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昆虫シリーズ37 鳴く虫 コオロギ、キリギリスの仲間

  • ♪あれまつむしが ないている
     チンチロチンチロ チンチロリン
     あれすずむしも なきだして
     リンリンリンリン リインリン (『虫のこえ』より)  
虫の音を愛でる文化
  • 歌川広重「道灌山虫聞之図」
     江戸では、虫聴きの名所No.1が「道灌山」であった。絵図には、眺めのよい場所に陣取った男たちが、鈴虫の声をBGMに酒を楽しんでいる。左の坂道には、虫カゴを持った子どもが、捕ったばかりの虫を母親に見せている光景が描かれている。 
  • 虫売り
     寛政の時代、神田でおでん屋を営んでいた忠蔵は、片手間に根岸で捕まえたスズムシを販売したところ、売れ行きが思いの他好調であった。そこで彼は、おでん屋を畳み、虫売りへと転業したのが虫売りの起源とされる。忠蔵は瓶に入れた土に産ませた卵を室内で温め、孵化させ、野生のスズムシよりも早く成虫に育てるという「虫の養殖」によって、莫大な利益を得た。その後、虫売りは江戸の文化として定着していった。明治になると、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)によって、日本人が虫の音を愛でる文化として世界に紹介されている。 (「夜商内六夏撰 虫売り」歌川豊国 画/鳥居清経画 中村富十郎の「虫売り」)
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・江戸時代の虫屋
     江戸時代になると専門の虫屋が出現した。神田に住んでいた八百屋の忠蔵という男が、根岸の里からスズムシを捕えてきて家で飼っていたところ、近所からゆずってくれと頼まれることが多く、ついに虫屋を専業にしたと伝えられている。その頃、青山下野守の家臣桐山ナニガシという武士が、忠蔵からスズムシを買ってきて、瓶の中に湿った土を入れ放しておいた。それが自然の状態に近かろうと考えたからである。スズムシが死んでしまってからもそのままほうっておいたところ、翌年の夏なにげなく覗いてみると、無数の小さな虫が土の上をはねている。昨年のスズムシが土中にうんだ卵からかえった幼虫だったのだ。桐山ナニガシはいたく喜び、以来鳴虫の人工飼育に熱中するようになり、ついには暖かい部屋に瓶をおいて自然状態のスズムシよりずっと早く孵化させる秘法を案出した。武士がスズムシを飼うのにこれほど熱中していたのだから、なるほど天下太平といえる。ここに神田の足袋屋安兵衛なる者があり、桐山ナニガシの秘法のことを聞き、一念こって別個に同じ秘法を案出した・・・近藤ナニガシというこれまた天下太平な武士がいて、細工物にこり、現在見られるような形の虫籠を案出した。この虫籠に人工孵化の鳴虫を入れて売りだしたところたいへんな評判で、安兵衛はたちまち産をなした。
  • ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の随筆「虫の音楽家」(1898年)
    「日本を訪ねたら、ぜひ一度はお寺の祭り――縁日に行ってみることだ。日本の祭りは夜見に出かけた方がよい。無数のカンテラや提灯の明かりで、あらゆるものがひときわ引き立って見える・・・
     やがて皆さんは、きっとそぞろ歩きの足を止め、幻灯のように光りかがやく屋台を覗き込むことになるはずだ。中には、小さな木の籠が並び、籠の中からはえも言われぬ甲高い鳴き声が聞こえてくる。鳴き声の観賞用の虫を売る商人の屋台でいっせいに響いている鳴き声は、虫の声なのだ。不思議な光景で、外国人ならほどんどが誘い込まれてしまう」 
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・秋なく虫
     コオロギ、キリギリスなどの秋なく虫は、どうやら日本人の嗜好ときり離せないものらしい。万葉の昔からコオロギはしきりと歌に詠まれてきた。平安朝になるとキリギリスがこれに代るが、実はこれもコオロギのことで呼名の変化があっただけ・・・歌に詠むだけでなく、虫選びとか虫聞きとかいうなんともみやびやかな行事が行なわれ・・・
