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昆虫シリーズ61 アワフキムシ、ヨコバイ、ツノゼミ・・・

  • 敵の攻撃を防ぐ泡・・・アリなどの敵が泡の中に無理に入ろうとすると、泡で気門が塞がれて死んでしまうという。 
  •  たいていのアワフキムシは、卵で越冬し、春に孵化する。幼虫の期間は、2カ月ほどだが、この間、自分でつくった泡の中で暮らす。成虫になる時は、泡の外に出て羽化する種と、泡の中で羽化する種がある。
     泡の成分は、石鹸水によく似ていて、泡が崩れ難い。泡の中はいつも濡れているので、幼虫は水中と同じような環境に包まれている。この泡は、幼虫を外敵と乾燥から守る役割をしている。 
  • シロオビアワフキムシ
     名前のとおり、前ハネ中央に斜めの白い帯が見られる。白い帯の両側は色が濃く、黒くなる。夜灯火に飛んでくる。
    ヤナギなどの植物の汁を好む。
  • 体長 11~12mm。日本全土に広く分布。
  • シロオビアワムシの泡づくり
     日本で最も良く見られるシロオビアワムシは、植物から液体を吸い、栄養を吸収した残りの水分を利用して泡をつくる。水分で体を濡らし、腹部の空気溝に空気を取り入れたり出したりして、泡をつくっていく。この作業の繰り返しで、泡の塊がつくられる。幼虫は、泡の中で1齢から5齢まで成長する。 
  • 幼虫は、泡の中でサナギになり、やがてセミやヨコバイとよく似た成虫になる。成虫になると、泡は作らず、植物の汁を吸う。よく跳ねる習性がある。捕まえようとすると、ピョンと跳ねて逃げる。 
  • 参考動画:虫の目レンズの世界 アワフキムシの泡作り/海野和男 - YouTube
  • 「泡の中の幼虫」(ファーブル昆虫記要約)
     
    泡がついている植物の茎を折り取って、泡を取り去ると、ハネのない小さなセミのような虫が出てきた。虫メガネで観察すると、細い針のような口を根元に刺し込んだまま、じっと動かない。幼虫の間は、安全な泡の中で、植物の汁を吸って安楽に暮らしている。
  • 「泡を作る実験」(ファーブル昆虫記要約) 
     ファーブルは、先を尖らせたガラス管を草の汁の中に突っ込み、吹いてみた。色々やってみたが、泡ができかけたと思うと、すぐに壊れてしまった。この液体は、水のようにサラサラなのに対して、虫が作った泡は糸を引く感じで、粘り気があることに気付いた。
     アワフキムシは、お腹の先の泡立て器で泡を作る時、何か特別のネバネバの材料になるものを泡に混ぜ込んでいるに違いない。それにしてもアワフキムシの泡は、素晴らしい発明だ。
  • 毒のある植物実験(ファーブル昆虫記要約)
     
