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野鳥シリーズ47 ジョウビタキ

  • 冬の庭先を彩る可憐な小鳥・ジョウビタキ(スズメ目ヒタキ科)

     代表的な冬鳥のひとつで、市街地の公園や民家の庭、耕作地、河原、草原など、様々な場所で見かける。体下面や尾羽の橙色が美しい可憐な小鳥。翼に白斑があることから「紋付き鳥」とも呼ばれている。漢字で「尉鶲」と書くが、「尉」は老人の能面のこと・・・オスの銀色の頭を老人の白髪の頭に見立てて名付けられた。他に「上鶲」とも書き、ヒタキの中で最上のものゆえ「上ヒタキ」という説もある。
  • 見分け方(写真左上がオス、右上がメス)・・・オスは銀色の頭と橙色の下面が美しく、冬枯れの人里で目立つ。メスは、やや地味だが、橙色の色彩が目立つ。雌雄で色彩が異なるが、オスもメスも翼に白斑があり、腰と尾の両側は橙色という共通点をもつ。
  • 全長15cm 翼開長22cm・・・大きさはスズメぐらいで、体を立てて止まる。
  • ・・・冬期は「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と細い声で鳴いたり「クワッ、クワッ」と鳴く。これは縄張り宣言のためである。 
  • 見つけ方・・・人里近い林の縁にいる鳥で、民家の庭にも来る。頻繁に尾をピクピクと振る動きで見つけることができる。 
  • 生 活・・・オスもメスも一羽づつが縄張りを持って生活する。10月中旬ころ、北方から渡来した直後は、二羽が向かい合って鳴き交わしたり、争いや追い掛け合うこともしばしば観察され、こうした行動を通じて冬の縄張りが確定していく。縄張り性が強く、車のミラーやカーブミラーに映った自分の姿をも攻撃するほど。昆虫、ミミズなどの小動物のほか、ナンテンやヌルデ、ツルウメモドキ、ヤマウルシなどの木の実も好んで食べる。
  • 低い枝や杭の上などにとまり、地上に舞い降りてエサをとる。とまり場では、おじぎをするように頭を下げ、尾を振る動作をよく行う。 
  • 冬鳥だが、繁殖記録もある・・・1983年、北海道の大雪山麓で5羽のヒナの巣立ちが確認され、日本初の繁殖記録となった。その後2010年に長野県岡谷市、2012年北海道上川町で繁殖が確認されている。韓国や中国でも繁殖しているので、日本で繁殖が確認されたとしても何ら不思議ではない。
  • 環境の変化と野鳥・・・国内では、ニホンジカの爆発的な増加によって森が破壊されたり、林床の生態系が変わったことによって野鳥にも大きな影響がでていることが明らかになっている。かつて森林軌道時代に伐採された奥地の広葉樹の森は見事に再生しつつある一方、里地里山の荒廃は拡大、鳥インフルの感染拡大、地球温暖化等グローバルな環境の変化も著しい。そうした変化に敏感な野鳥だけに、人間側の観察が、野鳥の変化、野生動物の変化についていけるかどうか。野鳥ファンや野生動物ファン、自然愛好家たちの観察記録に期待したい。
参 考 文 献 
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見分け 観察を楽しむ 野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)