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昆虫シリーズ㉛ トンボの仲間その2

チョウトンボ
  • 最も美しいチョウトンボ(トンボ科)
     ハネは幅広く、光沢があり、見る角度や光の角度によって紫色や青色に輝き大変美しい。恐らく、数多いトンボの中でも最も美しい美麗種であろう。夏、池のそばの田んぼで群れをつくって飛び、夕方になると木の上を集団で飛び回っている。6月中旬頃から羽化し、9月頃まで見られるが、最近は個体数が減少していると言われている。それだけに本種が生息する池や沼は、良好な環境の証と言われている。
  • 名前の由来・・・飛び方が他のトンボとは全く違って、チョウのようにヒラヒラと舞うのが和名の由来。飛び方だけでなく、チョウのように美しいトンボである。
  • 全長 ♂34~42mm、♀31~38mm。成虫は6~9月。
  • 生息環境・・・平地から丘陵地の、ハスなどの水草の多い富栄養池を好む。河川敷の淀みなどでも見られる。移動性が強く、しばしば生息地外でも記録される。 
  • ・・・腹部が細めで、後ハネの先端の空白部分が小さめか途切れている。ハネは、青紫色に輝く。
  • ・・・腹部が太めで、後ハネの先端の空白部分が大きい。 ハネは、金緑に輝く個体が多いが、♂のような青紫色の個体もみられる。
  • 構造色・・・この鮮やかな色彩は構造色と呼ばれ、光や見る角度によって変化する。 
  • 成熟♂・・・水辺の枝先などに止まり縄張り占有する。頻繁にパトロール飛翔し、♂同士の争いは長く激しい。♂は♀を見つけると、つかみかかって連結し、空中で交尾する。交尾時間は数十秒と短い。交尾後、♀は単独で、浮葉植物の多い水面で打水産卵する。交尾直後は、♂が警護飛翔することもあるという。
シオヤトンボ
  • シオヤトンボ(トンボ科)
     湿地や休耕田、水田などで見られる。シオカラトンボより小型でずんぐりしていて、ハネの付け根がうっすらとオレンジ色をしているのが特徴。羽化後は、♂、♀ともに黄色地に黒い模様があるが、成熟すると、オスは体全体が白い粉のようなものに覆われる。メスは、黄色いところがくすんでくる。夕方には、地面にペタッと止まって日光浴をする。 
  • 名前の由来・・・♂が体全体に白い粉を吹くことから、漢字で「塩屋蜻蛉」と書く。 
  • ・・・未熟なうちは♀とほぼ同じ体色だが,成熟すると青白い粉を吹く。♂♀ともハネの付け根がうっすらとオレンジ色をしているのが特徴。全長 40~49mm。
  • ・・・黄褐色。全長36~46mm。
  • 成虫は4~7月に見られ、他の種より活動期間が短い。 
  • 交尾・産卵・・・♂は♀を見つけると飛び掛かって交尾し、周辺の地面や植物に静止する。産卵は♀単独で、浅い水面を腹端ですくい上げるように打水産卵する。
オオシオカラトンボ
  • オオシオカラトンボ(トンボ科)
     初夏~夏にかけて、池や沼、水田、その周辺の枝などで見られる。シオカラトンボより頑丈な印象で、ハネの付け根がこげ茶色。羽化後、♂、♀ともに黄色地に黒い模様がある。成熟すると、♂は体全体に青白い粉がつくが、腹部の先は黒い。♀はあまり変わらない。 
  • 名前の由来・・・シオカラトンボより大きく、♂の青白い粉が塩辛昆布(塩昆布)に似ていることから、漢字で「大塩辛蜻蛉」と書く。  
  • ♂が♀の産卵をガード・・・上の写真は、クリプトンの森の水たまりで産卵するペア。青白い粉がついているのが♂、黄色地が♀。♀は単独で浅い水面を打水し、腹端ですくい上げた水と卵とを前方に飛ばす。♂は付近を飛んで警護していた。この♂の行動は、自分の縄張りを守りながら、他の♂に♀を奪われないようにガードしていると考えられている。 
  • 全長 ♂49~61mm、♀49~60mm。成虫は5~10月 。
シオカラトンボ
  • シオカラトンボ(トンボ科)
     春~秋にかけて、各地の池や沼、水田、畑、草むらなど様々な場所で見られる。成熟した♂は、腹部が白く、先端1/3くらいは黒い。尾部付属器が白い。羽化後しばらくは♂、♀ともに黄土色の地に黒い模様があり、俗に「ムギワラトンボ」と呼ばれている。ハネの付け根に色は付かず、縁紋が黒い。全国に広く分布し、最も普通に見られるトンボの一つ。
  • 名前の由来・・・♂の青白い粉が塩辛昆布(塩昆布)に似ていることから、漢字で「塩辛蜻蛉」と書く。
  • ・・・未成熟時は黄褐色の体に黒色の斑紋がある。成熟すると、黒くなり、胸や腹背面が白い粉に覆われる。全長47~61mm。
  • ・・・麦わら模様で、やや黄色っぽく見え、腹部の先端は白くなる。複眼は緑色。 全長47~61mm。
  • 成虫は4月中旬~10月 。
コフキトンボ
  • コフキトンボ(トンボ科)