    ファーブルは、毒のあるユーフォルビアに針を刺して、沁み出させた液の中にアワフキムシをつけてやると、嫌がり、慌てて逃げようとした。この植物の毒には弱いことが分かる。ところが、アワフキムシは、ユーフォルビアの茎に口吻を刺して、平気で汁を吸うことができる。これはどういうことか。
     植物の茎の中には、地面から水分や養分を吸い上げる管と植物の体の中で作られた養分などを体の中へ行き渡らせるための管がある。どうやらアワフキムシは、毒を含まない管=地面から吸い上げる方の管を選んで口吻を刺して汁を吸っている、まったく凄いやつだ。 
  • 植物の汁を吸うツマグロオオヨコバイ
     体色がバナナに似ていることから「バナナムシ」とも呼ばれている。街中でも公園にヤツデがあれば見ることができる普通種。葉の裏にいることが多いので、大人には見つけにくいが、背の低い幼稚園児には見つけやすい。幼虫も成虫も、植物の汁を吸う。 
  • 名前の由来・・・羽根の先端(ツマ)が黒く、仲間の中では大形で、近づくとチョコチョコ横に這って隠れるので、ツマグロオオヨコバイ。 
  • 5月頃、葉の裏に産卵。8月中旬に羽化。セミの羽化に似ている。8月末~9月になると、ようやく成虫になる。 
  • 成虫が見られる期間・・・3月末~5月、9月~12月初め。 
  • オオヨコバイ・・・淡い緑色で、ハネには明瞭なハネ脈がある。複眼の間に黒い2つ斑紋がある。頭の幅が前胸背の幅より広い。飛ぶというよりは、ジャンプしながら移動する。体長8~10mm。
  • ベッコウハゴロモ(ハゴロモ科)・・・褐色地に2本の白線と小さな目玉模様が特徴。クズなどのマメ科植物やミカンなどの柑橘類、クワなどの広葉樹から吸汁する。アミガサハゴロモと同じく、幼虫は尾部にロウ物質をつけている。
  • 体長 9~11mm。7~10月に見られる。本州以南に分布。
  • 幼虫・・・腹端にロウ物質でできた毛束をもっている。
  • スケバハゴロモ(ハゴロモ科)・・・その名のとおり、透明なハネが黒く縁どられているのが特徴。サクラ、クワ、ブドウ、ウツギなどの葉や茎の汁を好む。
  • 体長 9~10mm。7~9月に見られる。本州、四国、九州に分布。
  • アミガサハゴロモ(ハゴロモ科)・・・前翅の前縁中央部に白紋があるのが特徴。カシ類の葉や茎を好んで吸汁する。幼虫は、尾部にロウ物質でできた羽毛束のようなものをつけている。体長10~13mm。7~10月に見られる。本州以南に分布。
  • ツノゼミ・・・セミの仲間で、幼虫、成虫共に植物の汁を吸う奇妙な昆虫。胸の部分が発達し、角のような突起を持つ。ほとんどが1cm未満と小さい。 
  • 世界のツノゼミ・・・世界には、三日月のような形、アンテナのような形、意味不明な形など、奇妙なツノゼミが約3千種ほど知られている。外見がアリやハチによく似ている種もいるため、擬態していると考えられている。
  • ツノゼミとアリの共生・・・ツノゼミが出す排出物には、植物の汁を吸った糖分がたくさん含まれている。アリはこの甘い甘露を目当てにツノゼミにつきまとう。大好きな甘露を出してくれるツノゼミに対して、アリは天敵から守ったり、体を清潔に保つのに役立つといった相利共生関係にある。
  • 参考動画:ツノゼミとアリ/海野和男 - YouTube
  • 稲の害虫・ウンカの仲間・・・稲の害虫として知られる主なウンカ類は、セジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカ。いずれも良く跳び跳ね、繁殖力も強く、その周辺一帯で大発生を起こすと、水田には丸く穴が空いたように枯れた区画を生じる。これを俗に「坪枯れ」と呼ぶ。 
  • ウンカによる被害
  • 江戸時代の農書「除蝗録」
     江戸時代、西日本を中心に起こった享保の大飢饉は、ウンカの大発生が主な原因であったと言われている。江戸時代の農書「除蝗録」によれば、上右図は松明を灯して太鼓を叩き、村境まで虫を追いやる虫追いや、上左図はクジラの脂を流し、箒で稲株を払ってウンカを落下させ、溺死させる方法が主流であった。
     戦後、化学合成殺虫剤が開発されてから、ウンカの発生量が少なくなった。ウンカ類は、ベトナムや中国から日本に飛来する。さらに殺虫剤に対する抵抗性が増したことから、2005年以降、再び多発する頻度が高まってきているという。 
  • アカハネナガウンカ・・・体と前ハネの縁は淡い赤色で、体に比べて前ハネが長い。ススキなどイネ科の植物に寄生する。体長4mm。本州から九州に生息。
  • カイガラムシの仲間・・・植物に寄生して、ほとんど動かず、中には脚がほとんど退化して全く動けない種もある。白い粉やロウのような物質を出して、体の周りを覆っているものもいる。多くの種類で♀は一生動くことができないが、♂は成虫になるとハネをもち、♀を探して飛び回る。日本には約400種が知られている。(写真:イボタノキに寄生するイボタカタカイガラムシ)
  • ヒモワタカイガラムシ・・・ヤナギ、ミカン類に寄生する。5月頃産卵し、綿状の物質に包まれたリング形の卵のうをつくる。♀の体長3~7mm。
  • イセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)・・・世界的な樹木害虫で知られる外来種。オレンジ色の体から筋のある白いロウ物質が長く伸びる。この白い部分は、ロウ物質で包まれた卵のうで、多数の卵が入っている。ミカン類やナンテン、ヤツデなど多くの植物に寄生する。♀の体長4~6mm。
  • イボタカタカイガラムシ(イボタロウムシ)・・・イボタノキなどモクセイ科の樹木に寄生するカタカイガラムシの仲間で、イボタカタカイガラムシという。「イボタノキ」につく「ロウ虫」の意味で、通称「イボタロウムシ」と呼ばれている。
  • イボタロウ・・・枝にイボタロウムシが寄生して、♀の成虫が球形の貝殻をつける。5月頃、貝殻に数千個の卵を産み、6月頃孵化。♂の成虫が7月頃、葉から枝に移り、白ロウを分泌して群生する。その白ロウの中でサナギになり、9月頃、羽化して白ロウに小穴を開けて外に飛び出す。枝葉には、ロウの部分が抜け殻のように残る。この枝や幹の白い粉を削り、加熱してロウ分を溶かし、布で漉してから冷やして凝固させたものを「イボタロウ」という。イボタロウは融点が高く、夏でもべとつくことがない。薬用のほか、敷居に塗って戸の滑りを良くしたり、家具や工芸品のつや出し、潤滑剤、刀剣や刃物の錆止めに使われてきた。長野県では、藩政時代にイボタロウで和蝋燭を作った記録がある。
参 考 文 献
  • 「ファーブル先生の昆虫教室」(奥本大三郎、ポプラ社)
  • 「身近な昆虫のふしぎ」(海野和男、サイエンス・アイ新書)
  • 「昆虫たちのやばい生き方図鑑」(須田研司監修、日本文芸社)
  • 「九州沖縄農研ニュースNo51.2015 ウンカ類研究の背景と目的」
  • 「すごい自然図鑑」(PHP) 
  • 「小学館の図鑑NEO 新版昆虫」 (小学館)  
  • 「講談社の動く図鑑 MOVE昆虫」(講談社)