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 2013年4月27日(土)、森の学校第2回目「山菜講座」は、秋田県森林技術センターで開催された。山菜ブームの到来なのか、募集50名に対して、参加希望者は倍以上の110名を超えたという。

●内容/山菜の基礎知識、山菜採りのマナー、試験地の山菜、ギョウジャニンニク栽培方法など
◆主催/秋田県森林技術センター(018-882-4511) ▲対象/一般
■特典/ギョウジャニンニクの苗2株プレゼント
 室内での講習は、センター2階第2研修室で行われた。講師は、資源利用部の須田邦裕部長。今冬は大雪で、桜の開花も遅く、山菜は、7~10日ほど出るのが遅い。例年、山菜採りのスタートはゴールデンウィークの頃だが、今年はGWが過ぎたあたりだろう。 
山菜採りの遭難事故
 平成24年は、89件の遭難事故が発生し、遭難者が103人、うち14人の方が亡くなっている。
 その特徴は・・・

山菜採りやキノコ採りの事故が多い山菜採り61%、キノコ採り16%)
高齢者(65歳以上)が全体の68%を占めている。
1人で山に入っているケースが多い
山菜採りの遭難事故防止対策

山に入る時は複数で入る。
出かける前に、必ず家族に「行き先」や「帰宅時間」を伝える。
悪天候時には中止する。
万が一のために、食料(チョコや飴、パンなど)や雨具を忘れずに持つ。
▲ニリンソウ ▲ニリンソウとトリカブト(毒)の混生

ニリンソウと猛毒・トリカブト
 ニリンソウとトリカブトは、若葉が似ているだけでなく混成している場合も少なくない。右の写真は、混生している若葉のアップ・・・実に紛らわしい。自信のない方は絶対に手を出さないこと。

 食中毒事故・・・2012年4月8日、猛毒のトリカブトをニリンソウと間違えて食べ、函館市の父子2人が死亡、1人が重症となった。死亡した父子は、山菜採りにもよく行っており、しかも、出かける前に、食べられる山菜と有毒植物の見分け方を植物図鑑で確認していたという。それでも誤ってトリカブトを食べてしまった。
 
クマ被害防止対策

①.一人ではなく、必ず複数人で行動する。
②.自分の存在を知らせる・・・熊避け鈴や高周波の音が出る笛を鳴らすなど、クマに対して常に自分の存在をアピールすること。
③.人間の味を絶つ・・・残飯や生ゴミは絶対に捨てない。人間が捨てた残飯の味を覚えると、クマを引き寄せる原因となるので特に注意が必要だ。餌を与えることは論外。

万一クマと遭遇したら・・・
①.背を向け走って逃げるのは自殺行為である。眼をそらさず対峙する。静かにクマから離れる。
②.小グマを見かけても決して近づかない。近くに母グマがいる場合は、最も危険である。
③.襲ってきたら・・・熊撃退スプレーが有効と言われている。
山菜採りのマナー

① 国立公園の特別保護地域など、植物や昆虫などの持ち出しが一切禁止されている地域での採取は厳禁。
② 私有地や森林組合などが入会権を持っている場所は、当然のことながら採取禁止で、決して立ち入らないこと。こうしたエリアには「山菜採り、キノコ狩り禁止」といった表示板が多い。

③ 山菜は採り過ぎると、その場から消えてしまう種類が多い。良いものを選び、間引くように採取するのがコツ。
 ・例1: タラノメ・・・3番芽までつむと芽が出てこなくなるので、採取を慎むこと。
 ・例2: ゼンマイ・・・褐色の胞子のうのついた男ゼンマイは採らずに残す。

④ 山菜以外の山野草類をみだりに採取しない。
⑤ ゴミは全て持ち帰ること。
 ギョウジャニンニクは男鹿と思われがちだが、鹿角や岩城、八森など県内にも広く自生している。
 ギョウジャニンニクは、根元の白い部分が美味しい。だから根こそぎ採る人がいるが、それでは絶滅する。収穫の目安は、若芽が伸びてきて葉が開いた頃で、根を3cmほど残すようにハサミやナイフで切り取る。毎年同じ株を収穫すると、株が衰弱していくので1~2年おきに採る。
 山菜の栽培は、化学肥料、農薬は厳禁。牛堆肥や鶏糞、油粕など完熟した有機質肥料を施す。ギョウジャニンニクは、他の山菜に見られる連作障害の事例はないという。シドケは人気が高く単価も高いが、病気やネズミの食害など栽培が難しい。
 曇天で冷たい風が吹く中、山菜を栽培している試験地で野外講習を行った。芽が出ていた山菜は、ギョウジャニンニク、エゾニュウ(ニォウサク)、ホンナ、アイコ、コゴミ、ニリンソウ、ワサビ。
 山菜の栽培は、一部を除き杉林は×。試験地は広葉樹の林床を利用して行われていた。
ギョウジャニンニク

