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昆虫シリーズ⑬ 樹液に集まるチョウの仲間その2

ゴマダラチョウ
  •  黒地に丸っこい白斑が散りばめられ、橙色の眼とストロー状の黄色いストロー(口吻)がトレードマーク。樹液を好むことから、オオムラサキと一緒に見られることがある。成虫は、クヌギ、コナラなどの樹液によく集まるほか、腐った果実などにも集まる。 北海道では、減少傾向が著しく、非常に珍しくなっているが、その他の地域では、都市近郊の樹林でも普通に見られる。
  • 名前の由来・・・黒色のハネに白い斑紋が散在するゴマ状まだら模様のチョウであることが名前の由来。
  • 食草・・・エノキ、エゾエノキなど(アサ科)。
  • 行動・・・日中、樹冠部を中心に滑空しながら飛翔し、樹液によく集まる。また腐果などにも集まる。地面で吸水も行う。 
  • 外来種・アカボシゴマダラ・・・中国原産の外来種で、成虫は、後のハネ後部に赤い斑紋があるので簡単に識別できる。1998年、神奈川県藤沢市で記録されて以降、分布を拡大し、南関東を中心として定着。福島県、山梨県、静岡県などでも確認されている。
  • 競合種への影響・・・食樹が競合する在来生物の本種やオオムラサキ、テングチョウなどへの悪影響が心配されている。
サトキマダラヒカゲ
  •  平地から丘陵地が分布の中心で、雑木林のほか、都市部の公園でも見られ、個体数も多い。ヤマキマダラヒカゲと比較して暖地性である。日中、樹林周囲を活発に飛翔し、クヌギやコナラなどの樹液を好んで集まるほか、路上で吸水したり、獣の糞、果実などにも集まる。訪花性は低い。夕方の日没に特に活動が活発になる。 
  • サトキマダラヒカゲとヤマキマダラヒカゲの見分け方・・・両種は極めて類似しているが、ハネ裏の3つの斑点がヤマキマダラヒカゲでは大きくずれる点で識別できる。ただし例外もあり、総合的な判断が必要とされている。
  • 名前の由来・・・里近くに生息するキマダラヒカゲであることから。キマダラヒカゲは、黄色の斑模様があり、日陰を好むチョウであることから。 
  • カブトムシとサトキマダラヒカゲ
  • 食草・・・マダケ、アズマネザサ、メダケ、ミヤコザサ、チシマザサ、クマザサなどのタケ・ササ類。 
ヤマキマダラヒカゲ
  •  平地から山地に分布し、サトキマダラヒカゲよりも標高の高い場所が分布の中心。森林周辺のササ群落が生息地。ナラ類の樹液を好むほか、リョウブ、ヨツバヒヨドリなどでも吸蜜する。通常、日中に活動するが、夏に低標高地では夕方に活動が活発になる。近年、シカの食害による影響によって減少傾向にあると言われている。
  • 名前の由来・・・山で多く見られ、黄色の斑模様と日陰を好むチョウであることから。
  • 食草・・・チシマザサ、イブキザサ、シナノザサ、アズマネザサなどのササ類及びススキ(イネ科) 
クロヒカゲ
  •  ハネを立てると一見地味だが、黒地に連なる目玉模様の周りに青色の輪があり、なかなか美しい。日中は、葉の上に止まっていることが多い。オスは、夕方になると、素早い速さで飛び回り占有行動をとる。6月から9月頃まで見られる。平地から山地の森林及びその周辺に生息。林縁部のナラ類などの樹液によく集まる。全国的に普通に見られ、個体数も多い。 
  • 名前の由来・・・表裏ともに黒褐色で、日陰を好むチョウであることから。 
  • 食草・・・メダケ、アズマネザサ、ヤダケ、クマザサ、ミヤコザサなど(イネ科) 
  • オサムシ採集用トラップにやってきたクロヒカゲ
オオヒカゲ
  •  ハネ裏は灰褐色で、濃色線と黄色輪の目玉模様がはっきりしていて美しい。ジャノメチョウの中では国内最大。斑紋も特異で、他種との識別は容易。平地から山地にかけての湿生草原に生息。天然の湿地、農地周囲のやや暗い湿った場所、樹林内の湿地などに見られる。林内などやや暗い場所をフワフワと飛び、夕刻に活発になる。ナラ類の樹液によく集まる。ハネは閉じている場合が多く、開くことは少ない。 
  • 名前の由来・・・日陰を好む大きなチョウであることから。 
  • 食草・・・カサスゲ、オニスゲ(カヤツリグサ科)、ススキ、ツルヨシ(イネ科)など。
  • 交尾
  • 眼状紋が少ない個体
コムラサキ
  •  中形で、オスの表は瑠璃色に輝き、メスでは淡い茶褐色。雌雄ともに中央と亜外縁に橙斑が発達する。平地から山地のヤナギ類の生える樹林に生息。河畔林や湿地帯、渓谷のほか、都市公園や街路樹などでも見られる。日中、高い位置を飛翔し、樹液や獣糞、人の汗などに好んで集まる。川原や湿った地面に下りて吸水することも多い。
  • 名前の由来・・・ハネが紫色に光り、オオムラサキに比べて小型であることからコムラサキ。
  • メス・・・淡い茶褐色で、地味。
  • ハネの裏側
  • 食草・・・ネコヤナギ、オノエヤナギ、カワヤナギ、バッコヤナギ、シダレヤナギ、ドロノキなど(ヤナギ科)。
参 考 文 献
  • 「フィールドガイド 日本のチョウ」(日本チョウ類保全協会、誠文堂新光社)
  • 「ふるさとの虫ある記 連載4」(成田弘)
  • 「子供に教えたい、ムシの探し方・観察のし方」(海野和男、サイエンス・アイ新書)
  • 「舞え オオムラサキ」(金子敦、信濃書籍出版センター)
  • 「蝶と私 羽後町の蝶を中心に」(福嶋信治)