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昆虫シリーズ41 究極の肉食昆虫 カマキリ

  • 名前の由来・・・カマを持ったキリギリスとの説など、色々な説がある。漢字で「蟷螂」と書く。身の程知らずのことを「蟷螂の斧」という。これは、カマキリが人間に対してもカマを振り上げて威嚇してくる様子をよく表している。 
  • 拝み虫・・・カマキリが対のカマを重ね合わせて、前に突き出している様子がお祈りをしているように見えることから、俗称「拝み虫」とも呼ばれている。 
  • 究極の肉食昆虫スタイル・・・カマキリの前脚は、折り畳み式の鎌になっている。顔は三角頭で目が正面を向いている。これは獲物をよく見て距離を測るためである。口が尖っているのは、獲物をかじるためである。まさに戦う虫だから、究極の肉食昆虫スタイルに進化している。
  • カマキリが編み出した必殺技・・・肉食の鳥のフクロウと同じく、首がグルリと後ろの方まで回る。じっと動かないのは、気配を殺して獲物に油断させるためである。そしてジワジワと間合いを詰めた後、じっと体を縮めて動きを止め、獲物を間合いに入るまで引きつけてから、素早く体と腕を伸ばして鎌に挟み込む攻撃で、獲物を仕留める。この必殺技は、中国の武術「蟷螂拳(とうろうけん)」のヒントになったと言われている。 
  • 参考動画:オオカマキリの狩り/海野和男 - YouTube
  • 隠れ蓑戦術・・・カマキリは、自分から獲物を追ったりはしない。待ち伏せタイプの狩りをする。その狩りの成功率を上げるため、動きを止め植物と一体化して、獲物に気付かれないように身を隠す戦術が特異である。中には、ハナカミキリのように植物の一部に溶け込んだ体のつくりをしているものもいる。 
  • 花は絶好の狩場・・・花には、様々な種類の昆虫が蜜や花粉を求めてやってくる。だから獲物の集まりやすい花のすぐ近くは絶好の狩り場となる。カマキリの撮影には、花の周辺を探すのが一番。
  • 花の蜜を吸っていたチョウを捕獲
  • 美しい花に化けた殺し屋・ハナカマキリ
     東南アジアの一帯の熱帯雨林に広く生息しているハナカマキリは、葉の上に止まると、ピンク色の花にそっくり。蜜を吸う虫は、紫外線で蜜のある花を探している。試しに頭の尖った部分を紫外線で見ると、花の蜜標のように見えるらしい。だからハチは、ハナカマキリの正面に寄って来る。さらにハチやチョウを集めるフェロモンを出しているとの説もある。花の蜜を好む虫たちにとって、ハナカマキリは「美しい花に化けた怖ろしい殺し屋」そのものなのである。
  • 参考動画:ハナカマキリが蝶を捕る/海野和男 - YouTube
  • オスとメス・・・オスは、体の大きさがメスの半分くらいしかない。しかし、ハネがよく発達していて、素早く動いてよく飛ぶ。メスは大きく、大量の卵を産むのでお腹が太い。よく植物に止まってじっと獲物を待っている。動くものに反応する。だからオスのカマキリがメスに不用意に近づくと、獲物にされることもある。 
  • 命がけの交尾・・・オスは、メスの様子を伺いながら用心深く近づき、メスのカマキリにさっと飛び乗って交尾する。交尾中でも、油断すると、後ろを振り向いたメスに頭からかじられてしまうことがある。そんな首のないオスと交尾できるのだろうか。昆虫は、体の別の部分にも脳のような神経の塊があるので、頭がなくても交尾できるという。特にハラビロカマキリでは、交尾後、ほとんどが食べられるという。共食いしたメスは、共食いしないメスより、お腹が膨れてたくさんの卵を産むという研究結果がある。 
  • 参考動画:交尾中に頭を食べられるオオカマキリのオス【共食い】/rarasukekun - YouTube
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・命がけの求婚