     秋なく虫といっても多くは夏の候から鳴きだす。スズムシ、マツムシなどはおなじみのものだが、虫屋で一番値の高いものにカンタンがある。ほっそりとした女性的な虫で、その鳴声はフリューフリューという夢幻的なものだ。ある晩秋笹子峠へ登った帰途、日もくれかかったころ一面のススキの斜面にでた。そこでもここでもカンタンが鳴いていた。なんだか暮色漂う斜面全体が鳴いているようで、その繊細な沁みわたるような合唱は忘れられない。
     そのほか、クサヒバリ、カネタタキ、クサキリなどの鳴声はやさしく耳傾けるに足りるが、ウマオイくらいになると少し遠方で聞くほうがいい。キリギリスとなるとむしろやかましく、ボクツワムシとなると安眠妨害にもなる・・・
スズムシ
  • 鳴く虫の王様・スズムシ(マツムシ科)
     スズムシは、日本の鳴く虫の代表格で「鳴く虫の王様」と呼ばれている。ススキなどの草原や林縁に棲み、日中は根際にひっそり休んでいる。夜は活発に歩き回り、♂は少し高い所にのぼって鳴く。♂のハネは非常に大きく、発信器が発達している。体が黒く、触角は大部分が白い。やや湿ったよく茂った草原に棲む。飼っているスズムシは、「リーン、リーン」と鈴を振るように競って鳴くが、野生のスズムシは、密度が低いと、「リー」とあっさりした声のことが多い。いずれにしても最も有名な鳴く虫のひとつ。飼育して声を楽しむ人も多く、日本全国のペットショップやホームセンター、産地直売所などで販売されている。7~10月に活動。 
  • ♂と♀の見分け方・・・産卵管がなく、大きなハネを広げて鳴くのが♂。ハネが細長く、産卵管があるのが♀である。 
  • 秋の夜、スズムシは、近くの♀を呼ぶために美しい声で鳴く。右のハネには細かい凹凸が一列に並んでいて、それがヤスリのように見えることからヤスリ器と呼ばれている。左のハネには棒状の堅いコスリ器がある。その左右のハネをこすり合わせて音を出している。毎晩、ハネを震わせ♀を誘う♂。♂が♀に背中を向けて鳴くのは、最高のアピール
  • 動画「鈴を振るように競って鳴くスズムシ」
  • 美しい音の秘密・・・それはハネをこする速さ。1秒間にハネを約60回もハネをこすり合わせている。この音の高さは4.5キロヘルツ。1秒間に4500回もの振動が発生しているという。また鳴き声の大きさの秘密は、大きなハネを立て、ハネ全体を共鳴させて大きな音を出す。鳴く虫は、巧みなハネさばきで空気の振動を操る卓越した演奏者なのである。
  • スズムシの耳は、前脚のスネの内側にある。この耳で美しい鳴き声を聞いている。
  • なぜ夜に鳴くのか・・・日中、鳴けば、天敵の鳥やトカゲ、カマキリなどに居場所を教えるようなものである。だから日中は、草や枯れ草に擬態しジッと隠れているのである。
  • スズムシは、地上を歩いて生活している。飛ぶための後ハネはない。その代わり、長い後ろ足で跳ねることができる。足は細いが、走って逃げるのも意外に速い。
  • 繁殖期の♂は、♀をめぐって激しく争う。 
  • 動画「スズムシ/♂同士の激しいバトル」 ・・・おどし鳴き
  • 食性・・・スズムシは、セミの抜け殻や昆虫、小動物の死体などを食べる。水分をとるために、草木のやわらかい葉や、花も食べる。 
  • 「鈴虫の一生と飼い方」
    1. 鈴虫は、6月頃卵から小さな白アリのような幼虫が生まれ、8~9月頃に何度も脱皮を繰り返し、成虫になると美しい音色を聞かせてくれる。
    2. 夜に活動する夜行性の昆虫。日のあまり当たらない涼しい場所が良い。
    3. 成虫になり次第飼育箱が狭く、共喰いが起きるので大きい箱に移す。
    4. エサは、きゅうり、ナス、キャベツ等の野菜。3日に一度くらいで取り換える。水分補給を兼ねた昆虫ゼリーもOK。
    5. 共喰いをさけるために、タンパク質を多く含む市販の粉末エサあるいはカツオ節、煮干しなどを与える。
