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昆虫シリーズ⑰ タテハチョウの仲間その1

コミスジ
  •  山では、どこにでも広く分布する普通種。2,3回軽く羽ばたき、滑るように滑空を繰り返す。その独特な飛び方が特徴の一つ。葉の上などに止まる時は、ハネを開いていることが多い。その際、白い3本の筋の模様が目立つ。三筋のチョウは、コミスジのほかにホシミスジ、オオミスジなどがある。
  • 特徴
    1. 表は黒褐色で、白い帯が3列。裏は赤みを帯びた褐色で、白色の帯状となる斑紋が目立つ。
    2. 見分けのポイントは、表裏共に一番前の白帯が二つに分離するのが特徴。 
  • 名前の由来・・・小型で、黒地に白い3本の筋があることから。
  • 生息環境・・・平地~低山地の雑木林周辺に多いほか、農地や公園など幅広い環境で見られる。
  • 日中、林縁や林道を羽ばたきと滑空を繰り返しながら飛翔し、よく葉の上にハネを開いて止まる。イボタノキなどの花を訪れる。路上で吸水したり、腐果、樹液、獣糞、人の汗もよく吸う。 
  • 食草・・・フジ、クズ、ナンテンハギ、ハリエンジュなどのマメ科植物。 
ホシミスジ
  • 特徴・・・白い帯が3列あるミスジチョウの仲間で、一番前の白帯が4~5つに分離しているのが特徴。 
  • 名前の由来・・・裏の後ハネの付け根付近に星状の黒点が現れるミスジチョウであることから。 
  • 生息環境・・・丘陵地から山地の疎林、林縁、露岩地に生息するが、ユキヤナギやコデマリなどの植栽によって、都市公園や人家周辺でも見られるようになった。 
  • 食草・・・シモツケ、ユキヤナギ、ホザキシモツケ、イワシモツケ、イワガサ、コデマリなど。 
オオミスジ
  • 特徴・・・一番前の白い帯は線状でギザギザがある。その端の白斑列が2列になっているのが特徴。。農村環境の変化とともに食草が少なくなり、やや減少していると言われている。 
  • 食草・・・山村の農地や人家などに植栽されたウメ、スモモ、アンズ、エドヒガンなど。 
イチモンジチョウ
  • 特徴・・・黒地に1本の白い帯がある。メスは不明瞭な白斑がある。裏は橙褐色で、表と同様白帯が目立つ。平地から山地の林縁部や低木林、雑木林周辺に普通に見られる。森林の渓谷沿いにも多い。リョウブ、ガマズミ、スイカズラなどの花を訪れる。地上で吸水することもある
  • 名前の由来・・・中央に1本の白い帯が「一」文字に見えることから。 
  • 食草・・・キンギンボク(ヒョウタンボク)、タニウツギ、スイカズラ、ニシキウツギ、ヤブウツギなど。 
アサマイチモンジ
  • 見分け方・・・イチモンジチョウによく似ている。表・前ハネの中室内の白斑は、大きく目立つのに対して、イチモンジチョウは全くないか、あっても不明瞭な点で見分けられる。 
  • 食草・・・スイカズラ、タニウツギなど。 
ヒメキマダラヒカゲ
  • 特徴・・・表は茶褐色で、黄斑と後ハネに黒斑列が目立つ。裏は黄土色で、眼状列があり、その外側は紫白色。メスは、オスより大型でハネ形は幅広く、腹部は太い。
  • 名前の由来・・・小さいので「ヒメ」。ハネに黄色の斑模様があり、薄暗い日陰を飛ぶチョウに由来する。
  • 生息環境・・・低山地から山地。主として標高1000m以上のササ類の生える落葉広葉樹林~常緑針葉樹林。
  • 食草・・・チシマザサ、シナノザサ、ミヤコザサ、スズタケなど。
  • 日中、薄暗い林床のササ類の上を緩やかに飛ぶ。各種の花を訪れるほか、吸水、獣糞に集まる。 ニホンジカの高密度地域では、ササ類に対する食害の影響で減少傾向にある。
ヒメジャノメ
  •  ハネに蛇の目のような目玉模様が連なるジャノメチョウの仲間。鳥は蛇を嫌うが、この蛇の目模様で害虫の鳥を驚かすことはちょっと無理であろう。実験によれば、大きな目玉模様になると、撃退の効果はあるという。ところが小さな目玉模様になると、鳥は少しもひるまない。とすれば、何のために目玉模様をつけているのだろうか。実は、致命傷にはならないハネに目玉模様をつけ、攻撃による被害を最小限にとどめる「はぐらかし戦略」だという。秋田に生息する「ジャノ」の名前がついたチョウは、ヒメジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、ジャノメチョウなど。
  • 特徴・・・表は、黒褐色~淡い灰褐色。前ハネに2~3つの眼状紋がある。裏の中央部に白線が走り、眼状紋が並ぶ。オスは裏の中央部が太く盛り上がる。
  • 名前の由来・・・小型のジャノメ(蛇の目)チョウに由来する。
  • 生息環境・・・農地、河川堤防、雑木林周辺などの開放的な環境を好む。
  • 食草・・・イネ、ススキ、チヂミザサ、チガヤ、アズマネザサ、カサスゲ、ヒメスゲなど。
  • 早朝や夕方によく活動し、草地の上を跳ねるように飛び、葉の上によく止まる。
  • 樹液に集まるほか、腐った果実や獣糞にも集まる。訪花は稀。
ヒメウラナミジャノメ
  • 特徴・・・小型。表は、濃褐色で、眼状紋が前ハネに1つ、後ハネに3~5つ程度ある。裏は、白色の波状模様と眼状紋が目立つ。
  • 名前の由来・・・小型で、ハネの裏が波模様をしており、蛇の目が4~6つあるチョウに由来する。
  • 食草・・・ススキ、チガヤ、チヂミザサ、アシボソ、メヒシバ、ショウジョウスゲなど。
  • 生息環境・・・樹林地の周辺、農地、河川堤防、公園、湿地などの草丈の低い草地。 草地上をチョコチョコと跳ねるように飛翔し、葉の上によく止まる。ニガナ、カタバミ、キツネノマゴなどの花を訪れる。
ジャノメチョウ
  • 特徴・・・表は濃~淡い褐色で、瑠璃色に輝く眼状紋が前ハネに2つ、後ハネに1つ。裏はより淡い同色で、中央部に白帯が見られる場合がある。
  • 名前の由来・・・黒く丸い紋の中に美しい瑠璃色をしている眼状紋があることに由来する。
  • 生息環境・・・明るい環境を好み、河川堤防や荒地、公園、農地、雑木林周辺の草地、採草地、山地草原などに見られる。低い位置を活発に飛翔し、よく葉の上に止まる。各種の花で吸蜜するほか、樹液や獣糞にも集まる。
  • 食草・・・ススキ、スズメノカタビラ、ヒカゲスゲ、ショウジョウスゲなど。
参 考 文 献
  • 「フィールドガイド 日本のチョウ」(誠文堂新光社)
  • 「フィールドガイド 身近な昆虫識別図鑑」(海野和男、誠文堂新光社)
  • 「蝶と私 羽後町の蝶を中心に」(福嶋信治)