     カマキリの雄の求婚はまったく生命がけである。雄はふたまわりも大きい雌にむかってそろそろと近づくが、うっかり接近すると単なる獲物として食べられてしまう。そこで雄はごくそろそろと近づき、雌が気がつけばピタリと静止する。カマキリの類は動視といって、動くものにはすぐ注意をむけるが不動のものは無視してしまう。それを利用してカマキリの雄は、動いたり不動の姿勢をつづけたりして、何時間もかかった末ようやく思いをとげる。思いをとげたあとはむざんにも雌のエネルギー源として食糧にされるのは周知のとおりだ。しかし冷酷そのもののような雌カマキリのあの三角形の顔、自分よりはるかにたくましい体を思えば、そのような女房のそばにずっと飼育されるより、いっそ一思いに食べられてしまったほうがまだしも幸福とも考えられる。 
  • ファーブル先生は、オスとメスのウスバカマキリを捕まえ、真ん中に仕切りをして別々に入れて飼うことにした。翌朝、メスがオスの部屋に入り込んでいた。オスは、バラバラに食い散らかされ、脚の一部が残っているだけだった。
  • 5月頃、小さな幼虫が一斉に羽化し、何百匹も生まれてくる。小さいくせに、みんな鎌を体の前に構え、尻尾をくるっと上に巻いている。大人と同じく、獲物がそばに寄ってくるまでじっと静かに待っていて、鎌の届く範囲に来ると、さっと捕まえる。大きな獲物は無理だが、アブラムシや小さなハエなどを捕まえて食べる。
  • メスに食われないオスとは・・・ニューヨーク州立大のウィリアム・ブラウンたちによると、たくさんのメスと出会った経験があるオスは、出会いの少なかったオスと比べて、メスにゆっくりと近づき、共食いされないよう慎重にふるまっていたという。一方、メスの経験が少ないオスは、やっと訪れたチャンスに身を捧げるのを厭わなかったという。どうもオスの生死の分かれ目は、経験知の差にあるようだ。 
  • 卵鞘(らんしょう)・・・カマキリは、数十から数百個の卵をスポンジ状の物質に包んだ、卵鞘(らんしょう)と呼ばれる形で産卵する。交尾を終えたメスは、木の枝などに頭を下にして止まり、腹部の先から液体を出してこねるように泡立て、その中に整然と卵を産みつける。泡は、やがて固まり、スポンジ状になって寒さや外敵から卵を守る。メスは、生涯の間に数回産卵する。 
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・カマキリの卵塊
     草の茎などについている金魚にやる麩のようなものがカマキリの卵塊であることは誰もが知っている。冬、葉がおちてしまったあとでは殊によく目につくが、初夏、これから二、三 百匹もの仔虫がでてくるところはなかなか壮観だ。ごくチビの、それでも生意気にカマキリらしい恰好をした奴らが、束になってゾロリゾロリとでてくる。大きな親虫のほうはどうも世の男性にある種の女房を思いださせるようだが、こちらの仔虫のほうはけっこうあどけなく、女房にあらざる齢ゆかぬ少女を連想させる。しかし、その仔カマキリにしたところで、やがて成長すれば凄じく翅をひろげカマをふりあげて威嚇をするもので、やはりカマキリにも少女にも近寄らぬほうがいい。 
  • 不完全変態・・・春、前年に産まれた卵のうから数百頭もの幼虫が糸を引きながら出てくる。幼虫も親にそっくりで、サナギの時期をもたない不完全変態の昆虫である。 
  • 生涯肉食・・・幼虫時代は、アブラムシやウンカの仲間、アリなどを捕食するが、成虫になると、大型のチョウやセミ、トンボ、スズメバチなども食べる。しばしば共食いも観察されるほか、大型の種ではカマキリやカエル、小鳥も捕食していることが観察されている。 
オオカマキリ
  • 日本を代表する大型のオオカマキリ
     ♀は緑色型と褐色型があるが、♂はおおむね褐色型で、緑色型はごく稀である。成虫が見られるのは8~11月。♀はがっしりとした体つきで、卵を産むため腹部は太い。成虫になってしばらくすると、太り過ぎて飛べなくなる。♂は体が細く華奢で、よく飛ぶ。しかし、せいぜい5mぐらいの高さの木に飛び上がるぐらいだという。 
  • オオカマキリとチョウセンカマキリの見分け方・・・両者は良く似ている。怒らせて見分けるのが早道。カマキリは、怒ると立ち上がってハネを持ち上げて威嚇のポーズをとる。
    1. 胸の色・・・オオカマキリは淡い黄色、チョウセンカマキリはオレンジ色