    6. 土は乾燥しないよう適度に湿らせる。霧吹きは、鈴虫にかかると弱るので、ストローなどが良い。
    7. 移動させる際は、手でつかまず、トイレットペーパーの芯や紙などに乗せてて移動させる。
    8. カゴの中に隠れ家をつくる。
    9. 成虫の♂は美しい音色で♀にラブコール。♀は産卵して役目を終える。
    10. 飼育箱の中で、役目を終えた鈴虫やエサは取り除き、土に湿り気を与え、かき混ぜず、涼しい暗い場所で保管する。
    11. 飼育ケース近くで、蚊取り線香や殺虫剤を使えば、全滅の恐れがあるので使用しないこと。
  • 俳句「鈴虫」
    虫も鈴ふるや住吉大明神 一茶
    虫も鈴ふる也家内安全と 一茶
    月さすや虫も鈴ふるいなり山 一茶
    鈴虫
    の鈴一心に振る夜明 秋山志世子
    鈴虫の髭より先に孵りけり 新免ヨシ
    鈴虫を塞ぎの虫と共に飼ふ 草間時彦
エンマコオロギ
  • 秋の夜長を鳴きとおすエンマコオロギ(コオロギ科)
     姿形は決して美しいとは言えないが、鳴き声は秋になくてはならない風物詩。鳴くのは♂だけで、♀に求愛するために鳴く。「コロコロリーリー」と低く鳴くのは、♀を誘う時の鳴き声。「コロコロコロコロ」と鳴く一人鳴きは、縄張りや♀を遠くから呼び寄せる時の鳴き声。「キリキリキリ」と鋭く短く鳴くのは、♂同士がケンカをしている時のケンカ鳴きと呼ばれている。
     体は黒褐色で大型。眼の縁にある黄褐色の眉紋は通常狭いが明瞭。草地に極めて普通で、人家周辺にも多い。秋に成虫。
  • 動画「秋の夜長を鳴きとおすエンマコオロギ」・・・3分01秒
  • ♂と♀の見分け方・・・♀のお腹の先には、針のような長い産卵管があるので簡単に見分けられる。♀のハネは、網の目のような模様がある。♂のハネには複雑な筋がついて、そのハネをすり合わせることで美しい音色を出す。 
  • 食性・・・雑食で、植物のほか小動物の死骸などを食べる。 
  • ♂の上に♀が乗る(写真:本来の逆、♀の上に♂が乗ってしつこく迫る)・・・♂がハネを震わせて鳴き、♀を呼ぶ。驚くのは、♂が上に乗るのではなく、♀が♂の上に乗る。♂は、お腹の先を上に向け、♀のお腹にくっつけ、精子が入った白い小さな袋を♀に渡す。♀はこの白い袋から精子を体内に取り込み、受精するという。 
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・エンマコオロギの三種の鳴声
     これらの虫たちの楽の音はやはり求愛のそれであろうか。野沢登氏によると、エンマコオロギの鳴声には少なくとも三種が区別されるという。
     第一はかりに「さえずり」といい、もっとも張りのある、節回しも複雑なもので、おそらくは雄が雌を求める状態のときに発せられる。第二は「誘惑音」といい、他のコオロギがそばにきたのを確認したときのもので、「さえずり」よりは弱くやさしい感じである。第三は「威嚇音」で、他のコオロギと争うときに発し、キリキリッとはげしく強いものである。コオロギを一匹ずつ飼っておき、雄を一匹にしておくと「さえずり」をやり、別の雄を入れれば「威嚇音」をだし、雌を入れてやれば「誘惑音」をだすそうだ。  
  • 中国の文化、コオロギを戦わせる遊び
     中国では、鳴き声ではなく、コオロギ同士を戦わせて遊ぶ文化がある。約1200年前、唐の宮廷で始まった遊びで、現代中国でも男性の間で人気のある娯楽。子どもから大人までコオロギ相撲を楽しむ中国では、「花鳥魚虫市場」にコオロギ専門店が数多く軒を連ねるほどで、その長い歴史と文化には驚かされる。 
  • 動画「オス同士のバトル」・・・1分34秒
  • 中国の昔話「コオロギと少年」
