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昆虫シリーズ32 トンボの仲間その3

クロイトトンボ
  • クロイトトンボ(イトトンボ科)
     春~秋、各地の水辺で見られる。最も普通に見られるイトトンボ科の一種。成熟♂は、胸部に青白い粉を吹き、腹部の先だけが青色。水面スレスレを活発に飛ぶ。区別点は、♂、♀ともに複眼の後ろにある眼後紋は小さい点であること。 
  • ・・・成熟すると胸部に青白色の斑紋を帯びる。上付属器は「ハ」の字状に開く。全長27~36mm。 
  • ・・・左が♂、右が♀。斑紋は、緑色と青色の2型がある。肩黒条は太い。全長29~38mm。 
  • 生息環境・・・平地から丘陵地の周囲に樹林がある池沼や緩やかな流れに見られる。浮葉植物や沈水植物の繁茂する環境を好む。 
  • 交尾・・・成熟♂は、水面付近に静止して縄張りを占有し、ときおり飛んでくる♀を探す。♀を見つけると、直ちに連結し、水辺の植物に止まって数分間交尾した後、連結したまま水面付近の植物組織内に産卵する。潜水産卵も観察される。
キイトトンボ
  • キイトトンボ(イトトンボ科)
     初夏~夏、平地から山地の抽水植物の繁茂する池沼や湿地で見られる。休耕田や土砂採取跡地に生じた湿地でも見られる。♂は全身が明るい黄色、♀は緑色を帯びた黄色のイトトンボ。オスは腹部の先が黒く、目立つ。 
  • ・・・腹部は鮮やかな黄色、複眼と胸部は黄緑色、腹部先端付近は背面が黒い。全長31~44mm 
  • ・・・胸部は黄色から緑色まで変異がある。 
  • 交尾・・・成熟♂は、水辺の草の間を縫うように飛んで♀を探す。♀を見つけると、直ちに追尾して連結し、植物に止まって交尾した後、水面に浮いた植物に産卵する。その際、♂は直立姿勢をとり、周囲を警戒する。 
アジアイトトンボ
  • アジアイトトンボ(イトトンボ科)
     春~秋、池や沼、水田、水たまり、草むらなどで見られ、水辺から遠く離れた場所で見かけることもある。日本全国に分布するが、四国など近年減少している地域でも増加しているという。国内の種では、オガサワライトトンボとごく近縁である。 
  • ・・・胸部が緑色、腹部第9節の青色斑が目立つ。全長24~33mm。 
  • ・・・成熟過程で赤から緑色へと大きく変化する。成熟♀は、全身がほぼ淡緑色~緑褐色。全長24~34mm。
  • 未成熟♀・・・全身がほぼオレンジ色。発生周辺の草むらで生活するが、かなり離れた場所で見つかることもある。
  • 交尾・・・成熟♂は、湿地の植物に止まって縄張りを占有したり、草の間を低く飛んで♀を探す。♀を見つけると直ちに連結し、植物に静止して交尾する。♀は主に午後、単独で水面付近の植物組織内に産卵し、潜水産卵も行う。 
ルリイトトンボ
  • ルリイトトンボ(イトトンボ科)
     平地から山地の透明度の高い浮葉植物や沈水植物の繁茂する沼で見られる。北海道では普通に見られるが、本州では産地が局限される。北海道の個体群は、かつてエゾルリイトトンボと呼ばれる亜種とされていたが、DNA解析によると明瞭な差がなく、本種に分類されている。 
  • ・・・成熟すると斑紋が青色になる。地域によって黒色斑の大きさに違いが見られ、個体差も大きい。縁紋は黒い。全長32~37mm。 
  • ・・・斑紋は緑色タイプと青色タイプの2型がある。本州産の♀は黒色斑が発達する個体が多い。全長32~37mm。
  • 交尾・・・成熟♂は、水辺の植物に止まって縄張りを占有し、朝には岸辺の樹上などを飛んで♀を探す。♀を見つけると、直ちに連結して水辺の植物に止まり、交尾する。本州の♀は、単独で頭を下にして潜り産卵する。♂はその間、水面上で見張っている。
セスジイトトンボ
  • セスジイトトンボ(イトトンボ科)
     平地から丘陵地の浮葉植物や沈水植物の繁茂する池沼や、流れの緩やかな河川の中下流域、用水路などで見られる。国内の種では、オオイトトンボ及びムスジイトトンボと近縁である。近年、各地で減少傾向にあるという。
