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野鳥シリーズ92 コアジサシ

  • 日本が主要繁殖地・コアジサシ(小鯵刺、カモメ科)
     先の黒い黄色いクチバシと黄色い脚をもつ小形のアジサシ類。夏鳥として本州以南に渡来し、海岸、河川、河口、湖沼などに生息する。水上をホバリングして獲物を探し、ダイビングして主に魚類を捕食する。繁殖環境の減少により、個体数が減っていることから、繁殖地の保護、繁殖環境の整備が各地で行われている。 
  • 夏羽の特徴・・・額が黒く、過眼線と頭が黒い。体上面は淡い灰色、喉から体下面は白い。クチバシは黄色で先端が黒い。雌雄同色。 
  • 名前の由来・・・小形で、「アジ」=魚を狙って、水中へ「刺すよう」にダイビングして捕食することから。 
  • ・・・「キッキッキッキッ」「キリリリ、キリキリキリ」などと、鋭く鳴く。飛びながらエサを探すときは、「キリッ」「クリッ」と、1声ずつ区切って鳴くことが多い。 
  • 生活環境・・・繁殖期には、広い川や海岸に生息し、コロニーをつくって営巣する。低空飛翔して狙いを定め、真っ逆さまにダイビングして魚を捕食する。 
  • 求愛給餌・・・♀は、恋のかけひきをする。繁殖期になると、♂は捕ってきたばかりの魚をこぞって♀にプレゼントする。♀が魚を受け取れば、カップルは仮成立する。仮成立とは、すぐに交尾に至るわけではないからだ。本格的な繁殖行動は、最初の給餌から約2週間後と遅い。だから♀は、他の♂にも交尾を誘うしぐさでエサをねだる。産卵前に栄養を多くとるための戦略らしい。昆虫の世界も、鳥の世界も「♂はつらい」。 
    (写真提供:髙久健氏ケンさん探鳥記)
  • ・・・砂礫地の地面を浅く掘る簡単なもの。埋立地では、貝殻の散らばった白っぽい地面に好んで営巣する。巣材として貝殻を少し敷く。 
  • 産卵・・・4~7月、卵数2~3個、抱卵日数約19~22日。孵化したヒナは巣を離れ、草や石の陰を移り移りして生活し、親鳥から給餌を受ける。 
  • 集団防衛・・・コロニーに、人や犬、カラスなどが近づくと、多くの個体が激しく鳴きながら上空を飛び交い、侵入者の近くをかすめ飛んで攻撃する。こうした集団防衛の習性があることから、他のチドリ類が一緒に営巣することが多く、コアジサシの集団防衛の恩恵にあずかっている。 
  • 南方へ去る前には、干潟などで数百羽の大群が見られる。
    (写真提供:髙久健氏ケンさん探鳥記)
参 考 文 献
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」(山と渓谷社)
  • 「ぱっと見わけ観察を楽しむ野鳥図鑑」(石田光史、ナツメ社)
  • 「日本野鳥歳時記」(大橋弘一、ナツメ社)