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野鳥シリーズ78 ツミ

  • 住宅街でも繁殖する日本最小のタカ・ツミ(雀鷹、タカ科)
     留鳥または夏鳥として全国に分布する、日本で最小のタカ類。山地林から平地林、公園や住宅地付近の緑地などでも繁殖する。森林性で主に小鳥類を捕食するが、昆虫も捕食する。ツミの巣の周りにはオナガが集合して繁殖する。ツミは、オナガ大の鳥を捕食することもあるので怖いが、それ以上にオナガの卵やヒナの一番の捕食者・カラスから巣を防衛してくれるからだという。
  •  写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記
  • ♂と♀の見分け方・・・♂の虹彩は濃い赤色だが、♀は黄色。♂の体下面は白く、橙色の横斑がある。♀の下面は、褐色の横斑がある。(写真:右が♂、左が♀) 
  • 幼鳥の特徴・・・胸に縦縞、胸以下に横斑がある。 
  • 名前の由来・・・雀のように小さい鷹の意味から、「雀鷹」と書く。元々「ツミ」は、本種の♀に付けられた名前で、♂は「エッサイ」と呼ばれていた。♂と♀では、狙う小鳥の大きさが違う。だから、♂と♀を区別したのは、鷹狩が盛んな時代の名残ではないかと言われている。 
  • 豆美(ツミ)・・・日本最古の漢和辞典には「豆美(ツミ)は、ススミタカとも呼ばれ、よくスズメを捕らえて、ひっさげている鷹」といった説明がある。「豆」は小さいの意で、「美」はそのことを明示する接続語で、小さい鷹という意味である。 
  • 全長 ♂27cm(上の写真)、♀30cm(下の写真) 
  • ・・・繁殖期、巣の近くで「キーッ、キッキッキッキッ」と尻下がりに鳴く 
  • 食性・・・主に小鳥を捕食するが、小形ネズミや昆虫も捕食する。住宅地の中には、スズメやシジュウカラが多い。ツミは、こうした小鳥の巣立ちヒナを格好のエサとして捕食する。 
  • 巣材運び・・・♂と♀が協力して巣つくりをする。
  • 営巣・・・針葉樹の枝に枯れ枝を積み重ねて皿形の巣をつくる。 
  • 4月中旬~5月に3~5卵を産む。抱卵日数は約30日。(写真:交尾)
  • 産まれたばかりのヒナは、白い産毛をまとっている。 
  • ツミのエサ渡し・・・♂がスズメなどを捕食し、♀に渡す。ヒナにエサを与えるのは、♀親である。
  • 幼鳥の水浴び
  • ツミはオナガのガードマン・・・ツミはカラスを追い払うことができる。その威を借りる知恵者がオナガである。ツミの巣の周辺約30m程の範囲内に数ツガイのオナガが巣をつくるという事例は珍しくないという。なぜならツミは、巣の周辺約50mをカラスから徹底的に防衛する。だからオナガの繁殖もうまくいくという訳である。 
  • 巣立ったばかりの幼鳥は、セミを捕食する。幼鳥だけでなく、成鳥もセミを食べる。成鳥も、豊富で捕りやすい旬の獲物を利用しているのであろう。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
  • 「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
  • 「鳥のおもしろ私生活」(ピッキオ編著、主婦と生活社)
  • 「森の野鳥を楽しむ101のヒント」(日本林業技術協会、東京書籍)
  • 「猛禽探訪記」(大田眞也、弦書房)  
  • 写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記