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野鳥シリーズ63 サンコウチョウ

  • 長い尾とコバルトブルーのアイリング・サンコウチョウ(スズメ目カササギヒタキ科)

     オスは、特異的に尾が長いが、メスは尾羽が短い。共にアイリングとクチバシは鮮やかなブルーで美しい。5月下旬頃、スギ林の暗い沢沿いの林に行くと、美しい鳴き声が聞こえてくる。姿、鳴き声ともに美しいことから、野鳥ファンに人気が高い。夏鳥として渡来し、本州から屋久島までの各地で普通に繁殖する。平地から山地の針葉樹林に棲息し、付近に沢の流れがある薄暗いスギ林を好む傾向がある。しかし、近年、越冬地の熱帯降雨林の減少などによって激減し、なかなかお目にかかれない珍しい鳥になったと言われている。そんな中でも、クリプトン「野鳥の森」周辺では、その希少なサンコウチョウの生息が確認されている。
  • 名前の由来・・・「月、日、星、ホイホイホイ」と、聞こえることから、「3つの光の鳥」=「三光鳥」と名付けられた。 
  • オスの特徴・・・小型の鳥の中では尾羽が特異的に長い。特に真ん中の2本が飛び抜けて長い。頭、アゴ、胸は、紫がかった光沢の黒で、後頭部には短い冠羽がある。肩から尾羽までの上面は、紫みを帯びた褐色。腹から下尾筒は白い。クチバシとアイリングは鮮やかなコバルトブルー。 
  • メスの特徴・・・尾羽は短い。アイリングの幅が狭く、頭部から胸にかけてオスよりも色が淡く、灰色みがある。体上面、尾羽は茶色。 
  • 渡りの時期・・・東北では、春の渡りが5月中旬頃、秋の渡りは9月下旬ころ
  • 全長 オス45cm メス17cm 翼開長28cm。
  • ・・・繁殖期のオスは、「フィチィーヒーチィー、フィチィーチュー、ホイホイホイ」と鳴く。さえずりの「ホイ」は3回とは限らず、4回以上鳴くことも少なくない。10回前後鳴くこともあるという。本種はオスだけでなく、メスもさえずる。地鳴きは、「ギィーギィー」。 
  • 繁殖期のオス・・・尾羽は体長の約三倍、全長45cmほどに達する。しかし、越冬地では、オスの尾羽は抜け落ち、メスに近い大きさになる。 
  • さえずらない時期の見つけ方・・・さえずる直前やさえずりとさえずりの間に「ギッ、ギッ」という濁った声で鳴く。この声を覚えると、秋の渡り期など、さえずらない時期でも、その存在に気付けるようになる。 
  • スギの植林地でよく見かける。人里近くの大木が繁った社寺林でも繁殖することがある。 
  • 縄張り意識が強い・・・日本に渡ってきたオスは、すぐに縄張りを主張して、後頭の冠羽を逆立てて激しくさえずる。縄張り争いになると、ライバルと激しくさえずり合う。
  • 採餌、食性・・・英名のFlycatcherのとおり、飛んでいる虫(ハチやハエ、チョウなど)をフライングキャッチで捕らえる。岩手県の調査によれば、ヒナに給餌していたエサは、トンボ、カゲロウ、アブ、エゾハルゼミ、チョウ、ガ、カメムシ、ガガンボの昆虫類であった。給餌の際に幼虫が見られず、全て成虫であった。その理由は、サンコウチョウが主に空中で採餌していることの裏付けでもある。 
  • ・・・細かい枝の又やツルなど天敵が近づきにくい位置にカップ状につくる。枝や草などで編み、クモの糸でコケをつけて保護色にするなど、かなり手の込んだ巣をつくる。(写真提供:髙久健氏ケンさん探鳥記)  
  • 岩手県の調査・・・採取した巣を調べると、スギの樹皮、蘚苔類、細根、クモの糸などが使われていた。産座にはリゾモルファー(根状菌糸束)が敷かれ、外周にはウメノキゴケが貼り付けられていた。こうすることによって保護色の役割を果たし、目立たない。天敵に対して疑似防衛の意味があると考えられる。
  • 繁殖が失敗する理由・・・ハシブトガラスやアオダイショウなどの天敵との関係が指摘されているが、岩手県の事例では、終日の雨や強風によって抱卵行動が継続できなくなったり、卵が巣から放り出されたりするからではないかと推測している。
  • 雌雄で交代しながら抱卵する。オスの尾羽は長いので、抱卵中は巣からはみ出してしまう。巣は、地上や樹洞ではなく、比較的開けた空間につくるのは、長い尾のオスも抱卵できるようにするためと言われている。一夫一婦のサンコウチョウは、育雛も共同で行う。(写真提供:髙久健氏ケンさん探鳥記)  
  • 産卵期 5~7月、卵数 3~5個、抱卵日数 約13日、巣立ち日数 約10日。
  • ヒナの糞の処理・・・育ヒナ前期では親が飲み込み、後期ではヒナの肛門から排泄されると同時に親がくわえて巣から約30m離れたほぼ同じ場所に捨てていた。糞の処理を巣から離れた場所に捨てるのは、天敵に対して巣の位置を特定されないためのと考えられている。
  • サンコウチョウの水浴び
  • サンコウチョウの水浴びその2
  • 近年、著しく減少・・・主な越冬地はインドネシアのスマトラ島だが、その熱帯降雨林の減少によって、近年、著しく減少していると言われている。 
参 考 文 献 
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
  • 「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
  • 「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
  • 「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
  • 「野鳥ウォッチングガイド」(山形則男ほか、日本文芸社)
  • 「読む植物図鑑5」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
  • 「森の野鳥を楽しむ101のヒント」(日本林業技術協会、東京書籍)
  • 「岩手県におけるサンコウチョウの繁殖」(岩手県立博物館研究報告第29号)