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 2013年6月29日(土)、森の学校第5回目「みずほの里を潤す゛真昼岳゛から穀倉の仙北平野を眺望しよう」が開催された。一般参加者24名、森の案内人等18名、合計42名が参加。

 真昼岳登山のコースは、秋田県側に善知鳥コース、赤倉コース、峰越コース、岩手県側に兎平コースの4つがあるが、最も利用されているのが峰越コースである。峰越林道の峠から尾根歩きのコースで、展望がきき、花を楽しめるコースである。

●内容/春の花と樹木の観察登山、仙北平野眺望
◆主催/秋田県森の案内人協議会
◆協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会 
◆協力/秋田県森林学習交流館・プラザクリプトン(018-882-5009)
▲真昼岳MAP

 峰越林道登山口(900m)⇒北の股岳(996m)⇒音動岳(1006m)⇒赤倉登山口分岐点(960m)⇒真昼岳山頂(1060m)  距離2.8km

千畑村と沢内村を結ぶ峠越えの古道(善知鳥〜兎平)

 峠越えの古道は、現在登山道として利用されている善知鳥から兎平に出て、沢内村へ下るルートであった。善知鳥部落には、番所もあったという。人の背や馬の背による物資の交易路で、秋田の米、蕎麦類と南部の木材、乾魚、馬などを運んだ。 
▲峰越林道沿いにある名水「峰越延命水

 峰越林道は、美郷町から県境稜線の真昼岳登山口までは通行できるが、岩手県西和賀町へは土砂崩れで通行止めとなっているので注意(2013年6月29日現在)。九十九折りの林道を走り、峠近くになると、右手斜面に「峰越延命水」がある。

 真昼岳の湧水は不純物ゼロ・・・何日おいても腐らないと言われる。だから、わざわざ遠方から汲みに来る人もいるほどの名水である。尾根筋には水場がないので、ここで延命水を汲み登山に備える。
 峠の登山口には十数台の駐車スペースがある。その駐車場には、ラインまで引いてあった。管理の丁寧さに頭が下がる。登山口からは真昼岳、女神山が左手に遠望できる。ほんの少し登ると、高原状のお花畑に着く。

 ウラジロヨウラク、タカネアオヤギソウ、ヤマブキショウマ、ヤグルマソウ、ヨツバヒヨドリ、コバイケイソウ、タニウツギなどを撮影しながら快適に歩く。
▲高原のお花畑にはベンチが設置されている ▲タニウツギ

 「千畑村郷土誌」によれば、峠越えのルートは善知鳥ルートに加え「北真昼の峰越し」ルートもあったという。前方にそびえる北の股岳は別名「北真昼岳」とも呼ばれている。恐らく、この鞍部を往来していたのであろう。
▲ウラジロヨウラク ▲ウラジロヨウラクの群落
▲ヤマブキショウマ ▲サンカヨウの実
▲コバイケイソウが咲き乱れる斜面
▲コバイケイソウのアップ ▲足場の悪い所に下げられたロープ

 北の股岳(996m)に向かう登りは足場が悪くきつい。雨水で浸食された崖地にはロープが張られている。そこを登り切ると北の股岳のピークに達する。
▲北の股岳(996m)のピークを過ぎた尾根
▲ヤグルマソウの群落 ▲ヤグルマソウの花アップ
▲マルバシモツケ 
▲オニアザミ
▲ブナの実は久しぶりに大豊作
▲ヨツバヒヨドリ ▲ヤマモミジ
 尾根に出ると仙北平野が一望できる。ここから音動岳までは、アップダウンのある尾根歩きで、足元に咲く花を楽しめる。最も低い鞍部から音動岳までは標高差約100m。
▲シナノキ ▲ミズキ
▲オニシモツケ ▲アップダウンが続く尾根をゆく
▲オオカサモチ ▲イワテトウキ ▲クガイソウ
▲ハクサンフウロ ▲オサバグサ
▲峰越コースの一番の見所は「音動岳周辺のお花畑」・・・イブキトラノオの群生は圧巻である
▲タカネアオヤギソウとイブキトラノオのコラボ
▲イブキトラノオのお花畑から仙北平野を望む