    2. 後ハネの色・・・オオカマキリは焦げ茶色、チョウセンカマキリは薄い茶色
  • 両者は生息場所も異なる・・・オオカマキリは林の近くの草地に多く、チョウセンカマキリは田んぼや河原などの開けた場所で多く見られる。 
  • 体長・・・♂68~92mm、♀77~105mm。♂の体長は♀より若干小さいが、それほど差がない。
  • 複眼2個と単眼3個・・・大きな2個の複眼を持つカマキリの顔は、上下左右によく動く。複眼に偽瞳孔と呼ばれる黒い点がある。複眼の間に3個の単眼があり、明るさを感じる。 
  • 花の上で待ち伏せ・・・花の近くで待ち伏せすることが多い。花に虫が集まるのを知っているのであろう。動く虫に反応し、動かない虫には興味を示さない。 
  • 交尾・・・交尾は、♂の使命だが、♀が♂を食うこともあるので、最も危険な行為。♀を見つけた♂は、慎重ににじり寄るように近づくが、最後は勇気を振り絞って一気に背中に乗る。 
  • オオカマキリの卵鞘
  • 孵化と成長・・・5月に入ると孵化する。幼虫は糸を引いて卵鞘からぶら下がるようにして、次々と出てきて、薄い皮を脱ぎ、1齢幼虫になる。6月に入ると幼虫が目立つようになる。8月に入ると成虫が増えてくる。孵化から成虫まで約3ヶ月かかる。8回脱皮して成虫になることが多いが、エサの具合によって幼虫期が延びることもあるという。
チョウセンカマキリ
  • チョウセンカマキリ・・・明るい草地に住むチョウセンカマキリは、オオカマキリと並んでよく見られる人気者。胸のオレンジ色の紋を誇らしげに見せて威嚇する様が格好いい。河原や海に近い草原、田んぼや畑に多く生息している。成虫が見られるのは8~11月。
  • 体長・・・♂65~80mm、♀70~90mm
コカマキリ
  • コカマキリ・・・小さいカマキリということで、「小カマキリ」となったが、ヒメカマキリやヒナカマキリよりは大きい。細身の小さなカマキリで、褐色型が多い。暖かい地方では緑色型も見られる。カマの内側にクリーム色の目玉模様がある。
  • 見分け方・・・前脚の内側に黒色の帯がある。
  • 幼虫
  • 体長 36~63mm
ハラビロカマキリ
  • ハラビロカマキリ・・・幅広く、ややずんぐりした体型のカマキリ。ただし寒い地方には少なく、関東地方より西の方に多い。体色は、緑色、黄色、褐色など様々なタイプがある。林の中より、人家近くの木のある場所に多く、公園や街路樹、植え込みでよくみかける。背中から見た時に一対の白い斑紋があることや前脚の基部に小さな黄色い突起が並んでいることで他種と見分けることができる。
  • 体長・・・♂45~65mm、♀52~71mm
  • ハラビロカマキリの卵
  • カブキカマキリの威嚇のポーズ/海野和男 - YouTube
  • 祇園祭にも登場するカマキリ
     蟷螂山(とうろうやま)は、別名「カマキリ山」とも呼ばれ、屋根の上のカマキリが鎌や首をもちあげ羽を大きく広げるなどユーモラスな動きをする。祇園祭の中でも、異彩を放つ唯一のからくり仕掛けが施されている。これは、カマキリが自らの力をも顧みず、斧をもって強敵にたち向かう姿を現し、中国の故事「蟷螂の斧を以て隆車の隧(わだち)を禦(ふせ)がんと欲す」に由来する。その起源は南北朝時代、足利義詮軍と戦い戦死した当町の四条隆資(たかすけ)卿の武勇ぶりを蟷螂(カマキリ)に見立て、永和2(1376)年,四条家の御所車にカマキリを乗せて巡行したのが始まり。
参 考 文 献
  • 「ファーブル先生の昆虫教室」(奥本大三郎、ポプラ社)
  • 「別冊太陽 昆虫のとんでもない世界」(平凡社)
  • 「ふるさと虫ある記」(成田弘)
  • 「身近な昆虫のふしぎ」(海野和男、サイエンス・アイ新書)
  • 「カマキリの危険なプロポーズ」(中田兼介、京都新聞)
  • 「どくとるマンボウ昆虫記」(北杜夫、新潮文庫)
  • 「世界のカマキリ観察図鑑」(海野和男、草思社)
  • 「散歩で見つける虫の呼び名事典」(森上信夫、世界文化社)
  • 「昆虫学者の目のツケドコロ」(井出竜也、ベレ出版)