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野鳥シリーズ49 アトリ

  • 冬、大集団で飛来するアトリ(スズメ目アトリ科)

     アトリは、日本人が最も古くから認識していた鳥の一つで、奈良時代から大群をつくる鳥としてよく知られていた。ユーラシア大陸の亜寒帯針葉樹林で広く繁殖し、日本には、冬鳥として毎年10月頃、数万羽の群れでやってくる。だから「集団の鳥」→「集鳥=あつとり」から「あとり」と呼ばれるようになったと言われている。ただし個体数は、年による変化が大きく、大群で飛来する年と、ほとんど見られない年もある。
  • 見分け方・・・胸の橙色が鮮やかで、腹から下は白く、股状の尾が特徴。オスの頭部はメスより黒っぽい。春先は頭の黒い夏羽のオスも見られる。
  • メスは、全体的に色が淡く、頭部が灰色味を帯びる。 
  • 右上がオス、左下がメス
  • 全長16cm 翼開長25cm
  • ・・・地鳴きは「キョ、キョ、キョ。チュユーン。」という声で、大群で鳴き交わしていると、やかましいほどである。
  • 生 活

     渡来した後、秋から初冬にかけては山地の森林で生活し、群れをなして木の実を食べる。ナナカマド、ズミ、カエデ類の木の実、コメツガ、モミなどの針葉樹の種子を好む。日本の飛来する個体数の年変動が大きいのは、北方の森林におけるエサの量が密接に関係していると言われている。越冬期から春先にかけては、山麓の雑木林や開けた水田地帯で数千~数万羽の群れが見られる。畑や田んぼの落ち穂のほか、北に帰る前には、樹木の新芽や花の芽なども食べる。
  • 動画「アトリの採餌 」
  • オスは春になると、次第に頭が黒くなる。 
  • アトリは、古事記や日本書記の時代から知られる古い鳥の名の一つ。
  • 江戸時代、京都の嵯峨野に大群のアトリが飛来し話題になったとの記録がある。そのアトリを見るために多くの見物客が訪れ、茶店までできたという。アトリは、花鳥風月を愛でる鳥の一つであった証しであろう。 
  • アトリの群れ
  • 動画「新芽を食べるアトリ 」
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)