昆虫シリーズ62 花に集まる甲虫
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- 花が婚活の場になっている甲虫
ハナカミキリの仲間やハナムグリ、ジョウカイボン、コメツキ、ハムシ、ゾウムシ、ハンミョウの仲間なども花に集まる。これら甲虫の目的は、♀の場合は花粉の採餌のため、♂の場合は♀との出会いのためである。だから花の上で婚活・交尾しているシーンもよくみかける。またハチやハエなどと比べると、一つの花に長く滞在するものが多い。ある者は花粉を食べたり、子房に産卵したりするから、送粉者というより食害者が多いと言われている。ただし、訪花性甲虫の食害者あるいは送粉者の、どちらが卓越しているかは、一概に決められないとも言われている。
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- 「どくとるマンボウ昆虫記」・・・ハナカミキリ
大型のカミキリムシはいかめしいが、ハナカミキリという小柄な種類はすべて花に集まる・・・彼らは蜂かなんぞのように花の周囲を飛びまわり、花の香りに酔い、花粉にむせている。ひとつの花の房をそのまますっぽりと捕虫網でおおい、ガサガサとゆすってやると、無数のハナカミキリがみんなの網の底に落ちてくる。それを片端から毒管に入れる。ハナカミキリの愛好者は少ないが、彼らがとりどりの斑紋と色彩にめぐまれていて種類が多いうえに、その採集時の気分が殊さらによいのが原因かもしれない。
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- ヨツスジハナカミキリ
ハネには、よく目立つ黄色と黒色の縞模様がある。これは毒針をもつハチに擬態していると言われている。その黄色と黒の筋が4つあるハナカミキリが名前の由来。平地から亜高山帯まで広く生息する普通種。幼虫は腐朽材を食べて成長する。幼虫で越冬し、春に材内で蛹化、羽化する。
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- 成虫・・・6~8月に現れ、リョウブやノリウツギなどの花を訪れる。朽ちた広葉樹の立ち枯れや倒木にも集まる。
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- 寄主植物(ホスト)・・・各種広葉樹、針葉樹の腐朽木
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- 参考動画:交尾しながら花粉を食べるヨツスジハナカミキリのメス/海野和男 - YouTube
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- モモブトカミキリモドキ(カミキリモドキ科)
光沢がある黒色で、カミキリムシに似た甲虫。♂の後ろあしの付け根は太いが、♀は太くないので識別が難しい。林縁などで見られる普通種。春先、タンポポ類などのキク科植物の花に集まり、花粉を食べる。体液にカンタリジンという毒性の成分を含み、皮膚に付くと水泡ができることがあるので注意が必要。
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- 参考動画:モモブトカミキリモドキ【愛知県森林公園】 - YouTube
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- ムネアカクロハナカミキリ
♀の前胸背は赤いが、♂は全部黒である。丘陵地から山地に生息し、シシウドやガマズミなどの花に飛来する。スギやアカマツの衰弱木や倒木にも集まる。北海道から九州まで分布。
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- 参考動画:ムネアカクロハナカミキリ Leptura dimorpha のペア - YouTube
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- マダラカミキリモドキ(カミキリモドキ科)・・・山地に生息。体は黒褐色でハネに斑状の模様がある。上の写真は、秋田駒ケ岳のニッコウキスゲで撮影。4~8月に見られる。
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- ベニカミキリ
竹林で見られる普通種。成虫は4~6月に現れ、アカメガシワやクリの花などに集まる。晴れた日の昼頃、枯れた竹や伐採された竹の上で見られる。♀は産卵前に腹部先端の毛束を使って竹表面のゴミを集め、節に沿うように卵を産み付ける。その後、集めたゴミで卵の表面を覆いカムフラージュする。幼虫は竹の材部を食べて成長し、晩夏から冬にかけて材中で蛹化する。羽化した成虫はそのままで越冬し、翌春に脱出する。
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- 成虫は、不用意に手でつかむと強烈な刺激臭を放つ。幼虫の排せつ物は、アレルギー性皮膚炎や花粉症の症状に効果があるとされ、大学において研究が進められているという。
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- 寄主植物(ホスト)・・・マダケ、モウソウチクなど竹類の枯れた空中茎
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- 参考動画:花に集まる赤いカミキリムシ(花粉を食べるベニカミキリ) - YouTube
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- キクスイカミキリ
河原や草地、花壇、雑木林の林縁などで見られる普通種。成虫は4~6月に現れ、ヨモギやキク科植物に集まり、先端の茎を食べる。寄主植物は、ヨモギなどのキク科の生茎。体長6~9mm。北海道から九州まで分布。
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- エグリトラカミキリ
