天敵の猛禽類から身を隠す場所がない。だから足早に4~5歩歩いては胸をそらせて立ち止まり、周囲を警戒する動作を繰り返す。それでも、車や人は余り警戒しないし、周りに障害物もないので撮影しやすい鳥である。
  • 鳥 馬・・・ツグミは、木にとまっているより、地面をピョンピョン跳ねるように歩いている方が圧倒的に多い。その姿が馬に似ているというので「鳥馬」という古い呼び名もある。
  • サクラのツボミとツグミ
  • バケツの水を飲みに来たツグミ
  • 裸木の枝にとまって、毛づくろいをするツグミ
  • 北へ旅立つ頃になると、渡りに必要な脂肪分が増え、越冬期の約3倍、体重の10%前後まで達する。飛び方は直線的で翼を数回羽ばたいては体につける動きを繰り返すことで、省エネ飛行ができるので、長距離の渡りに適している。
  • ノイバラの実を食べるツグミ ・・・夏、シベリアで繁殖し、越冬するため冬鳥として飛来する。シベリアでは、渡り鳥によって種子が運ばれ、ノイバラなどの低木林が形成されたとの報告もあるというから驚きだ。
  • 昔は貴重なタンパク源・・・数も多く美味だったらしく、かつては秋に渡ってきたばかりの時にカスミ網を使って捕獲し、食用として利用された。山稜を越えようとする群れが、オトリの声につられて一度に網に飛び込んできたという。肉屋が一軒もない地方では、貴重なタンパク源であった。特に渡来した直後と、春の渡りの直前は、脂肪をたっぷりと蓄えていて、美味いらしい。昭和22年にカスミ網が全面禁止になったが、密猟者は絶えなかったという。 
クロツグミ
  • さえずりが美しく黒っぽいクロツグミ(スズメ目ヒタキ科)

     木の梢で黄色いクチバシを大きく開けてさえずる歌の名手。カラスのように黒っぽいツグミ類。夏鳥として北海道から九州に渡来し、繁殖する。平地から山地の林に棲息するが、渡り期には、都市公園などでも見られる。 
  • 見分け方・・・白黒のツートンカラーに黄色のクチバシ、下面は白く黒い班が散在する。メスはマミジロのメスに似ているが、眉斑はなく、脇腹に橙色がある。 
  • ・・・高い木のてっぺんでさえずり、縄張りを主張しメスを呼び寄せる。「キョコキョコ」「ヒーホロッヒーホロッ」など明るくリズム感のある繰り返しで始まり、「ツリリン」「ツピーツピー」など、声量も大きく音楽的なさえずりは、黒いカラスのような顔には似合わず素晴らしい歌姫。 
  • 動画「クロツグミのさえずり 」
  • 全長22cm 翼開長34cm
  • 生 活・・・広葉樹林に多いが、スギなどの植林地でも見られる。ツガイで縄張りをもち、オスは木の梢で大きな声でさえずる。主に地上を歩きながら、ゴミムシなどの昆虫やミミズを捕食する。木の枝の上に蘚類や枯葉、土などを材料に巣を作る。産卵期は5~7月。卵数は3~4個。
  • クロツグミの幼鳥オス・・・成鳥のクチバシは黄色だが、黒い。さらにサイズも小さかったので、今年生まれた幼鳥のオスであろう。 
  • クロツグミの幼鳥メス・・・全体的に黒が淡く、脇腹が橙色を帯びているのでメスであろう。
  • 高村 光太郎作詞「クロツグミ」・・・クロツグミなにしゃべる。/畑の向うの森でいちにちなにしゃべる。/ちょびちょびちょびちょび、ぴいひょう、ぴいひょう/こっちおいで、こっちおいで、こっちおいで、/こひしいよう、こひしいよう、ぴい。/おや、さうなんか、クロツグミ/
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)