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昆虫シリーズ㉓ 日本の夏を美しく彩る「ホタル」

  • 夏の風物詩 ホタル
     ホタルは、腹部に発光器をもち、子孫を残すため、あらん限りのエネルギーを絞り出して光を点滅させる。夜が更けるにつれてホタルの数が増え、同時に光を点滅させる。その光のウェーブは、清流の水面から森の上まで広がる。そんな幻想的な大乱舞は、日本の夏を彩る代表的な風物詩・・・忘れかけていた日本の原風景そのものである。それだけに古来より人々の心を惹きつけ、詩歌の素材として好まれてきた。
     ホタルは、卵、幼虫、サナギ、成虫と、それぞれ異なった姿をもつ完全変態を行う昆虫で、甲虫類に属す。ホタル科は46種類と多く、そのほとんどは、一生を陸上で過ごすが、幼虫が水中で過ごすホタルは、ゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルの3種類しかない。幼虫が陸生で森の中で美しく光るヒメボタルは、東日本では山地性だが、西日本では平地や河川敷にも生息する。また夜は発光しないが、日中飛翔するオバボタルなどがある。
  • ホタルINDEX・・・ゲンジボタルヘイケボタルホタルと文学ヒメホタルベニボタルオバホタル
  • ホタルの語源・・・ 漢字で「蛍」の他に「火垂」とも書く。昔は、水がきれいでホタルもたくさんいた。川岸のヤナギの木に、光るホタルが群がると、黄緑色の火が燃えているように見えた。その炎の塊からパラパラと火がこぼれる光景は、まさに「火が垂れる」そのもの。だから江戸時代の「大和本草」(貝原益軒・1709年)にも、「ホタル、ホは火なり、タルは垂なり、下体光る故、名とす」と書かれているとおり、「火垂れる」に由来するとの説が有力である。
  • 英語では「ファイアフライ」・・・「光りながら飛ぶ虫」という意味がある。
  • ゲンジボタルとヘイケボタルの見分け方・・・ゲンジボタルの背中中央には、赤い部分に黒い十字模様(上左)がある。一方ヘイケボタルの背中は、黒くて太い縦の線(上右)がある。ちなみにゲンジボタルの学名「Luciola cruciata」は、ラテン語で「光る十字架」という意味。成虫の前胸部は淡い赤色で中央に黒い十字形の紋があることから付けられた。 
  • ホタル前線・・・ゲンジボタルの成虫が飛び始める時期は、九州地方では5月上旬から始まり、7月には北東北・北海道へと北上する。「桜前線」と同じく、「ホタル前線」と呼ばれている。
    photo by ジユ (ヴェルヴィア)
  • 参考動画:【4K】ホタルの乱舞と自然音ASMR/癒し系3時間 - YouTube
  • どくとるマンボウ昆虫記」(北杜夫)・・・ホタル
     幼虫が水に棲むものにホタルを忘れてはなるまい。わが国ではホタルといえば水辺を思いうかべる。たしかにゲンジボタルもヘイケボタルも幼虫時代は水中にいて巻貝を食べている。ヘイケボタルの幼虫は日本住血吸虫の中間宿主であるミヤイリガイを食べ、ゲンジボタルの幼虫は肺ジストマの中間宿主であるカワニナを食べる立派な益虫だ。夏の宵闇をながれてゆく蛍火が減ってゆくのを惜しむためばかりでなく、ちかごろ料亭などで産地からとり寄せたホタルを庭に放ち見世物とするのは讃められたことではない。放されたホタルは棲息地もなく死んでゆくばかりだから、たださえ少なくなったホタルはますます減っていってしまう・・・
     わが国の水棲ボタルは、農薬とか川の岸がコンクリートになったりしたため(幼虫は蛹になるとき土手の土にもぐる)次第に減少してゆく運命にある。この由緒ふかい蛍をなんとか保存したいと願うのは単なる郷愁だけではない。ゲンジボタルも人工養殖が可能だ。水盤にうすく水をはり、小石を並べ、コケでおおってやると、ホタルはそのコケに産卵をする。一カ月ほどでゴミのような小さな幼虫が生れてくる。餌にはカワニナを与えるが、餌が十分でも狭い飼育器の中では共喰いのおそれがあるそうだ。
     ホタルは成虫ばかりでなく、幼虫も卵も光る。卵や幼虫まで光る理由はまだよくわかってないようだ。あの明滅する青白い蛍火の正体も、まだ人工的に真似ることができないものの一つである。蛍光ランプなどといってもかなりの熱をだし、本物の涼しさとは比べることができぬのだ。