     初夏~晩夏、明るい池や沼で見られ、水辺からあまり離れず、よく水面に突き出た枝先などに止まっていることが多い。シオカラトンボより小型で、きゃしゃな印象を受ける。♀には、♂と同様の体色をしたものと、ハネに縞模様をもち、成熟しても白粉を吹かない「オビトンボ型」と呼ばれるものもいる。全国に広く分布するが、地域によっては減少しているという。
  • ♀のオビトンボ型
  • シオカラトンボとの見分け方
    1. シオカラトンボの裸眼は青か緑色をしているのに対して、本種は薄茶色であること。
    2. ハネに真珠色の光沢があること。
    3. 胸部の側面には、複雑な黒い模様があること。
  • 名前の由来・・・体に白い粉を帯びることから、漢字で「粉吹蜻蛉」と書く。
  • 全長 ♂37~48mm、♀37~46mm。成虫は4~10月 。
  • 真っ赤なショウジョウトンボとコフキトンボ 。
  • 交尾・産卵・・・成熟♂は、抽水植物などに静止して♀を待ち、♀を見つけると空中で交尾する。終始飛び続けることが多いが、植物に数秒間止まることもある。交尾後、♀は単独で水面に浮かぶ植物に、連続的に腹端むを押し付けるように卵を付着させる。
ハラビロトンボ
  • ハラビロトンボ(トンボ科)
     春~夏、湿地や休耕田で見られる。極端に腹部が短く太いので、他種との区別は容易。羽化後しばらくは黄色地に黒い模様があるが、♂は成熟するにつれて黄色から褐色、黒色、青色へと変化する。しばしば同じような環境に棲むシオヤトンボと間違うことがあるが、本種は複眼と複眼の間に青光りする部分があるので区別できる。 北海道南部から九州に分布。北陸地方では、最近まで見られなかったが、現在は分布を拡大しているという。
  • 名前の由来・・・腹部が幅広なトンボであることから、漢字で「幅広蜻蛉」と書く。
  • ・・・未熟♂に似ている。
  • 全長 ♂33~42mm、♀32~39mm。成虫は4~10月 。
  • 生息環境・・・湿地や水田の周辺で見られる。干上がってしまうような水たまりにも飛来する。
  • 交尾・産卵 ・・・交尾は水辺の植物に静止して行う。時間は短く、数十秒程度で終わる。交尾後、♀は単独で、腹端で水をかき上げ、卵を水滴にごと前方に飛ばして産卵する。しばしば♂の警護を伴う。
コシアキトンボ
  • コシアキトンボ(トンボ科)
     初夏~夏、木立に囲まれた暗い池や沼に多いが、市街地の公園の池でも見られる。全体が黒く、腹部の付け根だけ白色か黄色をしている。他に似たトンボはいないので区別は容易。 国内に広く分布するが、山間部では少ない。北海道では、最近定着が確認されたという。
  • 名前の由来・・・黒い体の中で、腰の部分だけが白く空いているように見えることから、漢字で「腰空蜻蛉」と書く。
  • 全長 ♂42~50mm、♀40~48mm。成虫は5~9月。
  • ♂の縄張り争い・・・成熟♂は、池の岸に沿って往復飛翔し、縄張り占有する。♂同士が出会うと、激しい争いが繰り広げられる。
  • 交尾・産卵・・・♂が♀を見つけると、すぐに捕らえて、終始空中で交尾する。交尾後、♀は単独で、水面に浮かぶ植物や浮遊物、水面に突き出た枝、枯れ枝などを腹端で連続的に叩いて卵を付着させる。♂が周囲を飛んで警護することもある。
マユタテアカネ
  • マユタテアカネ(トンボ科)
     水田や湿地などに生息し、周囲に木立のあるようなやや薄暗い環境を好む。小形赤とんぼ類の中では、生息地や個体数が多い。顔面に1対の黒い眉状紋がある。成熟した♂は、腹部が赤化し胸部はこげ茶色になり、尾部上付属器の先端が上に反った独特の姿をしている。♀は、成熟しても赤くならないが、稀に腹部背面が赤くなるものもいる。全国に分布するが、関東地方で減少しているという。
  • 全長 ♂31~43mm、♀30~42mm。成虫は6~12月 。
  • 交尾・産卵・・・♂は♀を見つけると捕まえて連結し、周囲の植物や地面に止まって交尾する。交尾後は、連結したまま打泥産卵することが多いが、単独産卵することもある。
ベッコウトンボ
  • 希少種・ベッコウトンボ(トンボ科)
     4枚のハネにはそれぞれ明瞭な褐色斑がある。平地から丘陵地のヒメガマなどの抽水植物が繁茂し、周囲に草原のある池沼に見られる。国内の種では、ヨシボシトンボとごく近縁で、種間雑種も知られている。現存産地は数えるほどしかなく、種の保存法により捕獲が禁止されている。秋田には生息していない。絶滅危惧ⅠA類の希少種。全長♂39~45mm、♀39~42mm。
  • 生息を脅かす要因・・・人間活動の盛んな平地の池沼に生息するが、埋立て、護岸工事、廃棄物の投棄、水位の急激な増減等の影響を受けやすいこと。さらにアメリカザリガニやオオクチバス、ヌートリアなどの外来生物による捕食圧も懸念されている。
参 考 文 献
  • 「日本のトンボ 改訂版」(尾園暁ほか、文一総合出版)
  • 「トンボ入門」(新井裕、どうぶつ社)
  • 「ポケット図鑑 日本の昆虫1400」(文一総合出版) 
  • 「フィールドガイド 身近な昆虫識別図鑑」(海野和男、誠文堂新光社)
  • 「虫の顔」(石井誠、八坂書房)