丘陵地の雑木林から山地に生息。成虫は5~8月に現れ、ガマズミやノリウツギなどの花を訪れる。ヤマハンノキやクリなどの広葉樹の立ち枯れや伐採木に集まる。♀は、特に立ち枯れや雨が当たらない軒下に積まれた薪など乾燥した材に好んで産卵する。幼虫は辺材部を食べ、蛹化する際にあらかじめ脱出用の坑道を掘る。体長9~13.5mm。北海道から九州まで分布。
寄主植物(ホスト)は、各種広葉樹の枯死木、腐朽木。
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- アカハナカミキリ
全身が赤茶色で、触覚は黒色。平地の雑木林から亜高山帯の針葉樹林まで広く生息。ノリウツギやシシウドなど各種花の花粉を食べる。♀は、針葉樹の立ち枯れや倒木、切り株など集まり、亀裂や他の昆虫が空けた脱出こうなどに産卵する。幼虫は、ふ化後2年目の初夏、材内に楕円形の蛹室を作って蛹化・羽化する。
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- 参考動画:アカハナカミキリの飛翔 - YouTube
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- ミドリカミキリ
アオカミキリ類の中では細長く、金属光沢がある緑色から赤銅色をしている。クリやウツギ類の花粉を食べるほか、広葉樹の伐採やシイタケのホダ木などにも飛来する。体長15~21mm。全国に分布。
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- コメツキムシ科
脚が短く、細長い扁平な体型をしている。前胸は上下に曲げることができ、前胸の下面にある突起が中胸下面の凹みにはまるようになっている。仰向けにされると、自分で跳ねて元に戻ることができる。成虫は、花に来る種や葉を食べる種、樹液に来る種もある。日本には約400種。幼虫は、土の中や朽木の中に住むものが多い。農作物を食害し、害虫扱いされるものは「針金虫」と呼ばれている。
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- 名前の由来・・・触ると死んだ真似をする。裏返しにしてしばらくすると、パチンと音を立てて勢いよく跳ね上がる。コメツキムシの胸部には、効率よくエネルギーを蓄え、放出することができるレジリンという弾性タンパク質がある。だからコメツキムシをつかむと、胸をパチパチと動かす。その動作がコメをつく動作に似ていることから、コメツキムシという名前がついた。
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- ヒゲコメツキ・・・♂は、櫛歯状の大きな触角が見事。背中は、灰色の毛による不規則なまだら模様がある。北海道から九州まで分布。体長21~27mm。4~8月に現れる。
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- 参考動画:ヒゲコメツキ(♂) Pectocera fortunei の飛翔 - YouTube
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- 参考動画:ヒカリコメツキ/海野和男 - YouTube
- 光るコメツキムシ・・・成虫の光は、ホタルよりもずっと強力だという。南米では、足の親指にヒカリコメツキを結びつけ、夜の密林を歩く人もいるという。シロアリの塚に棲む種では、幼虫が塚から頭を出して、光におびき寄せられたシロアリの羽アリなどを捕食するという。
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- クビナガムシ(クビナガムシ科)
クビナガムシ科の中では唯一カミキリムシに似ている。背面は淡い黄土色で、全体に灰黄色の短毛を密生している。色彩は変化に富み、上ハネ周縁部の後胸と腹部は黒色を呈し、他の部分と肢は淡い黄土色。頭部は細長く三方に狭く、頭は黒色、前胸には大きな黒紋を有している。山地に生息し、シシウドやチングルマなどの花に集まる。4~6月に見られる。体長12~14mm。本州から九州に分布。
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- アオハムシダマシ(ハムシダマシ科)
初夏から夏、山地の花に集まる。金緑色の金属光沢をもつ。成虫は花の花粉を食べるが、幼虫は朽木を食べる。体長9~12mm。本州から九州・屋久島に分布。
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- アカハムシダマシ・・・全身が赤紫色の金属光沢をもつ。初夏から夏、山地のシシウドなどの花に集まる。本州から九州に分布。体長9~11mm。
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- 高山の湿地で見られる美麗種・スゲハムシ(ハムシ科)
寒冷な湿地のスゲ類の葉や茎の上で見られることから、スゲハムシと呼ばれている。正式名称は、キヌツヤミズクサハムシ。秋田では、初夏から夏、高山の湿地に生えるイワイチョウの花などで見られる。赤、青、緑、黄、紫、銅色などと変異がある。背面は金属光沢があり、全ての脚は金属色で美しい。体長7~11mm。北海道、本州、九州に分布。
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参 考 文 献 |
- 「新カミキリムシハンドブック」(鈴木知之、文一総合出版)
- 「4億年を生き抜いた昆虫」(岡島秀治、ヴジュアル新書)
- 「どくとるマンボウ昆虫記」(北杜夫、新潮文庫)
- 「里山・雑木林の昆虫図鑑」(今井初太郎、メイツ出版)
- 「散歩で見つける虫の呼び名事典」(森上信夫、世界文化社)
- 「日本の昆虫1400」(文一総合出版)
- 「くらべてわかる甲虫」(阿部浩志ほか、山と渓谷社)
- 「原色昆虫図鑑Ⅱ甲虫他」(北隆館)
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