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野鳥シリーズ64 ヤマドリ(山鳥)

  • 火の鳥のモデルになった秋田県の鳥・ヤマドリ(山鳥)

     ヤマドリのオスは、火の鳥のモデルにもなった長い尾が特徴のキジの仲間。メスは、尾が短く全体的に地味な印象を受ける。翼は短く、飛翔力は弱い。本来地上性で、地面を脚でけ散らして植物の実や昆虫類を捕食する雑食性。秋田の人気の伝統食「きりたんぽ鍋」は、元々県北地方のマタギたちが、ご飯をつぶし、棒に刺して焼いて食べていた携行食料を、獲物のヤマドリや天然マイタケとともに煮たのが起源とされている。それだけヤマドリの優れた肉質と味わいは素晴らしく、鳥撃ちハンターの中でも「最高峰のターゲット」になっている。日本固有種。日本には5亜種。留鳥として本州、四国、九州の山地に分布。狩猟鳥。 
  • 秋田県の鳥・・・キジ科に属するヤマドリは、秋田県に広く生息する日本固有種として親しまれ、昭和39年、公募によって秋田県の鳥に決きめられた。
  • 名前の由来・・・山地に生息する鳥であることから。 
  • ♂の特徴・・・ほぼ全身が濃い赤橙色で、頭部から首にかけては色が濃く、体上面、下面に白い羽縁がある。目の周囲に赤い裸出部がある。尾羽はとても長く、灰、橙、黒色の横帯模様がある。 
  • ♀の特徴・・・ほぼ全身が淡い赤褐色で、尾羽は短い。 
  • 全長 ♂125cm、♀55cm 
  • 歌人・柿本野人麻呂(7世紀後半)・・・「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む」と詠んだ。「しだり尾」は、非常に長いため自重で垂れ下がって見える尾をいう。遥か昔からヤマドリの尾は、長いものとして知られていたことが分かる。
  • 観察、撮影が難しい・・・林道を車で走ったり、歩いている最中、突然、足元から大きな羽音を立てて逃げ出すことで、初めて気付かされることがほとんど。だからカメラを構えても、既にヤブの中に隠れてしまった後だから、観察、撮影は難しい鳥である。 
  • 生息地・・・丘陵から1500m以下の山地のよく茂った林に棲息し、沢沿いの暗い林に多い。かつて個体数は極めて少ないと言われていたが、近年、林道を車で走るとよく出会うことから、個体数が多くなっているように思う。 
  • 食性・・・主に地上を歩きながら草の葉、花、実を食べるほか、昆虫やクモなどの小動物も食べる雑食性。高い木の枝に止まって木の実や新芽を食べることもある。 
  • 驚くと・・・地上から大きな羽音を立てて飛び上がり、斜面を滑翔して逃げ去る。 
  • 繁殖期・・・♂は、翼で空気を叩くようにして、ドドドドッと聞こえる音を出す。この音は、縄張り宣言の意味を持っているという。キジと同じく一夫多妻の生活をすると言われているが、詳しいことはわかっていない。 
  • 産卵・・・産卵期は4~6月。地面を浅く掘って巣を作り、枯れ草などを敷いて、7~10卵を産む。
  • 非繁殖期・・・数羽から10数羽の群れで生活する。 
  • マタギとヤマドリときりたんぽ鍋・・・その昔、マタギたちは、ご飯をつぶし、棒に刺して焼いていた携行食料を、捕獲したヤマドリやキジの鳥鍋と煮込んだものが始まりとされている。素朴な山の料理が、鶏肉の汁にたんぽを入れ、季節の野菜やキノコと一緒に煮込む鍋料理に変化したのは、昭和に入ってからと言われている。
  • 放鳥・・・狩猟用の獲物として飼育していたキジやヤマドリを放すことが、日本各地の猟友会により続けられている。放鳥に際しては、地元の個体群から卵もしくは成鳥を手に入れ、それを増殖してその地域に放すのが基本とされている。
  • 中仙町豊岡初代シカリ・故藤沢佐太治とヤマドリの放鳥・・・「中仙町史 第五節狩猟」抜粋
     中仙の熊打ちマタギも次々と世を去り、伝統的な熊とり技術を伝えている人は少ない。その中で豊岡の藤沢佐太治は、この道50年のベテラン熊とりマタギといわれ、若い頃から熊とりマタギのグループに入り、連中に厳しいマタギの法則や役割を仕込まれた筋金入りのマタギであり、マタギのシカリでもあった・・・
     昭和49年、藤沢佐太治が中心になって鳥獣供養碑を建立して、マタギから足を洗うと自然保護の立場から、ギジ・ヤマドリなど8種類の野鳥を飼育し、ヒナを育てて県に納入し猟友会などで放鳥している。
参 考 文 献
  • 「ぱっと見分け観察を楽しむ 野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社) 
  • 「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)  
  • 「中仙町史 文化編」
  • 「阿仁川流域の郷土料理」(建設省東北地方建設局森吉山ダム工事事務所)