本文へスキップ

森と水あきたTOP

 秋田では、ナラタケ、ナラタケモドキ、オニナラタケ、キツブナラタケなどを総称して「サワモダシ」と呼んでいる。秋田の森では、大量に採取でき、かつ美味しいことから、塩蔵して冬に備えるキノコの代表で、昔から最も人気が高いキノコ採り入門コースとして最適なキノコである。

 地方名は、サモダシ(北秋、鹿角)、サワボダシ(北仙北)、ヤチキノコ(南秋、仙北)、ボロメキ(仙北)などおびただしく、大衆的なキノコであることが分かる。
 傘の表面は、白っぽい黄色から淡い黄褐色、褐色など多様で、中央部に細かい鱗片があり、周辺には放射状の条線がある。
 ブナ、ミズナラ、コナラ、クヌギなどの広葉樹、アカマツ、カラマツなどの針葉樹の倒木、切り株、枯れ幹、生木の腐朽部、埋もれ木などに群生する。発生のピークに当たると、沢筋の風倒木、枯れ枝、埋もれ木、草むらの地面を埋め尽くすように群生する。まるで山全体がサワモダシの山と化す。

 サワモダシ採りは、その名の通り、沢筋の湿っぽい風倒木をターゲットに歩くのがコツである。
ナラタケ・・・柄の上部に膜質のツバを有する。ツバより上は白色、下は暗色。生で食べると中毒を起こすので、必ず茹でてから調理する。
ナラタケモドキ・・・ナラタケに良く似ているが、柄にツバがない。発生時期はナラタケより早く、9月中旬頃から。味はナラタケより劣る。食べすぎると消化不良を起こすので注意。
オニナラタケ・・・発生はナラタケよりやや遅い。全体的に肉厚で黒褐色系、柄は根元が太い。 
▲ミズナラの根元に生えたキツブナラタケ
キツブナラタケ・・・ブナやミズナラの枯れ木やその周辺に群生する。全体が黄色を帯びているが、傘の中心部は黒い鱗片がある。一番美味しい。
発生時期

 発生は春から秋と比較的長い期間発生する。奥山では、初夏のタケノコが発生する頃に良く生え、タケノコ汁の具として重宝する。しかし、この時期の発生量は少ない。
 大量発生は、何と言っても秋・・・秋田では10月上旬~中旬頃に多く発生し、稀に10月下旬に発生することもある。発生のピークは、その年の気象変動によって二週間程度はズレ込む。大量発生には雨が欠かせない。雨が少ない年は不作になることもある。
成長が早く、腐るのも早い

 サワモダシの発生ピークに当たると、山全体がサワモダシの山に一変する。とても採り切れるものではなく、森と水の恵みのパワーに圧倒される。サワモダシは成長が早く、あっと言う間に成菌になる。また、腐るのも意外に早い。2、3日ズレただけで、ほとんど腐っていた・・・ということは日常茶飯事に起きる。
▲成長過程を観察

 1日目午後に撮影、右は3日目の朝に撮影したもの。幼菌だった傘は、2日も経たないうちに開いている。生長が早く成菌になるのがすこぶる早いのが分かる。つまり芽を出してから老菌になるのも早く、旬のサワモダシに当たる期間は意外に短い。

発生のピークを予測するには

 一週間に一回程度はキノコの発生状況を確認する巡視が欠かせない
▲幼菌
▲幼菌~成菌の中間(旬)・・・傘が開きかけの極上品
▲傘が開いた成菌(旬)・・・成菌の旬は、傘の表面だけでなく傘裏で確認する。傘裏が白~淡い黄色系、クリーム系が旬である。
▲白い胞子を飛ばしている成菌・・・食べるにはOK
▲旬を過ぎた老菌・・・色が変色しかけているが、腐ってはいないので食べるにはOK
採取のコツ

 サワモダシは、もろく壊れやすいのが最大の弱点。だから採取のコツは、とにかくゴミが混ざらないように丁寧に採取することに尽きる。袋が一杯になったら、空気を抜くようにしてギュウギュウ詰めにする。こうすれば袋の中で動かないので傘が崩れない。
失敗例

 採取したサワモダシを生のまま袋から取り出し、参加者全員に均等に分配した。家に帰ると傘はボロボロ、柄だけが棒切れのようになっていた。それをさらに泥と落ち葉を取り除く作業をしたら、半分以上がゴミクズ状態になってしまった。
茹でると丈夫なキノコに変身

 ボロメキと言われるくらい傘がもろいから、決して生のまま作業をしないこと。家に帰ったら、袋をナイフで切り裂き、大鍋に入れる。水洗いを省略して、とにかくそのまま茹でる。いったん茹でると、不思議なことに丈夫なキノコに変身する。傘が壊れないので、水洗いしながらゴミとの選別が簡単にできる。
保存法

 昔は、生のまま塩蔵して冬に備える貴重なキノコの代表であった。茹でて水洗いしたサワモダシは、大きなザルに入れて水を切る。水切りした後、缶詰加工か、フリーザーバックに入れ密封してから冷凍保存する。
▲生食は×、茹でてから調理 ▲キノコ鍋
▲麺類の具 ▲納豆汁の具

料理

 傘のヌメリと歯切れ、舌触りともに良く、ほのかに甘い香りがある。幼菌は、形もヌメリもナメコに似ていて、味噌汁、大根おろし和えに。その他、納豆汁、いものこ汁、鍋物、おろし和え、酢の物、煮物、麺類の具、パスタ、醤油漬けなど、どんな料理にも合う。

納豆汁・・・ヌメリのあるナメコとサワモダシが最適

 材料・・・雑きのこ(サワモダシ、ナメコ)、ワラビ、ゼンマイ、油揚げ、木綿豆腐など
 山菜・キノコをたくさん入れた味噌汁に、すり鉢ですった納豆(又は「超きざみ納豆」)を入れ、ひと煮たちさせ、ネギ(セリ)の細切りを入れる。
サワモダシ(ナラタケ)写真館
参 考 文 献

「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」(山と渓谷社)
「あきた山菜キノコの四季」(永田賢之助、秋田魁新報社)
「キノコ狩りガイドブック」(伊沢正名、川嶋健市共著、永岡書店)

「きのこの見分け方」(大海秀典他、講談社)
「ヤマケイポケットガイド15 きのこ」(小宮山勝司著、山と渓谷社)
「山渓フィールドブックス10 きのこ」(本郷次雄ほか、山と渓谷社)

森と水あきたTOP