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モリエールあきた

 食用のキノコが少ない晩秋から早春にかけて発生し、雪をかぶって株立ちしていることから、別名「ユキノシタ」「フユタケ」とも呼ばれている。とにかく寒さにめっぽう強く冬キノコの代表である。ナメコと同様、日本人好みのキノコで人気が高い。
 早春、雪解けの早い海岸沿いの渓流でイワナを釣っていると、雪解け間もない倒木に群生しているエノキタケによく出会う。芽吹く前の殺風景な谷では、黄褐色の鮮やかなエノキタケは一際目立つ。倒木の下に折り重なるように群がって生え、寒さを吹き飛ばす暖かな風景に見える。

 雪国では、春一番のキノコとして珍重されている。茎は黒っぽく、成菌の茎は中空になっているのが特徴。ヌメリが強く、甘い香り、歯切れが良い・・・濃厚なうま味があり、味は一級品である。
▲菌床栽培のエノキタケ

 菌床栽培のエノキタケは、乳白色でモヤシ状に茎が長く、天然物とは姿形が別物のように違う。天然のエノキタケは、栽培品に比べると味、歯切れとも数段上である。
 エノキタケと間違う毒きのこきは「ニガクリタケ」。「エノキタケ」の最大の特長は、足(茎とか柄)の根元が黒いこと。下が黒く上に近づくにつれて黄白色となる。「ニガクリタケ」は、足(茎とか柄)全体が同じ色で、黄白色だったり、黄褐色だったりすることで判断できる。
発生時期等

 晩秋から早春にかけて、エノキ、ヤナギ、カキ、ケヤキ、ポプラ、コナラなど種々の広葉樹の枯れ木や切株に多数束生し、雪の中でも発生する。傘は壊れにくく、雪の中でもしっかりしている。日陰の多い庭や屋敷林のエノキの木を切ると、数年後には切り株から必ず生えるほど身近な食用キノコである。
探し方、採り方のコツ

 雪が降る頃になると、キノコ採りの人たちは山に入らなくなる。エノキタケは、人家付近に生えるキノコの代表で、奥山に行く必要はない。河川沿いや湖畔沿いにはヤナギの木が多いので、その倒木や枯れ枝を探せば、ナメコのように群生したエノキタケを採ることができる。

 採り方は、ナメコなどと同様、ナイフで切り取る。
保存法

 冬を代表するキノコだけに、冷凍保存、乾燥して保存する。特に天日干しにすれば、ビタミンDが二倍に・・・骨粗しょう症の防止、内臓脂肪の減少に効果があるという。
エノキタケ料理

 傘に少しヌメリがあり、茎はシャキシャキとして歯切れも舌触りもが良い。味噌汁、和え物、天ぷら、お吸い物、野菜炒め、鍋物など日本料理によく合う。早春のエノキタケは、パッケやヤマワサビなど春の山菜と一緒に味噌汁にすれば最高の味である。

納豆和え・・・さっと湯がく程度に火を通し、納豆で和える。とろろ昆布やワカメ、刻んだネギを加えると一層ヌメリが出て珍味とか。

吸い物・・・エノキタケと豆腐のシンプルなお吸い物にミツバを散らす。

野菜炒め・・・エノキタケ、もやし、キャベツ、玉ねぎ、ニンジン、白菜、ピーマンなど季節の野菜と炒め、塩コショウ、万能つゆ、ごま油をを少々入れると美味しい。
エノキタケの新たな薬効・・・内臓脂肪が減少

 日本薬科大学渡邉康夫教授グループが行った実験では、エノキタケに含まれる脂肪酸「エノキタケリノール酸」を摂取したところ、2か月でおよそ22%の内臓脂肪の減少が確認された。また、NHKの「あさイチ」の実験でも、「干しえのき」を細かく切り、それを、「熱水抽出」して飲んだところ、2週間で26%の内臓脂肪が減少するという結果が出たという。

効果的に摂取するには天日干し

 天日干しすると細胞壁が壊れてエノキタケリノール酸やキノコキトサンが摂取しやすくなるという。さらに、エノキタケに含まれるビタミンDが二倍に増える。

タモギタケ

 初夏~秋、ニレ、ヤチダモ、ナラ、カエデなどの倒木に発生する。ヒラタケの仲間とは思えないほど鮮やかなレモン色をしている。美味な食菌で、人工栽培もおこなわれている。北海道では、ヒグマにとってエサの少ない夏の食べ物で注意が必要である。
タモギタケ料理

 上品な味と香り、口当たりの良さで昔から食用キノコの上位にランクされている。油炒め、鴨鍋、天ぷら、味噌汁、お吸い物、佃煮など。
タモギタケの薬効

β-グルカンが豊富・・・免疫力を高め、ガンを予防する効能があるといわれている。
抗酸化物質「エルゴチオネイン」が豊富・・・身体を痛めつける猛毒活性酸素を除去する強力な抗酸化物質を豊富に含む。

「セラミド」を高純度で含む・・・アトピー肌や敏感肌は、一般に「セラミド」と皮膚分泌が低下した状態だという。タモギタケには、その「セラミド」が高純度で含まれている。だから肌の老化が気になる方におすすめといわれている。
参 考 文 献
「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」(山と渓谷社)
「あきた山菜キノコの四季」(永田賢之助、秋田魁新報社)
「きのこの見分け方」(大海秀典他、講談社)
「家庭でできるキノコづくり」(大貫敬二著、農文協)

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