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  • 八幡平は、広大なアオモリトドマツの樹海と点在する沼や池塘、湿原には様々な高山植物が咲く日本百名山の一つ。特に山頂~八幡沼~黒谷地湿原周辺は平らで、誰もが気軽に花の楽園を散歩できるとあって人気が高い。
  • 「八幡平の真価は、やはり高原逍遥にあるだろう。一枚の大きな平坦な原ではなく、緩い傾斜をもった高低のある高原で、気持ちのいい岱を一つ横切るとみごとな原始林に入ったり、一つの丘を越すと思いがけなく沼があったりして、その変化のある風景がおもしろい。」(「日本百名山」深田久弥、新潮文庫)
  • 黒谷地湿原~八幡平コース(取材日:2013年7月23日~24日)
     黒谷地湿原(1,446m)源太森(1,595m)八幡沼(1,570m)八幡平(1,613m)めがね沼・鏡沼山頂バス停(1,540m)源太清水(1,485m)黒谷地湿原駐車場(1,430m)
▲黒谷地湿原登山口 ▲ニッコウキスゲが彩る木道をゆく
  • 黒谷地湿原登山口は、八幡平アスピーテライン黒谷地バス停にある。登山口の駐車場は、30台ほど駐車できるスペースがある。入口からいきなり花の楽園モードに突入する楽しいコース。
  • 熊の泉・・・団体ツアーでも対応できるように、3本のパイプから均等に流れ出している。飲めば冷たく実に美味い。
▲ニッコウキスゲの群落は、いつ見ても華やかで美しい。
▲カラマツソウ ▲コバイケイソウ ▲ハクサンチドリ
  • 正面が黒谷地湿原(1,446m)。右に進めば茶臼岳、左に進めば源太森、八幡平へ。
  • 源太森(1,595m)に向かって緩やかな登りが続く。
▲アカモノ ▲イワカガミ ▲マイヅルソウ
▲ツマトリソウ ▲イワカガミと蝶
▲コバイケイソウの花に群がるコヒョウモンとクジャクチョウ
  • クジャクチョウ・・・羽を閉じると、周囲と見分けがつかなくなる擬態(右)で、開くとクジャクの飾り羽のような大きな目玉模様があり美しい。この目玉模様は、鳥類などの天敵から身を守る効果があるという。
  • 源太森山頂(1,595m)
  • 源太森山頂から八幡沼を望む・・・ここから眺めると、八幡沼周辺は、アオモリトドマツの原生林に囲まれた平らな湿原であることが一目でわかる。
▲八幡平頂上バス停とモッコ岳を望む ▲見返り峠の公衆トイレ
  • 八幡沼一周コースは、八幡平山頂バス停~見返り峠分岐点を右に入り、反時計回りで源太分れ(→源太森→)~陵雲荘避難小屋~八幡沼展望台・ガマ沼~八幡平山頂~めがね沼・鏡沼~山頂バス停に戻るコースが一般的である。 
  • 見返り峠から右に向かって下ると、八幡沼へ。正面に岩手山から秋田駒ヶ岳などの山々がパノラマのように見渡せる。
▲シロバナニガナ ▲ノアザミ ▲ミヤマキンポウゲ
  • 正面に八幡沼が見えてくると、早くもコバイケイソウの絶景ポイントに辿り着く。
  • まるで棚田のような池塘がいくつも点在している。池に生えているのはミヤマホタルイ・・・まるで稲のようにも見える。昔は、こうした池塘を神の田んぼに見立てて、池の中に生えている植物の生育具合、池の水の量などによって作占いをした。
▲ワタスゲ ▲イワイチョウ ▲ムシトリスミレ
▲ニッコウキスゲ ▲ヨツバシオガマ ▲ミズバショウとヒナザクラ
  • 池塘の周囲には、虫を食べる食虫植物「モウセンゴケ」がびっしり生えている。
▲源太分れから八幡平山頂に向かって歩く ▲八幡沼を白く彩るコバイケイソウ
  • 八幡沼周辺に咲く花・・・ニッコウキスゲ、コバイケイソウ、ハンクサンチドリ、ヒナザクラ、ミズバショウ、ワタスゲ、ミヤマホタルイ、ミツガシワ、イワイチョウ、ムシトリスミレ、モウセンゴケ、ヨツバシオガマ、イワショウブ、チングルマ、ショウジョウバカマ、アオノツガザクラ、トウゲブキ、ネバリノギラン、カラマツソウ、シロバナトウウチソウ、ハクサンフウロ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマカラマツ、キンコウカ、ミヤマアキノキリンソウ、ウメバチソウ、エゾオヤマリンドウなど
▲棚田のような池塘が連なる美景