ゲンジボタル
  • ゲンジボタルの形態
    1. オスは体長10~18mm、メスは15~20mmでオスより大きい。
    2. 雌雄とも黒色で、前胸は淡い赤色、背面中央の細い黒の十字架が特徴。
    3. 発光部は腹部。オスは第6節と第7節の2節が発光するが、メスは第6節だけが発光する。
    4. 夜行性で光をコミュニケーションにしていることから、小さな体にしては、複眼が著しく大きい。
    5. メスはオスよりも10日ほど遅れて羽化する。これは、チョウやカブトムシと同じく、オスの生殖能力の成熟に時間がかかるためと考えられている。
    6. メスは1年で羽化するものが多いが、オスは2~3年かかるものが多い。オスとメスの比率は、発生初期で5対1ほどだが、最盛期になると3対1ほどになる。それでも他の昆虫に比べてメスの発生比率がかなり低い。 
  • ゲンジボタルの名前の由来
    1. 「源氏物語」(紫式部・1004年)に登場する「光源氏」に由来するとの説。
    2. 「源氏、蛍の光りを借りて玉鬘(たまかずら)の容姿を示す」と、源氏物語の文句から付いたとの説。
    3. 1600年代の俳人・野々口立圃(ののぐちりゅうほう)の句、「かがり火も 蛍もひかる 源氏哉」から付いたとの説などがある。 
  • オスとメスの光り方の違い・・・オスは、ちゃんとしたリズムを刻んで光るが、メスはリズムなしに光る。暗闇の中、オスとメスが分かるように光り方を変えているというわけ。
  • 動画・・・ゲンジボタルのオスとメス | NHK for School
  • ゲンジボタルの一生(イラスト及び文:「秋田市ホタルマップ」より)
    1. 6月~7月に交尾したゲンジボタルのメスは、川岸の水苔などに500~1000個近く(ヘイケボタルは50~100個)の卵を産み付ける。産卵を終えると、オスもメスも死んでしまう。成虫の寿命は10日ほどと短い。
    2. 卵は30日ほどで孵化すると、幼虫は這って川の中に入り、カワニナという貝を食べながら10ヵ月以上、長い時で2年間も水中生活を送る。この間、幼虫は5~6回脱皮を繰り返す。
    3. 4月中旬~5月、雨が降る夜に川岸に這い上がって土の中に潜り、土まゆを作る。この中でサナギとなり、約50日後(ヘイケボタルは約30日後)に羽化し成虫となる。一年かけてやっと成虫になったホタルは、日中は水辺の草むらに潜み、夜になると異性を求めて発光しながら川の近くを飛び交う。
  • 動画・・・ホタルの一生 | NHK for School
  • 集団同時明滅・・・昼は、葉の陰に隠れて、じっと動かず夜の訪れを待つ。午後7時半頃、点滅を始める。最初に光る一番ボタル。光が少しづつ増えていく。光を点滅させながら飛んでいるのは、ほとんどがオスのホタルたくさんのホタルが同時に光を点滅させる「集団同時明滅」という現象は、その光のリズムに合わないメスを見つけやすくするための行動だという。メスは、オスたちに光の合図を返し、草むらで待つ。そこへオスが近づいてくる。
  • ゲンジボタルの生息条件
    1. 卵・・・水際に苔が生えている。苔の種類は、ノコギリゴケ、ナギゴケ、ツヤゴケなど。
      川幅が1~3m。正午頃、水面に直射日光が当たっている所とそうでない所が同じくらいの面積であること。日照4~5時間。 。
  1. 幼虫・・・清流の流れがあり、カワニナ(上写真)が豊富に生息している。
    水深10~40cm、流速0.1~0.4m/秒。川底は、砂礫・礫。
    カワニナのエサとなる珪藻類や落ち葉が水底に堆積して腐敗したものがあること。
    カワゲラやカゲロウ、トビゲラ、ヘビトンボなどの水生昆虫や微生物が多いこと。
  2. サナギ・・・中洲や自然の岸がある。
    陸地は、草で覆われ土の露出はほとんどなく、湿性植物が土の湿り気を保っていること。
  3. 成虫・・・飛翔空間や休息場所となる木陰がある。
    川の両側が林か、あるいは一方が水田や畑で他方が林である場合が多い。
  4. 水辺林・・・落葉広葉樹林が主体であること。
  5. 周辺の人家から下水が流入せず、田畑から農薬が流入しないか、あるいは極少量であること