  • ・・・成熟すると斑紋が青色になり、複眼は緑色。肩黒条中に淡色線のある個体が多い。各節前縁に青白紋がある。上付属器は「ハ」の字状に開く。全長27~36mm。 
  • ・・・黄緑色の個体が多いが、稀に青色の個体も見られる。全長28~37mm。
  • 交尾・・・成熟♂は、♀を見つけると直ちに連結して、植物に止まって交尾する。主に連結したまま水面付近の植物に産卵するが、潜水産卵も行う。
アオイトトンボ
  • アオイトトンボ(アオイトトンボ科)
     明るい池や沼で見られ、高山の湿原にも生息する。成熟した♂と♀の一部は、青白い粉を吹くので、オオアオイトトンボと区別できる。♂、♀ともにハネを半開きにして、ぶら下がって止まることが多い。産卵は主に連結態で水辺の植物に行う。しばしば潜水産卵も見られる。卵で越冬し、越冬卵は-30℃の低温でも耐える。全国的に分布するが、南九州では産地が限られ、鹿児島では最近記録が途絶えているという。
  • ・・・成熟すると胸部と腹端に白粉を生じ、複眼は青くなる。未成熟の個体は、体に白粉がない。全長34~48mm。成熟♂は、水辺の植物に止まって縄張りをもつ。ハネを半開きにして止まるのがアオイトトンボの仲間の特徴。(写真出展:ウィキメディア・コモンズ)
オオアオイトトンボ
  • オオアオイトトンボ(アオイトトンボ科)
     平地から山地の樹林に囲まれた池沼、湿地に見られる。高山では珍しい。♂♀ともに、成熟しても胸部に白粉を帯びない。集団で樹木に産卵するため、かつては養蚕害虫扱いされたこともある。秋も深まると、池の上に張り出した小枝の樹皮に、♂♀連結したまま産卵する。卵からかえった幼虫は、そのまま下に落ちれ水の中に入れる。秋の夜間にも産卵するなど寒さに強く、晩秋から初冬にかけては、日向の地面に止まっている姿も見られる。本種は、ハネを半開きにして止まる特徴がある。
  • ・・・成熟しても胸部に白粉を生じない。腹部第10節に白粉を帯びる。複眼は緑色から青緑色。全長40~55mm。
  • ・・・腹部第9節が膨らむ。一部は、腹部第10節に白粉を帯びる個体がいる。全長40~50mm。
ホソミオツネントンボ
  • ホソミオツネントンボ(アオイトトンボ科)
     平地から山地の抽水植物の繁茂する池沼、湿地、水田、穏やかな河川などで見られる。前年の夏に羽化した成虫は、冬を越し、春になると成熟して水辺で交尾して、抽水植物に産卵する。秋田では、県内全域で見られるオツネントンボよりも寒さに弱く、沿岸地方に限定的に見られる。
  • ・・・成熟すると、体は青くなる。全長35~42mm。
  • ・・・成熟すると、水色になる個体と褐色のみの個体がいる。全長33~41mm。
アオモンイトトンボ
  • アオモンイトトンボ(イトトンボ科)
     春~秋、池や沼、水田、水たまり、草むらなどで見られる。最も普通のイトトンボ科の一種で、東北では分布域の北上が見られる。
  • ・・・胸部が緑色から青色、胸部第8・9節に青色斑がある。全長30~37mm。
  • ・・・成熟するにつれてオレンジ色から茶色へと変わるタイプと、♂と同じような体色、斑紋をもつタイプの2型がある。北方の産地ほど♂型が増える傾向がある。全長29~38mm。
  • 交尾・・・成熟♂は水辺を飛んで♀を探し、見つけると直ちに連結して交尾する。これらの活動は、早朝から見られ、午前中いっぱい続く。交尾時間は数時間と長い。午後、♀は単独で水面付近の植物組織内に産卵し、潜水産卵も見られる。
参 考 文 献
  • 「日本のトンボ 改訂版」(尾園暁ほか、文一総合出版)
  • 「トンボ入門」(新井裕、どうぶつ社)
  • 「日本の昆虫1400」(槐真史、文一総合出版)
  • 「フィールドガイド 身近な昆虫識別図鑑」(海野和男、誠文堂新光社)   
  • 「虫の顔」(石井誠、八坂書房)