     昔、コオロギの勝負に夢中になった皇帝が役人に「強いコオロギをとってまいれ」と命令した。役人は、村の世話役の男に命令した。男は、やっと1匹の強そうなコオロギを捕まえ、鉢に入れた。ところが9歳の男の子がちょっと見ようと蓋を開けたすきに逃げられてしまった。男の子は捕まえようとしたが、間違えて潰してしまった。それを知ったお母さんに叱られると、男の子は家を飛び出していった。探すものの、男の子は井戸に落ちて意識が戻らなくなった。朝になると、外でコオロギの鳴く声が聞こえた。男が見に行くと、小さなコオロギだった。弱そうに見えたが、そのコオロギを捕まえて役人に差し出した。役人は怒ったが、試しに戦わせてみた。すると、ちびコオロギが次々と勝った。そのコオロギを皇帝に献上し、男はご褒美をもらった。それから何日も経ってから、男の子の意識が戻った。そして「ボク、コオロギになっていたんだよ」と言ったそうだ。 
  • エンマコオロギの飼育・・・乾燥に強く飼いやすい
    1. 湿気を吸い隠れ家、足場として紙製の卵パックが最適。
    2. エサは、きゅうりやナスなどの野菜のほか、タンパク質が不足すると共喰いをするので、鈴虫・コオロギ用の人工餌を忘れずに与える。
    3. 水分補給は、市販の昆虫ゼリーを使うと簡単。 
  • 一茶・・・「こおろぎ」の俳句
    こおろぎが髭(ひげ)をかつぎて鳴にけり
    こおろぎを叱(しかっ)て寝たる草家哉
    こおろぎの寝所にしたる馬ふん哉
    こおろぎのころころ一人笑ひ哉
    こおろぎのわやわや這入る衾(ふすま)かな
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・鳴く虫の飼育
     虫屋から鳴虫を買ってきて飼う場合、霧吹きなどで水をふいてやってはいけない。虫屋の虫はほとんど人工的に育てたものだから、水気にはかえって弱いのだ。そうして秋の夜を彼らの鳴声に聞きいるのもよいが、もう少し手数をかけて、自分で卵から育ててみるのも面白い。
     卵をうませる親虫はなるたけ野生のものを捕えてくるのがいい。野生のほうがイキがいいのはひとり鳴虫にかぎらない。雌雄二匹を一つの容器に入れておくと交尾をするが、そのあとたいてい雌は雄を食べてしまう。そういうさまをつくづくと眺め、男性は男性なり、女性は女性なり、それぞれの感慨にふけるだけでもその意義は大きかろう。
     箱、壺のようなものに浅くこまかい赤土(あまり有機物を有さないもの)を入れ、交尾をすませた雌を入れておけば勝手に土中に産卵をする。虫屋はこれをフルイにかけ、卵だけをとりだし、さらに健康な卵をえりわけるという面倒なことをするが、一般にはむろんほっておいてよい。早く孵化させるために暖めたりするのもやらぬがよい。過度の乾燥、湿気、寒気をさけてほったらかしておくと、初夏にはごく可愛らしい仔虫が生れてくる。食物としては小鳥のすり餌をやる。これをどろどろに水にとかし、菜っぱのようなものにぬりつけて与える。少し大きくなってきたら、ウマオイ、キリギリスなどはすぐ共喰いをするから、別々に管理する必要がある。なんだか面倒くさそうな話だが、熱帯魚を飼う十分の一の手数であるし、それでもヤッカイだという人は、庭か近所の草むらにぶちまけてしまえばいい。  
  • マツムシ(マツムシ科)
     「ピッ ピリリ」と鳴くマツムシは、スズムシと並んで有名な鳴く虫。童謡「むしのこえ」の冒頭に登場するマツムシの「チンチロリン」と聞きなしされる声は美しいが、多数が鳴くとうるさく感じる時もある。体は麦わら色で肢が長い。オスのハネはやや幅広い。やや乾燥した丈の高い草原に棲む。8~10月に活動。
  • 大陸からやってきたアオマツムシ(マツムシ科)
     明治の頃に渡来した外来昆虫で、いつの間にかどこにでもいる鳴く虫になった。「リィーリィーリィー」と美声だが、多数が鳴くとうるさく感じることもある。成虫は鮮やかな緑色で、オスの発信器は褐色。若い幼虫は茶褐色。樹上性で、市街地や明るい二次林に普通に見られる。8~11月に活動。 
  • 江戸時代には、いなかった外来昆虫だが、テレビの時代劇にアオマツムシの鳴く声が流れていることがある。
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・アオマツムシ(写真:ハネを立てて鳴く♂)