  • ホタルが舞う里地里山の保全・・・里地里山は、非常に豊かな生態系の宝庫と言われている。中でもホタルの生息する里地里山は、驚くほど生物多様性が高い地域に限られている。かつてはどこにでもいたホタルだが、今やホタルが乱舞する姿を見ることすらほとんどできなくなった。それだけに、豊かな里地里山のシンボル的な存在として、全国各地でホタルの復活をめざした保全活動が行われている。
  • 成虫の活動条件
    1. 最も活発に活動する条件は、気温が高く、月明かりのない曇った日で、風のない夜と言われている。そんな条件であれば、少々雨が降っていてもかなり活動するという。
    2. 成虫は夜行性で、日中は川岸にある雑木林の日の当たらない涼しい葉陰で休んでいる。日没1時間後になると、ポツポツと光り始める
  1. 羽化直後のオスは、午後7時半ころから午前2時ころまで発光しながら飛び回る。
  2. 羽化後3~7日になると、活動は2回に分かれる。第一ピークは、午後8時~9時。第二ピークが午前0時~4時過ぎ。
  3. 羽化後8~15日の成虫は、二つのピークがつながって活動する。
  4. 羽化後16日以降になると、ピークは午後10時ころで、午前2時過ぎには活動をやめてしまう。
  5. メスは、飛ぶよりも歩き回る時間が長く、延べ活動時間は羽化後7日くらいまではオスの2倍以上になる。しかし8日くらいを境に急に活動が30分程と短くなる。
  • 参考動画:ホタルと飼育員の1年【足立区生物園】 - YouTube
ヘイケボタル
  • 水田や湿地に生きるヘイケボタルは、稲作文化の広がりとともに生息範囲を拡大してきた。昔は、どこにでもいる蛍であった。高度経済成長時代、農薬の使用量が増えるにつれて、その数は激減し、今では絶滅が心配されている。 
  • 参考動画:ヘイケボタルの乱舞(HD映像) - YouTube
  • ヘイケボタルの名前の由来・・・ゲンジボタルに比べて、体が小さく、光も弱いことから、源氏に負けた「平家」に例えたとの説などがある。地方によっては、別名コメボタルと呼ばれるように、水田を主な生息場所としている。 
  • 童謡「ほたる」・・・ほう ほう ほたる こい/あっちのみずは にがいぞ/こっちのみずは あまいぞ/ほう ほう ほたる こい
  • 日本の唱歌「蛍の光」・・・螢の光、窓の雪/書(ふみ)読む月日、重ねつつ/何時しか年も、すぎの戸を/開けてぞ今朝(けさ)は、別れ行く。この歌は、中国の故事から生まれた。
  • 中国の故事と「蛍雪」・・・中国の晋の時代、二人の青年は官史を志望していたが、家が貧しく、夜に本を読むための灯火の油を買うことができなかった。そこで一人は、夏の夜に蛍を数十匹つかまえて絹の袋に入れ、蛍の光で本を読み勉強した。もう一人は、冬の夜に窓辺に雪を積み上げて、雪の明かりで勉強を続け、共に二人は高級官史に出世した。この故事から「蛍雪」の言葉や唱歌が生まれた。
  • 幼虫の食性・・・カワニナだけでなく、水田周辺に多く見られるタニシ、モノアラガイ、オタマジャクシ、ドジョウ、サワガニ、ヤゴなどを食べている。 
  • 稲作とヘイケボタルの密接な関係
    1. 代掻きは、ヘイケボタルの幼虫やエサとなる貝の天敵であるヤゴやザリガニなどを一気に減少させる働きをしている。
    2. ヘイケボタルの幼虫は、体長1cmと小さく、柔らかいので代掻きによる影響をあまり受けない。
    3. 畦道改修は、幼虫が上陸してサナギになる時に都合の良い柔らかい場所を提供している。
    4. 稲が生育して水田一面を覆うと、天敵である鳥類などから身を守ることができる。
    5. 施肥は、水田にある藻類の増殖を促進し、それをエサとする貝類も増え、幼虫へのエサの供給に寄与している。
    6. 農薬の影響は、極めて毒性の強いものでない限り、一時的な散布では壊滅的な打撃を受けることがない。
    7. 水田に水のない期間は、湿った土の中に潜って休眠する。
    8. ヘイケボタルは、水田稲作の環境に適応して、その生態系の中で生きているのが分かる。
  • 水田を舞うヘイケボタル・・・点滅の感覚が短く、ゲンジボタルより光が淡いのが特徴。 
  • 元々、ヘイケボタルが生息していた環境は、太古の湿原であった。その証が北海道釧路湿原のヘイケボタル。湿原に自生するヨシと豊かな水がヘイケボタルが棲みやすい環境をつくっているのが分かる。 
ホタルと文学
