ムキタケは、ナメコより若干遅く、どちらかと言えば晩秋のキノコである。秋田のブナ・ミズナラ林では、大量に採れるので山間地方を代表するキノコである。傘の表面に短毛が密生していて舌触りが悪いので、皮をむいて食べることから「ムキタケ」と名付けられた。 表皮の下はゼラチン質になっているので、皮はツルリと簡単にむける。ムキタケが盛りの頃は、倒木に群がって生える様が一際美しく、被写体としても一級品である。 |
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ブナ、ミズナラを主体に色々な広葉樹の枯幹、倒木、伐根に重なり合って群生する。柄は短く片葉で、傘は10cm前後の半円形、色は緑黄褐色で地味だが、盛りの頃は実に美しい。被写体としても一級品のキノコである。 | |
発生時期 10月下旬ともなれば、紛らわしい毒キノコ・ツキヨタケも姿を消している。初期の発生は10月中旬頃からだが、ピークは落葉し始める11月上旬~初冬である。 |
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▲幼菌 幼菌は、肉質がしっかりしていて弾力がある。重なり合って発生する場合が多い。 |
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▲成菌 成菌になるにつれて傘は半円形から貝殻形になる。倒木の上にも生えるが、特に水分の多い横から下にかけて重なるように生える場合が多い。 |
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ムキタケの旬は、傘裏で判断 傘裏が透明感のあるホワイト色をしていれば極上品である。その美味しいキノコを狙うのは、人間だけでなく、無数の虫たちも狙っている。虫食いかどうかは、手にとらなくとも、下から観察すれば簡単に見分けられる。 |
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巨大なムキタケ ムキタケは大きくなると、ビックリするほど巨大な半漏斗型になり、ゼラチン質の肉も厚くなる。キノコは、幼菌、成菌、老菌になるに従って、形も色も大きく変化する。一枚から数枚しかないキノコ図鑑だけで判別するのは極めて難しい。だから、キノコに詳しい人に現場で教えてもらうことが、きのこ採り上達への近道である。 |
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採り方のコツ ナタやナイフでムキタケの根元を切り取る。立ち枯れ木に群生したムキタケは、手の届かない高い場所に多く生える。左の写真のように、右手で柄の長い鎌で切り落とし、左手に持っているザルで受け取る。 ランダムに落ちてくるムキタケを完璧にザルで受けるのは無理だが、自然のキノコ採りゲームをするように採れば楽しい。 |
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上から見ると、確かにツキヨタケに似ている。しかし、ツキヨタケのように毒々しい小鱗片はない。半円形から貝殻形で、淡い黄土色。時に緑系、紫系、灰色系と遺伝子の多様性に富んでいる。 | |
紛らわしい毒キノコ・ツキヨタケに注意! 食用のムキタケやヒラタケ、シイタケと似るので紛らわしく、日本特産の毒キノコの中で、中毒例が最も多い。ブナなどの倒木や立ち枯れ木に群生する。縦に裂けば一目瞭然・・・右の写真のように、紫色の染みになっているのが毒のツキヨタケ。 一般的に、ムキタケが最盛期となる10月下旬以降は、姿を消すので安心である。ただし、天候不順でツキヨタケの発生が遅れるような年は、同じ木に混生する場合があるので、油断はできない。 |
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ムキタケとツキヨタケの見分け方
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料理 表皮下にはゼラチン層があって、表皮はむきやすい。皮をむいて料理するからムキタケ。皮は柄のところからナイフ又は表側に折るように引くとたやすく剥げる。熱い味噌汁や鍋物にして食べると、つるっとしていて喉を火傷することがあることから「ノドヤケド」とも呼ばれている。 |
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水分が多いので天ぷらやフライには×。味にクセがなく、ボリュームがあって、ツルリとした舌触りは独特の美味しさで、雪国の鍋料理には欠かせないきのこである。料理は、納豆汁、シチュー、すき焼き、鍋物、バター炒め、おろし和え、つけ焼き、トマトとナスのグラタン、刺身風水煮など。 おろし和え・・・皮をむいたムキタケを煮すぎないように茹で、適当な大きさに裂いて、冷えてから大根おろしで和える。 すき焼き・・・皮をむいたムキタケの水分を絞り、最初からすき焼きの具として鍋に入れる。汁を吸いこませて食べると美味しい。 つけ焼き・・・皮をむいたムキタケは、ふきんで水気をとる。炭火の上に金網をのせて焼き、酒・しょう油のタレを二~三回つけて照焼き風にして食べる。アルミホイールに包んで焼いても美味い。 刺身風水煮・・・厚手のムキタケを水煮にしてから刻み、酢味噌のタレで刺身風にして食べる。 |
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保存法 薄塩で漬けて長期保存する。冬に取り出して納豆汁に入れると最高の味で、漬けキノコとして、山間部では必ず毎年秋に漬ける漬物の一つである。今は、缶詰、瓶詰、冷凍保存が一般的である。 |
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ムキタケ写真館 | |
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参 考 文 献 | |
「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」(山と渓谷社) 「あきた山菜キノコの四季」(永田賢之助、秋田魁新報社) 「きのこの見分け方」(大海秀典他、講談社) 「家庭でできるキノコづくり」(大貫敬二著、農文協) |