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野鳥シリーズ81 カッコウ

  • 誰でも鳴き声で分かるカッコウ(郭公、カッコウ科)
     キジバトほどの大きさで、「カッコー、カッコー」と鳴くおなじみの鳥。特徴は、下面の横縞が細く間隔が狭いこと。九州以北の明るい林、高原、牧草地などに渡来する。他の鳥が敬遠する毛虫や毒を有する昆虫の虫なども好んで食べる。カッコウの仲間であるホトトギスやツツドリと同じく、他の鳥に托卵して繁殖する。春の渡りの頃は、鳴き声をよく耳にするが、秋の渡りの際はほとんど鳴かないので、気付かないことが多い。 
  • 写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記
  • 特徴・・・カッコウの仲間では最も大きく、下面の横縞は細く密である。虹彩は黄~黄褐色。類似種のツツドリはやや小さく、下面の横縞が太い。ホトトギスは小さく、下面の横縞の間隔が広く、下尾筒に横縞が入らない。 
  • 名前の由来・・・鳴き声に由来するのは、洋の東西を問わない。中国名の「郭公(カッコウ)」、英名の「Cuckoo(クコー)」、仏名の「Coucou(クーク)」、独名の「Kuckuck(クークック)」、蘭名の「Koekoek(クークークー)」、学名の属名「Cucuius(ククルス)」は、いずれも鳴き声によっている。 
  • 全長 35cm 
  • ・・・繁殖期、翼を下げ尾羽を上げて「カッコー、カッコー」と繰り返し鳴く。時折「ゴアゴア」とも鳴く。 
  • 食性・・・主に樹上で、蛾の幼虫である毛虫や甲虫などの昆虫を捕食する。 
  • 托卵・・・カッコウは、自分よりずっと小さいオオヨシキリやモズ、ノビタキなどの鳥の巣に自分の卵を産み込み、育てさせる托卵という習性をもっている。♀のカッコウは、托卵しようとする巣の様子をずっと観察し続ける。宿主の産卵が始まると、宿主の卵を1つ取り除いて丸呑みにしてから、素早く自分の卵を1個だけ産み込む。その間、わずか3~4秒から十数秒の早わざである。知らぬが仏の小鳥たちは、深い慈愛心をもって、この卵を我が子のように温め続けるのである。
  • カッコウの托卵 | NHK for School
  • 托卵の習性をもつ鳥の共通点・・・カッコウやホトトギス、ツツドリ、ジュウイチといったカッコウ科の鳥が古くから知られている。どれも親鳥の背面は青灰色で、翼や尾羽が長めで、腹面には黒い横縞があって小型のタカの仲間に似ていて、托卵の際に相手の鳥を脅かす効果があるという。 
  • カッコウが托卵する相手の寄托鳥・・・オオヨシキリ、モズ、ノビタキ、ホオジロ、アオジ、ハクセキレイ、キセキレイ、コヨシキリ、セッカ、ホオアカ、オナガなど。 
  • 托卵をめぐる攻防
     カッコウは、托卵によって確実に子孫を残すために、様々な相手に托卵する。托卵がうまくいっても、エサが合わなければ育たない。だから食性が近い相手を選んで托卵する。しかし宿主に見つかると、激しく攻撃される。それでも強引に産み込むものもいるという。北海道の草原では、ノビタキがカッコウの托卵を防ごうとして威嚇する様子がよく観察されるという。
     一方、宿主は、托卵されると自分の子孫を残せない。だから宿主も次第に学習し、自分のものではない卵を見分けて巣から捨てるようになったり、抱卵そのものを放棄したりするようになる。こうした攻防を通して、カッコウの卵は宿主の卵の大きさや色の模様がよく似るように進化したと考えられている。それでも宿主が托卵を見破って卵を排除すると、カッコウは次々と宿主を変更して、宿主の防衛網を突破していく。こうした托卵鳥と宿主の進化的攻防は、「軍拡競争型の共進化」と呼ばれている。
  • 托卵を巡る攻防 カッコウVSノビタキ・・・托卵しようとする大きなカッコウを見つけた小さなノビタキが激しく攻撃する。
  • カッコウのヒナ・・・約10~12日と短期間で孵化し、巣の持ち主のヒナより早く生まれることが多い。孵化したヒナは、巣内にあるもの全てを背中の窪みに乗せて巣外に押し出し、巣を独占する。その結果、仮親の三倍以上もある我が子ならぬ子にエサを運んで育てている仮親には同情の念を禁じ得ない。(出展:ウィキメディア・コモンズ)
  • 遠野物語53話 カッコウとホトトギスは姉妹(写真 カッコウによく似たホトトギス)
     カッコウとホトトギスは、大昔は姉妹であった。姉のカッコウは、ある時芋を掘って来て、焼き芋にした。姉は焼けた芋の外側の堅い処を自分で食べて、中の柔らかいところを妹に与えた。しかし、妹はその姉の優しい気持ちを踏みにじり、「きっと姉さんが食べているところはもっと旨いに違いない」と、邪推した。そう思うと堪え切れなくなり、妹は包丁で姉を刺し殺してしまった。死んだ姉はたちまち鳥に姿を変え、「ガンコ、ガンコ」と鳴きながら飛び去った。(ガンコ:堅い処の意)
     その鳴き声を聞いた妹はハッと我に返った。姉が堅い処を食べ、自分にはおいしい良い処だけをくれていたのだと悟った。しかし、今さら気付いたところでもう手遅れ。自分は姉を殺してしまったのである。取り返しのつかぬことをしてしまった妹は、その悔恨の思いに堪え切れなくなり、やがてこれも鳥に姿を変えた。そして「包丁かけた、包丁かけた」と鳴くようになった。 
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
  • 「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
  • 「身近な鳥のふしぎ」(細川博昭、ソフトバンククリエイティブ)
  • 「里山の野鳥百科」(大田眞也、弦書房)
  • 「森の野鳥を楽しむ101のヒント」(日本林業技術協会、東京書籍)
  • 「ちくま日本文学全集 柳田国男」(筑摩書房)        
  • 写真提供:髙久 健氏 ブログ「ケンさん探鳥記