  1. 古今和歌集・・・夕されば 蛍よりけに 燃ゆれども 光見ねばや 人のつれなき 紀友則
    意訳・・・夕方になると、私の恋心は蛍の光よりもより一層はっきりと光を放つ。それなのに、その私の恋の光を見てくれないから、あの人は私に対して冷ややかなのだろうか。
  2. 平安時代の随筆「枕草子」(清少納言)・・・夏は夜、月の頃はさらなり、闇もなお、蛍のおおく飛びちがいたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもおかし。
    意訳・・・夏は夜が良い。月が出ている頃は言うまでもなく、闇夜もまた、蛍が多く飛び交っている様子も良い。また、ほんの一匹二匹が、ぼんやりと光って飛んでいくのも趣がある。 
  1. 貴船神社の境内にある和泉式部の歌碑・・・縁結びの神社となった和泉式部の和歌、「物思へば 沢の蛍も 我が身より あくがれ出づる 玉かとぞ見る」。千年前、和泉式部は貴船神社を訪れる。夫が他の女性と恋に落ちたため、復縁を祈願。その帰り、暗澹たる和泉式部を出迎えたのは、貴船川の蛍であった。前述の和歌を詠んだ後、復縁がかなったことから、縁結びの神社になったとか。
  1. 元禄時代、貴人たちの間では「蛍見」という風流な遊びが各地の名所で流行していた。当時は屋形船が出て貴人たちは酒を飲みながらホタルの乱舞に酔いしれていたという。俳人・松屋芭蕉の句には、「ほたる見や 船頭酔て おぼつかな」とある。その後、庶民の間にも広がり、団扇でホタルを追って虫かごに集めた「蛍狩り」(上の図絵:国立国会図書館ディジタルコレクション)が浸透していった。
     昼蛍篭へふり袖かぶせてる 十四編(川柳) 
  1. 谷崎潤一郎「細雪」・・・蛍狩り
     それでも家を出た時分には人顔がぼんやり見分けられる程度であったが、が出るという小川のほとりへ行き着いた頃から急激に夜が落ちて来て、…小川といっても、畑の中にある溝の少し大きいくらいな平凡な川がひとすじ流れ、両岸には一面に茫のような草が長く生い茂っているのが、水が見えないくらい川面に覆いかぶさっていて、最初は一丁ほど先に土橋のあるのだけが分っていたが、 
     …というものは人声や光るものを嫌うということで、遠くから懐中電灯を照らさぬようにし、話声も立てぬようにして近づいたのであったが、すぐ川のほとりへ来てもそれらしいものが見えないので、今日は出ないのでしょうかとひそひそ声で囁くと、たくさん出ています、こっちへいらっしゃいと云われて、ずっと川の縁の叢の中へはいり込んでみると、ちょうどあたりが僅かに残る明るさから刻々と墨一色の暗さに移る微妙な時に、両岸の叢から蛍がすいすいと、すすきと同じような低い弧を描きつつ真ん中の川に向って飛ぶのが見えた。
     …見渡す限り、ひとすじの川の縁に沿うて、どこまでもどこまでも、果てしもなく両岸から飛び交わすのが見えた。…それが今まで見えなかったのは、草が丈高く伸びていたのと、その間から飛び立つが、上の方へ舞い上らずに、水を慕って低く揺曳するせいであった。…が、その、真の闇になる寸刻前、落ち凹んだ川面から濃い暗黒が這い上って来つつありながら、まだもやもやと近くの草の揺れ動くけはいが視覚に感じられる時に、遠く、遠く、川のつづく限り、幾筋とない線を引いて両側から入り乱れつつ点減していた、幽鬼めいた蛍の火は、今も夢の中にまで尾を曳いているようで、眼をつぶってもありありと見える。
     …ほんとうに、今夜じゅうで一番印象の深かったのはあの一刻であった。あれを味わっただけ蛍狩に来た甲斐はあった。…なるほど蛍狩というものは、お花見のような絵画的なものではなくて、冥想的な、…とでも云ったらよいのであろうか。それでいてお伽噺の世界じみた、子供っぽいところもあるが。…あの世界は絵にするよりは音楽にすべきものかも知れない。お琴かピアノかに、あの感じを作曲したものがあってもよいが。…
     彼女は、自分がこうして寝床の中で眼をつぶっているこの真夜中にも、あの小川のほとりではあれらのが一と晩じゅう音もなく明減し、数限りもなく飛び交うているのだと思うと、云いようもない浪漫的な心地に誘い込まれるのであった。何か、自分の魂があくがれ出して、あの蛍の群に交って、水の面を高く低く、揺られて行くような、…そういえばあの小川は、を追って行くと、随分長く、一直線に、どこまでもつづいている川であった。