三七三九(ミナサク)信仰の山

 真昼岳の高さは、尺貫法時代は三七三九尺と言われた。三七三九は「ミナサク」と読み、植えた稲が病害虫もなく「皆作」になるという意味である。だから農家にとっては、これほど有難い神の山はないと信じられていた。

 一俵でも多くとりたい農民たちは、作神様であった真昼岳の山頂をめざして、郡内だけでなく、平鹿や雄勝の方からも講を組んで参拝に訪れたという。
▲音動岳(1006m)

 音動岳を越えると、道は下りとなり、少し登り返すと右手から赤倉コースと合流する。ここから下って、最も低い鞍部から真昼岳山頂まで標高差130m程度。
▲オシマオトギリ ▲ゴゼンタチバナ
▲赤倉分岐点手前の鞍部 ▲赤倉口分岐点(960m)
▲赤倉口分岐点から20分程度で山頂へ

 赤倉分岐点から山頂まで後わずかだが、標高差はまだ100m・・・急いで登ろうとすれば息切れする。休み休み登る。
▲真昼岳山頂(1060m)
 尾根筋ルートとは言え、アップダウンが激しく辛い登りを幾度となく強いられる。それだけに山頂に達すると嬉しさがこみあげてくる。神の山から「米どころ仙北平野」を眺める気分は、まさにふるさとの神に生まれ変わったような気分がする。

北ノ股岳〜真昼岳で見られる植物MEMO

 真昼岳一帯は、冬に強い季節風をうけ、常に上昇気流に洗われて、山頂部の植生は低地の亜高山性植物を交えた草原もあり、1,000mそこそこの山としては珍しい高山植物が見られる。

白系・・・オサバグサ、イブキトラノオ、カラマツソウ、コバイケイソウ、チゴユリ、ツマトリソウ、オオカサモチ、オオバノヨツバムグラ、ユキザサ、マイヅルソウ、オニシモツケ、サンカヨウ、ゴゼンタチバナ

赤〜ピンク系・・・ウラジロヨウラク、タニウツギ、イワカガミ、オニアザミ、ヨツバヒヨドリ、ハクサンフウロ
黄系・・・オオバキスミレ、エチゴキジムシロ
青〜紫系・・・シラネアオイ

緑系・・・ツクバネソウ、タカネアオヤギ
樹木・・・ミズキ、ウラジロヨウラク、コハゼ、マルバシモツケ、低木のブナの実 
▲避難小屋兼真昼山三輪神社
▲「真昼山」と記された石神 ▲真昼山三輪神社
▲赤倉コース入口の「真昼山中ノ鳥居」

 真昼岳の山頂には、避難小屋の中に真昼山三輪神社がある。避難小屋を兼ねた神社だが、水場がないので注意。また赤倉コースの入口には、「真昼山中ノ鳥居」があり、杉の巨木の間には祠もある。昔から信仰の山であることが分かる。
 地元では、「真昼岳」ではなく「真昼山(まひるさん)」と呼ばれている。その真昼山には、弘法大使(空海)や慈覚大使(円仁)の伝説があり、昔から山岳信仰の山であった。真昼山の拝殿は、一丈木公園の台地にある。それは、山そのものがご神体であることを意味している。祭主は元本堂部落である。元本堂という地名は、天台宗の根本中堂の略称だという。

 信仰の山・鳥海山や太平山、森吉山などと同じく、かつては女人禁制の霊山であった。旧暦6月14日の宵祭の日、講中の人々は十数人から数十人が揃いの白装束に金剛杖を手に山頂に登り、一夜を明かした。

 翌15日の例祭の朝には、ご来光を排して帰るのがお山参りの定法であった。三輪神社からもらった御幣束は、田んぼの水口に立てて豊作を祈願した。
参 考 文 献
「千畑村郷土誌」(昭和61年、千畑村)
「秋田の山歩き」(藤原優太郎、無明舎)