  • 今年のコバイケイソウは「大豊作」・・・見渡す限り列をなして咲く群落は圧巻である。
▲雪解けの斜面を白く彩るヒナザクラ
  • 避難小屋「陵雲荘」・・・中も広くトイレも完備された避難小屋。収容人員20人。予約不要で通年利用可能。ただし水場はないので、あらかじめ持参することを忘れずに。
▲ガマ沼 ▲ホシガラス
▲ウメバチソウ ▲ベニバナイチゴ ▲八幡平山頂(1,613m)
  • 八幡平頂上展望台は、老朽化による損傷が著しく、改築工事中であった。
▲残雪が解けて浮いた「めがね沼」 ▲雪解け斜面にオオバキスミレ
  • 窪地に咲いたキヌガサソウの群生地(「不思議な凹地」の説明板がある)
▲シナノキンバイ ▲ヤマオダマキ ▲ダケカンバとアオモリトドマツ
  • 源太清水・・・さすが「日本百名山の名水」と思わせるほど、冷たさは抜群で、五臓六腑に沁み渡るほど美味い。八幡平アスピーテライン沿いにあるので、誰でも気軽に飲める。登山前、登山後でもぜひ立ち寄って乾いた喉を天下の名水で潤してほしい。
  • 2002年に発見された新種「ハチマンタイアザミ」・・・山頂駅に飾られていた花図鑑には、「従来、オニアザミとされてきたが近年新種とされた。源太清水周辺に生える多年草」と記されていた。このアザミの特徴は、総苞からネバネバした粘液が出て虫を捕まえるとのこと。
長沼・ブシ谷地コース
  • 長沼・ブシ谷地コース(取材日:2013年7月23日)
     ふけの湯(1,097m)区間距離0.5km、大谷地(1,076m)0.9km、長沼(1,108m)1.1km、ブシ谷地(1,195m→八幡平山頂へ)
     注意点・・・雨天時は泥水に浸かるような区間も少なくないので、登山靴ではなく長靴がベストである。
  • 起点は「ふけの湯」・・・ふけの湯は、マタギがクマを追っていて発見したという言伝えをもつ。藩政時代は、熊沢硫黄山として硫黄山御用係が置かれ、硫黄が採掘されていた。かつては尾去沢、小坂、十和田などの鉱山地帯から、鉱山病のヨロケの治療に来ている人が多かったという。
  • 「八幡平が有名になり始めたのは、奇湯ふけの湯からではなかろうか。これは人間の浸る湯ではなく、人間を蒸かす湯であった。浴舎は山小屋のように中央に通路があって、両側の土間の上にムシロを敷き、浴衣一枚で横になると、下から湧いてくる空噴きに蒸されるのである。」(「日本百名山」深田久弥、新潮文庫)
▲秋田杉の木橋 ▲ブナの実
▲大谷地・・・右に進めば長沼へ ▲イワオトギリ
▲ブナ ▲モミジカラマツ ▲サンカヨウの実
  • 長沼・・・ベンチと東屋があるので、長沼を眺めながら食事をすれば殊の外美味い。
▲ネムロコウホネ
  • 長沼から一山越えて1.1km歩けばブシ谷地である。ただし、クマの密度も高く、かつブシ谷地近くになると、歩く人が稀なためか、木道が藪に覆われている場所もあるので注意。
▲マイヅルソウ ▲スダヤクシュ ▲キヌガサソウ
▲クマの皮剥ぎと爪痕  ▲ギンリョウソウ ▲ツバメオモト
▲登山道標識 ▲オニシモツケ ▲ミヤマアキノキリンソウ
ブシ谷地を埋め尽くすタチギボウシの大群落
  • 藪に覆われた木道を慎重に進むと、突然、目の前が開ける。ブシ谷地全体が、タチギボウシに埋め尽くされている光景には驚かされる。花の見頃は8月上旬~中旬頃。ブシ谷地を紫色に染める群落は必見の価値があるだろう。
  • 八幡平大沼周辺に出没するクマ
      大沼にある八幡平ビジターセンターに寄ると、クマ出没情報が掲示されていた。それによると、7月14日大沼でクマ一頭目撃、7月16日小グマ一頭、7月19日クマ一頭3回目撃・・・そして上のクマは、7月24日に目撃したクマである。
     こうしたクマは、人も車も恐れないのでクマ避け鈴は通用しないだろう。特に単独登山者は、クマと遭遇する確率が高いだけに、クマ撃退スプレーなど積極的な自衛対策が必要である。  
参 考 文 献
  • 「日本百名山」(深田久弥、新潮文庫)
  • 「花の百名山 登山ガイド上」(山と渓谷社)
  • 「ヤマケイアルペンガイド2 東北の山」(東北山岳写真家集団、山と渓谷社)
  • 「八幡平の花」(工藤茂美、加賀谷書店)