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昆虫シリーズ⑮ シロチョウの仲間その2

  •  モンキチョウは平地から高山まで広く見られる。キチョウの仲間は、本州から沖縄まで見られるキタキチョウと、沖縄で見られるミナミキチョウの2種に分けられている。しかし、外見による識別は困難と言われている。スジボソヤマキチョウは7月初めから、ヤマキチョウは8月に姿を見せるが、近年は極めて稀。両種とも成虫で越冬する。ツマキチョウは、かつて減少傾向にあったが、近年は都市部でも再び見られるようになっている。
  • INDEX モンキチョウ、キタキチョウスジボソヤマキチョウヤマキチョウツマキチョウ
モンキチョウ
  •  その名のとおり、黄色いのはオスで、メスは白っぽい。ただしメスには、黄色と白っぽいものがいる。北に行くほど白いものが多いと言われているので、メスは白と覚えておいた方が良いだろう。平地から山地の草地に広く生息。都市部の公園や農地周辺、河川堤防などの身近な場所から森吉山山人平(標高1315m)のような高山のお花畑まで広く見られる。日中、草原を敏速に飛翔し、タンポポ類やヒメジョオン、アザミ類のほか、高山ではイワカガミやチングルマなどの花を訪れる。オスは吸水も行う。成虫ではなく幼虫で越冬する。個体数も多い。 
  • モンキチョウの特徴、オスとメスの見分け方(画像は求愛)
    1. オスはハネの地色が黄色タイプのみ。メスは黄色と白色の2タイプがあるが、圧倒的に白いタイプが多い。
    2. 幅の広い黒帯内に白又は黄色の紋がある。後ハネ真ん中に丸い紋がある。
  • 名前の由来・・・ハネが黄色で黒い紋があることから。 
  • 食草・・・アカツメクサ、シロツメクサ、レンゲソウ、コマツナギ、ミヤコグサなどの各種マメ科植物。 
  • オスはメスを求めて飛ぶ・・・黄色いオスが白いメスに求愛しながら飛ぶ。時に白いメスを巡って黄色いオスが2、3匹群がって飛ぶこともある。 
  • 積極的なのはメス?・・・上の写真を見ると、白っぽいメスが黄色いオスを追い掛けているように見える。実は、求愛中のオスがメスの進路を妨害しているのである。
  • モンキチョウの交尾
  • 年2~3回発生。母チョウは、明るい草地の比較的背の低い食草を見つけ、前脚で葉をたたき食草を確認すると、素早く腹部を曲げて葉裏に1卵産みつける。
  • タンポポ、アラゲハンゴンソウ
  • ヒメジョオン
  • ノアザミ、アベリア
  • ブタナ、アカツメクサ
  • ミゾソバ、ムラサキサギゴケ
  • イワカガミとモンキチョウ(森吉山山人平) 
  • チングルマとモンキチョウ(森吉山山人平) 
キタキチョウ
  •  小型。表裏ともに地色は黄色で、裏はほぼ無紋から黒色~黒褐色の斑点が現れる。平地から山地の樹林周辺や草地など食草の生える幅広い環境に生息。都市公園などでも見られる。日中、林縁部や草地を緩やかに飛翔し、ハギ類やアザミ類、ヒメジョオンなどの花を訪れる。オスは、湿った場所や川原などで好んで吸水する。時に集団も見られ、獣糞にも集まる。秋型は分散性が強く、都市部でも見られるようになる。 
  • 名前の由来・・・黄色いチョウで沖縄県のミナミキチョウと区別するため、その北に生息することから。
  • 食草・・・メドハギ、ミヤギノハギ、ナツハギなどのハギ類、ネムノキなど。
スジボソヤマキチョウ
  •  3つの橙斑が一直線に並ぶのが特徴。オスの表は濃い黄色、メスは黄色みのある白色。丘陵地から山地の森林的な環境に見られる。日中、アザミ類やヒメジョオンなどの花を訪れる。各種開発や植林などによって減少傾向にある。
  • 食草・・・クロウメモドキ、キビノクロウメモドキ、クロツバラなど(クロウメモドキ科)。
ヤマキチョウ
  • 希少種・ヤマキチョウ(絶滅危惧種1B類)
     全国的に減少が著しく、農地開発や里山環境の変化によって生息地は少ない。東北地方では、近年の記録はなく絶滅が危惧されている希少種。
  • スジボソヤマキチョウとの見分け方・・・両種はよく似ているが、前ハネ裏面の小さな紋がヤマキチョウでは丸く大きい。ハネの縁取りはヤマキチョウの方が明瞭。ヤマキチョウの方が丸っこく,後ハネの脈が太くよく目立つ。
ツマキチョウ
  •  ツマ(褄)とは、和服の前の裾端のことで、ハネの端が黄色なので、ツマキチョウと呼ばれている。ツマを黄色に着飾っているのはオスで、メスは平凡な白色である。後ハネの裏は、緑色の雲状の模様がある。5月中旬頃、ヒメギフチョウが姿を消す頃に最も多く見られる。主に平地から低山地の林縁部や川原、農地周辺などの草地に生息。近年は、ショカッサイなどの外来植物を食草とすることで、都市部の公園や農地、河川沿いでもよく見られるようになっている。 
  • 食草・・・タネツケバナ、イヌガラシ、ハタザオ、ミヤマハタザオ(アブラナ科)。ショカッサイ、セイヨウカラシナ、コマツナなどの外来アブラナ科植物。 
参 考 文 献
  • 「フィールドガイド 日本のチョウ」(誠文堂新光社)
  • 「フィールドガイド 身近な昆虫識別図鑑」(海野和男、誠文堂新光社) 
  • 「蝶と私 羽後町の蝶を中心に」(福嶋信治)