     あまり人に知られていないものにアオマツムシがあり、これは明治のころ日本に渡来した種類で、古川晴男氏によれば、その原産地は中部以南の中国、インドシナ、マレー地方であろうと推定されている。夏の候から樹上でリュウリュウというするどい声で鳴く。名前のとおりマツムシの形に似ているが色は濃い草色をしている。アオマツムシは東京を中心として繁殖していったが、私が子供のころはその全盛期であり、樹上からひびく鳴声は夏の風物詩のひとつでもあった。それが戦争を境として急速にその数を減じてしまった。戦災で樹木が失われたというより、戦後の薬剤撒布でやられたらしい。今では日本のあちこちに散らばっているようだが、東京ではめったにその声を聞かれない。アオマツムシはいろんな樹木の葉を食べるため害虫ではあるが、いざいなくなると寂しい気がする。
  • マダラスズ(ヒバリモドキ科)
     丈の短い草地に棲む小さなコオロギ。鳴き声は「ビィー ビィー」。後腿節に明瞭な黒斑があり、まだら模様となる。明るい草地や裸地に棲み、市街地にも普通に見られる。年1~2化で、夏から秋に成虫。
  • 穴掘りが特異なケラ(ケラ科)
     土の中に穴を掘り、ミミズや植物の根を食べて暮らすコオロギの仲間。体には微細な毛が密生してビロード状になり、水をはじき、汚れにくくなっている。前脚は、平たく頑丈で数本の突起があり、平泳ぎのように動かして脇に土を押しのけて進むことができる。この前脚は、モグラの前脚にそっくりで、シャベルやスコップに似た働きをする。
     土の中で「グリュー」と低い連続音で鳴くので、その声に気付きにくい。メスにもハネに発信器があるが、オスほどではない。湿った草地や田畑などの土中に棲み、灯火に飛来する。ほぼ周年成虫。
  • キリギリス(キリギリス科)
     キリギリスは、数少ない昼行性の昆虫。夏の高原で「チョン、ギース」と威勢よく鳴く。緑色と茶色の体色は、草むらでは目立たず、見つけるのが難しい。とても飼いやすく、江戸時代から鳴く虫の代表として親しまれている。本種は、青森県から岡山県に分布するヒガシキリギリスと、近畿地方から九州にかけて分布するニシキキリギリスの2種に分けることがある。北海道には別種のハネナガキリギリスがいる。
  • キリギリスの仲間の脱皮
  • 一茶・・・「きりぎりす」の俳句
    我袖を草と思ふかきりぎりす
    小便の身ぶるひ笑へきりぎりす
    我死なば墓守となれきりぎりす
    捨られし夜より雨ふるきりぎりす
    蛬(きりぎりす)犬もふまずに通りけり
    蛬(きりぎりす)ひざの米つぶくらふ也
    蛬(きりぎりす)髭(ひげ)をかつぎて鳴にけり
    蛬(きりぎりす)まんまと籠(かご)を出たりけり
  • クビキリギリス(キリギリス科)
     平地の草原に生息するが、よく飛んで移動するので、時には街中の公園や山の森林でもみかける。体は細長く、頭頂は三角型に尖る。大アゴは赤褐色。緑色タイプと褐色タイプがあるが、赤い個体もいる。秋に羽化し、イネ科の草の株などに潜り込んで越冬して春に鳴く。「ジー」。
  • ヤブキリの仲間(キリギリス科)
     ヤブギリの仲間は、樹上、林縁の草地、草原など様々な環境に見られる。6~10月に活動。昔から分類学者を悩ませるほど、姿は似ているが、鳴き声が地方によって様々あり、まるで別種に思えるほど違いがある。ヤブキリ、ヤマヤブキリ、コズエヤブキリ、ウスリーヤブキリの4種に分類している人もいるが、素人には判断が難しい。緑色のものが多いが、褐色のものもいる。成虫は主に樹上に棲むが、若い幼虫は草地の花の上でよく見かける。鳴き声に変異が極めて大きい。
  • 鳴き声・・・「シッ シッ シッ シッ シッ」「ジリリ ジリリ ジリリ」など。主に夜に鳴くが、秋は昼に鳴くことが多い。
  • 肉食性が強い(写真:終齢幼虫)・・・前脚はトゲだらけで、獲物を捕まえるのに適した肉食性が強い虫である。樹液をなめている大きなガを食べたり、街頭に集まる甲虫をかじったりするなど、虫が集まる場所で獲物を待ち構える習性がある。
  • ヒメクサキリ(キリギリス科)
