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 2014年10月10日~13日、「チェンソーアートフェスティバル」が県立北欧の杜公園(北秋田市上杉)で行われた。彫刻の素材は、直径80cm、高さ約4mの巨大な秋田スギの丸太。全国から選抜されたトップカバー6人は、チェンソーを自在に操り、スケールの大きな彫刻を制作。最終日の13日、縄文人やクマ、鷹など、巨大な彫刻6点を完成させた。そのハイレベルなアート作品は、「素晴らしい」の一言に尽きる。

 また、会場では市内の小学生や来場者がスギ板で作った赤とんぼの模型350個を展示したほか、秋田北鷹高校生によるチェンソーアート、木工手づくり体験などが行われた。
「チェンソーアート」とは

 「チェンソーカービング」とも呼ばれ、「チェンソーを駆使した彫刻」を指す。チェンソーは、刃のついたソーチェーンをエンジンで高速回転させ、素早く樹木を伐採したり、丸太の長さを伐り揃えたりする機械である。チェンソーアートは、主に丸太を数種類のチェンソーだけを使用し、彫刻作品を生みだしていく。また、作品だけでなく、制作過程をエンターテイメントとして楽しむこともできる。アメリカやヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、そして日本で主に盛んである。
 「ブィーン、ブィブィ、ブィーン」と、けたたましいエンジン音を響かせながら木を伐るチェンソーは、芸術とは無縁の荒々しいイメージがある。ところが、制作現場を見ていると、ダイナミックな迫力とスピード感に溢れている一方、完成した作品は、動物の毛や鳥の羽など繊細な線まで表現している。そのレベルの高さに驚かされる。このアートは、森と共生していた縄文芸術と同じく、森とは切り離せない芸術の原点があるように思う。
全国から選抜されたトップカーバー6名による公開制作

 「チェンソーアート」をおこなう人を「チェンソーカーバー」と言う。今回、公開制作するトップカーバーは6人。受賞歴をみれば、日本のトップというより世界のトップカーバーたちであることが分かる。
木霊 光(こだま ひかる、北海道)・・・タスマニア国際大会優勝

 作品テーマ「床」。市民病院は木々が生い茂り、緑豊かな大地。それらを形成する元は、林床での自然の営みがあるからこそ。その世界を創作、表現する。作品設置場所 北秋田市民病院。  
▲完成作品「床」
高頭義幸(たかとうよしゆき、秋田県)・・・東北大会2009優勝

 作品テーマ「北の猛者(モサ)」。空の勇者「鷹」。北国の厳しい環境の中で生き抜く姿を表現する。作品設置場所 秋田県立北鷹高等学校。
▲完成作品「北の猛者」
栗田広行(くりたひろゆき、山形県)・・・東北大会2011、2012、2013優勝

 作品テーマ「家族」。ゆっくりと流れる時間と雄大な自然の中で、家族と触れ合い、休日をのんびり過ごすことのできる北欧の杜公園を訪れた家族を表現する。作品設置場所 秋田県立北欧の杜公園。
▲完成作品「家族」
伴 正史( ばん まさし、長野県)・・・TVチャンピオン「チェンソーアート王選手権」優勝

 作品テーマ「いのり」。古代の人々、「祭祀の地」。人々が何を想い、祈ったのか。思いを馳せて制作する。作品設置場所 伊勢堂岱遺跡ガイダンス施設。
▲完成作品「いのり」
林 隆雄(はやし たかお、山口県)・・・全米オープン2012、2013優勝

 作品テーマ「阿仁前田駅へようこそ」。内陸線キャラクターの「ないりっくん」「森吉のじゅうべい」、市の鳥「クマゲラ」、大平湖の「サクラマス」とともに阿仁前田駅周辺の観光を紹介する。作品展示場所 秋田内陸縦貫鉄道 阿仁前田駅。
▲完成作品「阿仁前田駅へようこそ」
西間 健(にしま けん、岩手県)・・・USAナイアガラ大会バード部門優勝、総合3位

 作品テーマ「森の恵みと先人の知恵」。森や川などの豊かな恵みに育まれ、マタギ発祥の地とも言われる北秋田。先人から残された豊かな自然と共に暮らしてきた人々を表現する。作品設置場所 生涯学習拠点施設(仮称)。 
▲完成作品「森の恵みと先人の知恵」
▲秋田国際木彫シンポジウム作品展示(2007年10月12日~22日)

 全国植樹祭のプレイベントとして、木材の大切さや木が持つ芸術性をアピールするため、アメリカ・ヨーロッパなどの海外の彫刻家および国内の彫刻家を招いて彫刻の公開制作が行われた。その作品がパークセンターに展示されている。
▲秋田県立北鷹高校生によるチェンソーアート
 チェンソーアートは、木を無駄にしないことがコンセプト。製材などに向かない間伐材、あるいは伐採して捨てられる端材などを有効利用することができる。森と共に生きる人たちの感性の豊かさ、木が持つ芸術性・・・それは、「森(自然)が芸術を生みだす」源泉を象徴しているように思う。
▲木に親しむ体験型イベント「木工手づくり体験」
▲木のアート展「北の大地に舞う赤とんぼ大作戦」・・・スギ板で作った赤とんぼの模型350個を展示
 完成した巨大な秋田スギの彫刻6作品は、10月末日まで同公園に展示した後、11月以降は、阿仁前田駅や伊勢堂岱遺跡、北秋田市民病院など市内各地に展示される。これら世界レベルの作品は、「チェンソーアートの町」を一層高めてくれることだろう。