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野鳥シリーズ70 フクロウ・エゾフクロウ・・・

  • 夜の猛禽・森の賢者・フクロウ(フクロウ目フクロウ科)
     羽角がなく、ハート形の丸い顔と目が黒いフクロウ類。神社林や屋敷林などの大木の樹洞に営巣し、留鳥として九州以北の平地林から山地林に棲息する。鳴き声は「ぼろ着て奉公」などと聞きなされ、昔から親しまれてきたが、近年は数が減っているという。国内に4亜種が生息しているが、北海道に生息するエゾフクロウ以外は分布域が不明確。夜行性で、主に夕方から活動を始め、ネズミなどを捕食する。特にリンゴ園の害獣・ハタネズミを退治してくれるフクロウは、「リンゴ園の守り神」として親しまれ、青森市の鳥になっている。
  • 写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記
  • INDEX フクロウ・エゾフクロウ、世界のフクロウ
  • 特徴・・・頭でっかちの寸胴で、羽角がなく、顔がハート形で大きい。顔の正面に大きい褐色の目が二つ並び、愛嬌のある顔つきをしている。こげ茶色の縁取りがあり、虹彩は暗色。頭部から背、体上面は褐色。胸から体下面は、白っぽく、こげ茶色の縦斑がある。雌雄同色。
  • 体色は地理的変異がある・・・北海道のエゾフクロウは白っぽく、南へ下るほど黒くなる。
  • 名前の由来・・・平安時代の文献には、フクロウに「父母食らう」の字を当てていることから、親を食い殺す恐ろしい鳥からきたとの説がある。これは中国に古くから言い伝えられている「母を食う親不孝な鳥」に拠っている。その他「ホウホウ」や「ホホヤ」と鳴く鳴き声説など諸説ある。
  • 漢字「梟」・・・中国最古の部首別字書には、「梟は不孝の鳥なり。夏至・冬至に梟を捕り、これを張り付けす。鳥の頭に従い、木の上にあり」とある。すなわち梟の漢字は、梟は母を食らう親不孝の鳥なので、夏至や冬至の日に捕らえて、見せしめに頭部を切り離して木に架けてさらし首にしたことによるという。だから後に、斬罪人の首を見せしめに木に架けてさらすことを梟首(きょうしゅ)と呼ぶようになった。中国人には、不吉な鳥としてかなり嫌われていたことが分かる。
  • 縁起の良い字を当てるのは最近のこと・・・昔は不吉な鳥と見られていたが、ギリシャ神話に起源をもつ「森の賢者」「学問の神」というプラスイメージから発展して、「不苦労」「福郎」などと「幸福」を呼ぶ鳥として絶大な人気を誇るようになった。
  • 暗闇でも見える大きな目・・・巨大な眼球は集光力が高く、その網膜内には、桿体(かんたい)細胞が多く、明るさに対する感度が高い。しかも正面に二個並んでいるので立体視もできる。真っ暗闇では、優れた聴覚が機能する。
  • 優れた聴覚・・・ハート形の大きな顔は、パラボラアンテナのように機能して集音し、微かな音も左右の耳に誘導することができる。左右の耳は離れ、上下に微妙にズレているので、左右方向だけでなく、上下方向の探査も可能で、音源の位置を立体的に把握できる。
  • 360度近く回転する首 ・・・正確には270度回転する。
  • 音を立てずに飛ぶ・・・フクロウの風切羽の縁は、櫛やノコギリの刃のようなギザギサ(セレーション)になっていて、飛翔時に空気の渦などをつくらせないことから、極めて静かに飛ぶことができる。この構造は、新幹線の騒音対策として車輛の設計にも応用された。
  • 食性・・・主食はネズミで、小鳥やイタチ、時には昆虫や小動物も食べる。
  • 待ち伏せ型の狩り・・・狩りは、木の枝にじっと止まって獲物を探す待ち伏せタイプ。耳で獲物の出す音を聞き分ける。獲物がやってくると、音を立てずに飛行し、鋭い爪で捕獲する。雨の日や風の強い日は、耳が使えないので、昼間でもエサをとったり、天気の良い日は捕りだめをすることもある。
  • 夫婦の絆はかたく、一生に及ぶ・・・早春になると、♂と♀はお互いに体を寄せ合い、頭の羽毛に触れ合うなど、哺乳類の毛づくろいのような仲睦まじい光景が見られる。
  • ・・・3月頃から鳴き始める。♂は「ホーホー」と鳴いてから少し間をおいて「ゴォーホォーホー」と鳴く。後半部の鳴き声は、昔から「五郎助奉公(ごろすけほうこう)」「ぼろ来て奉公(ぼろきてほうこう)」などと聞きなす。♀は「ギャーギャー」「フギャーフギャー」などと鳴く。
  • 大木の樹洞に営巣・・・1~5卵を産む。第1卵を産むと抱卵を開始する。
  • 第1卵から最後の卵を産み終えるまで日数がかかる。だから大きさの違う飛べないヒナが、巣穴から出て枝に並んでいるのを見かけるのはそのためである。