  • 俳 句
    ゆるやかに着てひとと逢ふの夜 桂信子
    死なうかと囁かれしはの夜 鈴木真砂女
    蛍火や手首ほそしと掴まれし 正木ゆう子
    蛍火の明滅滅の深かりき 細見綾子
    一つ飛ぶは飛ばざるより淋し 後藤綾子
    蛍火やまだ水底の見ゆる水 福永耕二
    やはらかく肩つかまれし蛍狩 朝倉和江
ヒメボタル
  • 森のホタル ヒメボタル
     ヒメボタルは、主に森林内に生息し、「森のホタル」などと呼ばれている。幼虫は陸生で、カタツムリなどの陸生貝を食べる。開けた場所ではなく、人目につきにくい森林内などで光るのであまり知られていない。発光間隔が長いゲンジボタルと異なり、光を点滅させるのが特徴。秋田では、北秋田市森のテラスや小坂町休平地区などで見られる。
  • 参考動画:【蛍】 山の中を舞う姫蛍 ① / 奈良  タイムラプス - YouTube
  • ヒメボタル・・・体長5.5~9.6mm。6~8月に現れ、金色に点滅しながら光る。発光のピークは深夜23時頃。幼虫は陸生。触角は糸状。
  • 名前の由来・・・小さくて可愛いから「姫蛍」と書く。
  • 7月頃、オスは飛翔しながら、短いサイクルでチカッチカッと歯切れ良く明滅する。メスは、地上や草の茎、枝などに捕まりながら発光し、それに惹かれてやってきたオスと交尾する。
  • ヒメボタルの有名なスポット・・・岡山県新見市哲多町。岡山県の天然記念物に指定。 
  • 短いサイクルでチカッチッと光る。それが一斉に光ると、森の林床のクマザサあたりが真っ黄色になるぐらい、見事に光る。黄金の絨毯を引いたよう。ヒメボタルのオスは、約0.5秒に1回光を放つ。暗闇の森に散りばめた宝石のよう。幻想的な光は約1時間にわたって続く。 
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」(北杜夫)・・・陸生ホタルとカタツムリ
     幼虫が水中に棲むホタルはむしろ例外といえる。わが国でもヒメボタルなどは水と縁がないが、外国のホタルの幼虫は普通陸上でカタツムリを食べて生活している。カタツムリの天敵として、マイマイカブリのような甲虫とならんでホタルは重要な位置をしめている。カタツムリはすぐ殻の中に身体をひっこめてしまって、ツノダセヤリダセなどと唄ってもなかなか出てこないが、それでもほんの少し殻の外にでている部分がある。ホタルの幼虫はそこに大顎から毒液を注射する。するとカタツムリは麻痺してしまって、あとは幼虫のための動かぬ食料倉庫のようになる。ホタルの幼虫はその肉をかじったりしない。毒液で肉をとかし、スープにしながらゆっくりとすする。完全に殻だけにしてしまうまで、何日もかかってカタツムリのスープを堪能する。
ベニボタル
  • 5~8月、主に林の中に棲み、昼に活動する普通種。触角が大きく発達し、鮮やかな朱色のハネが特徴。体はやや扁平。ホタルと近縁だが、発光はしない。
  • 名前の由来・・・ハネが紅色をしている蛍
オバボタル
  • 黒色で胸部に1対の赤い紋があり、ヘイケボタルの模様に似ている。他のホタルに比べて触角が串状で大きいのが特徴。オスの触角は、メスのフェロモンを関知する為に発達したといわれている。山間部の森林や林縁で見られる。
  • 名前の由来・・・背中の模様が能面の姥(うば)に似ていることから。 
  • 腹部第7節にある1対の小さな点状の発光器から微かな赤色の発光を連続的にするが、配偶行動には用いられない。もちろん昼行性のため、夜に発光を観察することができない。.
  • 県内の主なホタル観賞スポット
    1. 秋田市山内松原の水路 (補陀寺周辺)
    2. 北秋田市桂瀬 森のテラス
    3. 東成瀬村 不動滝・ほたるの里公園、ぽよよんの森オートキャンプ場
    4. 仙北市田沢湖 水沢温泉郷
    5. 大仙市内小友余目地区 ビオトープ公園など
参 考 文 献
  • 「ホタル百科」(東京ゲンジボタル研究所編、丸善)
  • NHK「ホタル前線 北上の旅 蛍火照らす 美しき日本」
  • 「ファーブル先生の昆虫教室」(奥本大三郎、ポプラ社)
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」(北杜夫、新潮文庫)
  • 秋田市ホタルマップ