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野鳥シリーズ71 コノハズク、オオコノハヅク・・・

  • 仏法僧と鳴くコノハズク(フクロウ目フクロウ科)
     ムクドリくらいの大きさしかない日本最小のフクロウ類で、鳴き声が「仏法僧」と聞きならされる。その声の主は、ブッポウソウではなく本種で、「声のブッポウソウ」とも呼ばれている。夏鳥として九州以北の森林に生息し、渓流沿いのよく茂った林を好む。冬期は熱帯に移動する。春の渡り期には平地林でも観察される。甲虫や蛾、クモなどを捕食する。かつて沖縄に生息するリュウキュウコノハズクは、亜種とされていたが、分類が見直され別種となった。
  • INDEX コノハズク、オオコノハヅクリュウキュウコノハズク
  • 写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記
  • 特徴・・・オオコノハズクより小さく、褐色の顔に目の虹彩は黄色。足指に羽毛がない。短い羽角は寝かせていて見えないことが多い。体上面には肩羽の白斑がつながって線状に見える模様がある。体下面は、白っぽく、黒く細い縦斑がある。数は少ないが、全体が赤っぽく見える赤色型も見られる。雌雄同色。全長20cm。
  • 名前の由来・・・木の葉のように小さなミミズクというのが和名の由来。ミミズクは、奈良時代から「つく」の名で知られている。「つく」とは、羽角が付いているので「付く」あるいは突き出ているので「突く」。江戸時代に耳が加わって「みみづく」と呼ばれるようになった。
  • 耳があるのからフクロウではなくミミズクだが・・・耳に見えるのは、実は飾り羽で、羽角と呼ばれている。
  • ・・・繁殖期には、主として夜間に「ブッキョッコー」あるいは「ウッコッコー」と、高く澄んだ声で繰り返して鳴く。この声を「仏法僧」と聞きなしている。「わが国はみのりの道ひろければ鳥もとなふる仏法僧かな」と詠われているとおり、鎌倉時代から鳴き声が仏法僧と聞きならされている幻の鳥であった。昔からブッポウソウが鳴いていると誤認されて、そのまま和名がつけられてしまったという。その誤認が分かるのは、何と昭和11年になってからだという。以来、コノハズクは「声のブッポウソウ」と呼ばれるようになった。
  • 遠野物語51話 オット鳥=コノハズク
     山にはさまざまな鳥が棲むが、最も寂しい声の鳥はオット鳥である。夏の夜中に鳴く。浜の大槌から荷駄運びの者などが峠を越えてくると、遥か谷底でその声を聞くという。
     昔、ある長者の娘がいた。またある長者の男の子と親しみ、山に行って遊んでいると、男が見えなくなった。夕暮れになり、夜になるまで探し歩いたが、これを見つけることができず、しまいにこの鳥になったという。
     オットーン、オットーンと言うのは、夫のことである 。終わりの方がかすれて哀愁のある鳴き声である。
  • 日中は、よく茂った樹冠の中などで目を閉じ眠っている。人が近づくと、体を細くしたり、細目を開けたりする。警戒すると体を細めるのは、木に擬態するためと言われている。
  • 営巣・・・東北北部と北海道では、平地から山地の林に棲み、主に樹洞に営巣する。
  • 産卵・・・6~7月、4~5個の卵を産む。
  • 給餌・・・夕暮れになると、♂♀共にヒナにせっせとエサを運ぶ。特に日没後1時間ぐらいと日の出前1時間ぐらいのことが多い。
  • ヒナの巣立ち
  • 食性・・・夕方から活動を始め、昆虫類を主食にしている。
オオコノハズク
  • 耳のような羽角と橙色の目をもつオオコノハズク(フクロウ目フクロウ科)
     長い羽角と橙色の目が特徴で、フクロウの仲間では最も普通にみられる中型のフクロウ類。留鳥として小笠原諸島を除く全国に分布する。北日本では、冬季に暖地へ移動する個体がいる。平地から山地のよく茂った林に棲息。夜行性で、ネズミや昆虫類、鳥類などを捕食する。樹洞で繁殖するが、巣箱を利用することもある。全長25cm
  • 特徴・・・コノハズクの目の虹彩は黄色だが、本種は橙色で赤みがあることで見分けられる。足には羽毛がある。顔盤は、黒く縁どられている。体全体が樹肌にそっくりの色で、遠くから見ると木のコブに見える。日中は羽角を立てて木に擬態しているが、夜間は伏せている。
  • 日中・・・平地から山地の林や竹林などで休息していることが多いが、余り鳴かないので目立たず、姿を見る機会は少ない。時折、市街地にも飛来し、神社や寺などの木に止まったり、巣箱から顔を出していることもある。
  • 繁殖期・・・4~5月、樹洞や家の軒下などを巣にし、巣材を使わずに4~5個の卵を産む。♀が抱卵する。♂は、1夜に3~4回にわたって♀にエサを運んでくる。巣内にいる♀は、♂が近づいてくると「ミューミュー」と子猫に似た声を出す。
  • ・・・繁殖期には、「ウォッウォッウォッ」という声を長く続けて鳴き、「ウォッウォッウォ」と尻上がりの声を出すこともある。
  • モビング・・・日中、小鳥たちは、行動が不自由なフクロウの仲間を見つけると、日頃の恨みを晴らそうと集まって来て、なじるように鳴き騒ぐ。このように被捕食者が天敵の捕食者をなじり騒ぎたてる行動を、動物行動学ではモビングと呼んでいる。相手に決定的な打撃を与えることはないので「擬攻撃」と訳されている。日本では、この習性を利用した古式猟法が「木菟引き(ずくひき)」である。
  • 古式猟法「木菟引き(ずくひき)」・・・夜行性だから日中のフクロウ類は、立場が弱い。昼間、彼らを森林に放つと、小さなシジュウカラから大きなカラスまで、様々な鳥がやってきて、追い払おうとする。その習性をヒントに、ミミズクをオトリにした鳥の捕獲が行われた。これを「木菟引き」と呼んだ。江戸時代だけでなく、明治になってからも行われていたという。
リュウキュウコノハズク
  • 南の島のコノハズク(フクロウ目フクロウ科)
     褐色や赤みの強いものなど個体差がある小型フクロウ。留鳥としてトカラ列島以南の南西諸島に分布。平地から山地にかけての森林に生息する。夜行性で街灯に集まる昆虫類を捕食する。コノハズクとは別種にされたが、屋外での見分けは難しいと言われている。
  • ・・・鳴き声はコノハズクと明らかに異なる。♂は、春から秋にかけて「コッ・コホッ、コッ・コホッ」と鳴き、♀はそれに応えるように「ニヤッ」「ミャウ」と鳴く。
  • 夕暮れから活動を始め、道路際など割合明るい場所に出てきて、昆虫などを捕食する。
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
  • 「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
  • 「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
  • 「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
  • 「里山の野鳥百科」(大田眞也、弦書房)
  • 「猛禽探訪記」(大田眞也、弦書房)
  • 「くらべてわかる野鳥」(叶内拓哉、ヤマケイ文庫)  
  • 「ちくま日本文学全集 柳田国男」(筑摩書房)
  • 写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記