     寒冷地に多く、平地でも普通に見られる。イネ科植物の草鞘や根際に産卵する。ジッジッと前奏の後、ジーーーーーーーーーーーーーと連続的に中程度の音量で鳴く。
  • ツユムシの仲間(キリギリス科)
     キリギリスの仲間で、弱々しい体つきのものをツユムシの仲間と呼んでいる。花や花粉などを食べるものが多く草食性。♂はとても小さい声で鳴く。周波数が高いので高齢者にはほとんど聞こえない。
  • ヒメギス(キリギリス科)
     「シュリリリリ」と、昼も夜も鳴くが、特に朝早くによく鳴く。良く晴れた真夏の草原は、まだ暑くならない早朝にヒメギスが鳴くと、涼し気に聞こえる。体は黒褐色で、背中は灰褐色、稀に緑色。湿った草地に見られる普通種。6月~10月に活動。
  • ヒメギス・・・前ハネが長いタイプ
  • コバネヒメギス(キリギリス科)
     ヒメギスに似ているが、ハネは極端に短いのが特徴。腹部下側は黄色い。6~9月に活動。ヒメギスよりは乾燥した草地に見られる普通種。
  • 鳴き声・・・「シチッ シチリッ」。鳴き声はの音量は低めで、野外では気付きにくい。
  • ウマオイ(キリギリス科)・・・ハヤシノウマオイとハタケノウマオイがいるが、見た目で区別するのは困難。鳴き声で見分ける。ハヤシノウマオイは、「スイーッチョン、スイーッチョン」と馬を追いたてる声に見立てて、ウマオイと呼ばれている。ハタケノウマオイは、「スイッチョ、スイッチョ」と速いテンポで短く鳴く。
  • オナガササキリ(キリギリス科)・・・大型で、♀の産卵管が非常に長いササキリの仲間。ススキなどの丈の高いイネ科植物で見られる。「ジリリ・ジリリ・ジリリ・・・」と断続的に鳴く。
  • クツワムシ(クツワムシ科)
     ♂はガチャガチャとかしましく鳴くことから、俗にガチャガチャとも呼ばれている。緑色型と褐色型がある。成虫は8、9月に出現し、♂は、夜、林やその縁の下草に止まって大きい声で連続的に鳴く。1匹でもうるさいが、多数が鳴き立てるときわめて騒々しい。この鳴き声が、ちょうどウマの轡(クツワ)の鳴る音によく似ていることが和名の由来。日本特産種で、関東地方以南、九州に分布する。近縁種はタイワンクツワムシ。
  • 褐色型
  • カネタタキ(カネタタキ科、写真は♀)
     「チン、チン、チン」と区切って鳴くのが名前の由来。庭木や生け垣、公園の樹木などの樹上性のコオロギ。人家に入り込んで鳴いていることも多い。
  • 鳴く虫の女王・カンタン(マツムシ科)
     8~9月、夕方から夜にかけて「ルルルルル」とよく響く低音で鳴く。各地で「カンタンを聞く会」が開かれるほど有名な昆虫。灌木や草丈の高い草むらに住むコオロギの仲間だが、なかなか姿を見ることは少ない。オスが鳴くと、メスが後ろからやってくる。オスのハネの付け根には、誘惑腺と呼ばれる所から甘い汁が出るらしい。そこをメスがなめている間に、オスは精子の入った袋をメスの生殖孔に入れる。
  • 俳句「虫」・・・「虫」は、俳句では秋に草むらなどで鳴く虫の総称で、セミは含まない。
    行水の捨どころなきむしのこゑ 鬼貫
    虫の声月よりこぼれ地に満ちぬ 富安風生
    昼のしらじらしくもなきにけり 日野草城
    いま褪せし夕焼の門の虫しぐれ 水原秋櫻子 
参 考 文 献
  • 「バッタ・コオロギ・キリギリス鳴き声図鑑/日本の虫しぐれ」(村井貴史、北海道大学出版会)
  • 「身近な昆虫のふしぎ」(海野和男、サイエンス・アイ新書)
  • 「別冊太陽 昆虫のすごい世界」(平凡社)
  • 「鳴き声から調べる昆虫図鑑」(高嶋清明、文一総合出版)
  • 「ファーブル先生の昆虫教室」(奥本大三郎、ポプラ社)
  • 「別冊太陽 昆虫のとんでもない世界」(平凡社)
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」(北杜夫、新潮文庫)
  • 「俳句歳時記」(角川学芸出版編、角川ソフィア文庫)
  • 「別冊NHK俳句 季語100」(NHK出版)
  • 「ワイルドライフ 潜入!足元のにぎやかな世界の知られざる昆虫のコミュニケーション」