 ギョウジャニンニクは、深山で修行する山岳信仰の行者たちが、荒行に耐える強壮薬として好んで食べたことから名付けられた。北海道ではアイヌネギと呼ばれている。開いた若芽は毒草のコバイケイソウやスズランと似ているので注意。根際が網目状の繊維に覆われ、ニンニクのような強い臭いが判別の決め手である。
鱗茎の株分けと植え込み

 ギョウジャニンニクは数年すると鱗茎が二枚、三枚と増える。増えた鱗茎を丁寧に切り分けて株分けする。この方法は、播種に比べ収穫までの時間が短縮できる。9月以降の休眠中に鱗茎部を掘り出し、ハサミなどで切り分ける。切り分けた鱗茎はまた植え付ける。
▲ギョウジャニンニクの豚バラ炒め・・・根際の網目状の繊維を取り除き、適当な長さに切る。豚バラを炒めた後、ギョウジャニンニクを入れて炒め、万能つゆなどで味付けする。

料理・・・生食(茎の根元部分)、おひたし、醤油漬け、酢味噌和え、豚バラの油炒めなど。
エゾニュウ(ニォウサク)

 沢沿いの適度な湿り気のある半日蔭のような所に生える。株の真ん中の若い茎を切り取り、皮をむいて塩蔵する。アクが強く、すぐに食べられない。ただし味はすこぶる美味。

料理・・・煮物、油炒め、煮付け、天ぷら、汁の実など。
ホンナ(イヌドウナ)・・・秋田では、葉の付け根が大きなヒレのようになったヨブスマソウの変種・イヌドウナが良く利用されている。

 渓流周辺の湿った斜面に生える。独特の香りと味があり、シドケ、アイコと並び雪国を代表する山菜の一つ。民謡「秋田おばこ」には「おばこどこさ行く/うしろのお山さ/ホナコ折りに」と歌われるほど親しまれている。秋田では、ホンナ、ホナコ、ボンナなどと呼ぶ。

料理・・・おひたし、ごま和え、酢味噌和え、油炒め、天ぷら、汁の実、鍋物など。
ニリンソウ・・・トリカブトと似ているので手を出さない方が無難。 ヤマワサビ・・・白い花が咲き始めていた。
コゴミ

 山地の湿っぽい林床や渓流沿いなどに生える。伸び始めた葉の先が、ゼンマイのようにしっかり巻いている若芽が旬。秋田では、頭が低いからコゴミと呼ぶ。クセのない味で万人に好まれ、今では栽培物がスーパーで売られている。

料理・・・軽く茹でると、鮮やかな緑色になる。胡麻和え、酢味噌和え、マヨネーズ和えが定番。他に天ぷら、汁の実、煮物、サラダ、漬物など料理のバリエーションも広い。
アイコ

 シドケと並び人気の高い山菜。大きく伸びたアイコは、全草に鋭い刺があるのが最大の特徴で、素手で触ると悲鳴を挙げるほど痛いので注意。深山刺草(ミヤマイラクサ)と呼ぶように、山菜として深い山地の沢沿いに群生している。山菜特有のクセがなく、万人向きの山菜である。
アイコ料理・・・おひたしは、塩をひとつまみ入れた熱湯でサッと茹でてから冷水にさらす。一本一本皮をむいてから適当な長さに切り、マヨネーズやかつお節をふりかけ、醤油をつけて食べる。他に和え物、汁物、炒め物、一夜漬け、味噌漬けなど。
 参加者たちは、試験地の山菜をデジカメで撮影したり、名前や見分け方、採り方などを質問するなど、熱心な野外講習が行われた。
▲特典/ギョウジャニンニクの苗2株プレゼント

 一般参加者は、初心者から山菜愛好家のベテランまで幅広い層が参加。寒風吹きすさぶ寒さの中、基本的な山菜の知識や遭難防止、山菜採りのマナーなどについて学んだ。最後は、講師に大きな拍手が送られた。雪国秋田の山菜シーズンはこれから・・・改めて秋田の山菜文化の高さを感じた。
▲早春の山菜・・・バッケ、ギョウジャニンニク、クレソン ▲早春の山菜2・・・コシアブラ、コゴミ
▲春の山菜・・・シドケとアイコ ▲山菜オンパレード・・・ホンナ、ウド、ミズ、タラノメ、シドケ

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