  • ♀が卵を温め始めると、♂は狩りに打ち込む。獲物を捕まえると、巣の前で鳴いて♀を呼び出し、獲物を口移しに与える。
  • 巣立ち・・・まだ翼の羽も生えそろわず全身が綿羽に覆われたヒナ状態のまま、樹洞の巣穴から落ちるようにして地上に下りる。足とクチバシを使って次の木によじ登って枝伝いに移動する。それができない時には、再び地上に下りて次の木によじ登るといったことを繰り返しながら巣から遠ざかっていく。
  • エゾリスを捕まえ給餌
  • 民話「フクロウの染物屋」
     フクロウは、鳥たちの注文に応じていろんな色に染めてやる「染物屋」をしていた。カラスが一番美しい色に染めてほしいと注文したので、色々考え工夫しているうちに真っ黒になってしまった。それでカラスはたいそう怒り、今でもフクロウを見つけると追いかけまわすという。フクロウは、カラスが活動する昼間はひっそり身を隠していて、カラスが寝ている夜に活動するのはそのためで、「ノリつけ干うせ」と鳴くのは、かつて染物屋をしていたときの口癖だとか。
  • 特集リンゴ園の必殺仕事人 青森市の鳥フクロウ・・・ハタネズミは、リンゴの根や茎、樹皮が好物で、夜になるとゾロゾロ出てきてリンゴの木にダメージ与えてしまう害獣である。これをフクロウが退治してくれるので、フクロウはリンゴ園の守り神みたいな存在。青森市は、リンゴ園が広がる浪岡町と合併した際、住民の意見を募って決まった市の鳥がフクロウである。
  • 弘前大の研究チームによる成果
     昔からフクロウは、農家にとってリンゴ樹の樹洞を利用して営巣する馴染み深い鳥だった。研究チームは、近年、そのフクロウの営巣場所が農地から失われたことにハタネズミ被害の深刻化の一因があると考え、青森市浪岡地区のリンゴ畑での調査を開始。
     その結果、繁殖期のフクロウはヒナを育てる1ヶ月に最大300匹の餌生物を捕獲し、そのうち8~9割がハタネズミであることが分かった。さらにフクロウはハタネズミ密度の多い園地を選択的に営巣に利用し、巣周辺ではハタネズミの個体数が平均63%減少することも明らかになった。
     東教授は、フクロウが増え過ぎたハタネズミの数を減らし、リンゴ畑に生態系のバランスを取り戻す効果が証明できたとしている。その研究成果は、英生態学会の科学誌に発表された。
  • 俳句・・・梟の季語は冬
    梟のねむたき貌(かお)の吹かれけり 軽部烏頭子
    梟のむく~氷る支度哉 一茶
    梟や聞耳立つる三千騎 正岡子規
世界のフクロウ
  • カラフトフクロウ・・・インパクトのある大きな顔が特徴で、物凄く音が聞こえるらしい。だから姿が見えない雪の下にいるネズミも、百発百中で捕まえるという。
  • オナガフクロウ・・・一般的なフクロウ類に比べれば、顔が小さい。オナガフクロウは、昼間活動するから、音よりも目で獲物を見つける。800mも離れているネズミも見つけるという。尾が長く、飛んでいる姿がタカそっくりだから、「ホーク・アウル(タカのようなフクロウ)」と呼ばれている。
  • メンフクロウ・・・ハート形のお面をかぶったような顔をしているから、メンフクロウ。欧米では、高音の目立つ鳴き声から「金切り声のフクロウ」とも呼ばれている。また、ヨーロッパでは、教会、古城、人家の納屋などに営巣するフクロウとしてよく知られている。
  • シロフクロウ・・・ハリー・ポッターの映画で人気が出たシロフクロウ。北極に生息しているから、雪の中では白い体が目立たない。♂はほとんど真っ白。上の写真の♀は、斑点模様がある。これは地面にある巣で卵を温めている時、目立たないようにするためである。北極がもの凄く寒かったりすると、北海道まで南下することがあるという。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
  • 「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
  • 「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
  • 「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
  • 「知っているようで知らない 鳥の話」(細川博昭、サイエンス・アイ新書)
  • 「猛禽探訪記」(大田眞也、弦書房)
  • 「里山の野鳥百科」(大田眞也、弦書房)
  • 「おしえてフクロウのひみつ」(柴田佳秀、子どもの未来社)
  • 「namioka j seed Part2秋号/特集リンゴ園の必殺仕事人 青森市の鳥フクロウ
  • 写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記