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野鳥シリーズ59 モ ズ

  • 百の舌をもつ鳴きまね名人・モズ(スズメ目モズ科)

     黒いカギ状のクチバシをもち、「はやにえ」を作る「小さな猛禽類」。和名の由来は、様々な鳥の鳴きまねをすることから「百舌(モズ)」と名付けられた。北海道から九州まで全国に分布し繁殖する。寒冷地の個体は、冬季に平地や暖地に移動する。
  • 見分け方・・・黒いカギ状のクチバシ、オスは黒い過眼線、背面はネズミ色、胸の波状紋は少ない。
  • メス・・・茶色い過眼線と背面、胸から腹にかけて脇にかけて波状紋は多い。オス、メスとも気が強い。
  • モズの幼鳥・・・頭部のウロコ模様で幼鳥だと判断できる。
  • 全長 20cm 翼開長27cm 
  • ・・・「ギチギチ・・・」と低く鳴くが、秋には、ススキの茂る野原で杭などにとまって「ギョン、ギョン、キチキチ・・・キィーキィーキィー」と鳴いて縄張り宣言をする。 
  • 生 活・・・平地林、農耕地、河川敷など比較的開けた場所を好む。木の枝や杭などにとまって地上を見張り、昆虫やムカデ、カエルなどの小動物を捕食する。秋から冬にかけては、単独で縄張りをもち、初秋に縄張り宣言をする歌は「高鳴き」と言われる。繁殖期には、ツガイで縄張りを持ち、低木の茂みの枝に細い枯れ枝や細根、ビニール紐などで巣をつくる。産卵期は3~8月、卵数は4~6個。求愛給餌を行う。
  • 大きな昆虫を捕食
  • はやにえ(早贄)・・・モズは、捕らえたものを小枝やトゲ、有刺鉄線などに刺しておく習性があり、これを「はやにえ」という。はやにえは、秋~初冬に見られる。春から夏でも、獲物が大きいと、一旦はやにえにして固定し、クチバシでちぎって食べる。
  • はやにえをする理由
    1. モズは足が発達しておらず獲物を足で押さえて食べることができないため、食べやすいように、獲物を木の枝で固定する。
    2. 冬の食糧不足に備えるため
    3. エサが獲れ過ぎたため
    4. 食べている途中で、敵が近づいてきたので危険を感じ飛び去った。
    5. 自分の縄張りをアピールするためなど諸説ある。
  • ツガイの相手はメス次第・・・早春、メスは冬の縄張りを離れてオスの縄張りを訪問し始める。オスは、顔の黒い線をよく見せつけ、求愛ダンスをしながら小声で歌う。メスは、それを品定めをし、何羽ものオスの縄張りを回って相手を決める。オスには、決定権がなく、1羽のメスが去れば、次のメスを待つしかない。 
  • 求愛給餌・・・ツガイになると、メスは子供じみた声と身振りでオスに甘えると、オスは求愛給餌をする。オスは、繁殖期間中、しばしばメスにプレゼントする。しかし、メスの浮気で他のオスの血をひくヒナが1割程度混じっているという。
  • 「モズの声 かんにん袋 破れたか」(小林一茶)・・・秋、冬に向けて狩場を確保する高鳴きを見た光景を詠んでいるが、モズの気性の激しさをよく描写している。
  • 「百舌の銭勘定」・・・飲食の際に、自分では金を出さずに人に払わせて誤魔化すことをいう諺。昔々、モズとハトとシギが集まって十五文の飲食をした。モズは、ハトに八文、シギに七文を出させて、自分はビタ一文出さなかったという昔話に由来する。
  • 「百舌の借金」・・・昔、馬方だったモズが沓職人のホトトギスから馬の沓を買い、代金を払わずに逃げ回った。やがて、モズはホトトギスのために、木の枝に獲物を刺してご機嫌をとるようになったという。
  • 俳句(写真:モズの幼鳥)
    百舌鳥に顔切られて今日が始まるか 西東三鬼
    鵙(モズ)の贄野茨は一葉だにとどめず 福田蓼汀
  • 動画「モズのオス」
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
「野鳥観察図鑑」(杉坂学、成美堂出版)
「野鳥 ポケット図鑑」(藤本和典、主婦の友社)
「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社)
「野鳥博士入門」(平野伸明ほか、全国農村教育協会)
「俳句歳時記」(角川学芸出版)