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 2013年9月14日(土)、森の学校第9回目「豊かな植生を誇る゛秋田駒ヶ岳゛の探訪」が開催された。一般参加者25名、森の案内人等20名、合計45名が参加した。午前中から雨は降らなかったものの、終始ガスに包まれ、展望を阻まれた。さらに阿弥陀池周辺では、ガスに加えて強風に見舞われた。

 こうした悪天候にもかかわらず、森の案内人協議会のメンバーがリーダーシップを発揮し、駒ヶ岳の概要や亜高山帯から高山帯への観察ポイント、残り少なくなった高山植物について学ぶとともに、一人の落伍者を出すこともなく、全員元気に下山することができた。

●内容/駒ヶ岳の植生相と標高の関係と変化を学ぶ ▲対象/一般
◆主催/秋田県森の案内人協議会
◆協賛/(公社)秋田県緑化推進委員会 協力/秋田県森林学習館・プラザクリプトン(018-882-5009)
コース

 秋田駒ケ岳八合目(1,310m)片倉岳展望台(1,456m)阿弥陀池(1,530m)浄土平片倉岳展望台(1,456m)秋田駒ケ岳八合目(1,310m)

 当初は横岳から焼森を通ってシャクナゲコースを下る予定であったが、横岳周辺は強風のためコースを変更し、浄土平のお花畑を一周して元のコースを下って下山した。
▲バスの中では、クイズ形式で秋田駒ヶ岳の概要を分かりやすく解説

 秋田駒ヶ岳という名前の山頂はなく、男女(おなめ)岳、男岳(おだけ)、女岳(めだけ)という山全体をまとめて秋田駒ヶ岳と呼んでいる。最標高は1,637mの男女岳、駒形神を祀る信仰の山・男岳、今なお火山活動を続ける女岳と、それぞれ特徴のある山々からなっている。
▲秋田駒ヶ岳火山防災MAP
ストロンボリ式噴火

 女岳は、昭和45年9月18日、突然噴火した。幸い大爆発は起こさなかったが、間欠的な爆発を繰り返した。その噴火は、二千年も噴火を繰り返しているイタリアのストロンボリ火山と似ていると評判になったことから「ストロンボリ式噴火」と呼ばれた。昭和46年6月10日に噴火は終息した。

 森の案内人協議会副会長の三浦緑さんは、昭和45年、その噴火を見に行った時の様子を語ってくれた。約2分間隔で噴火を繰り返し、まるで花火のように美しかったという。
▲「アルパこまくさ」駐車場とバス乗換用のバス停

 秋田駒ヶ岳登山口(かもしか駐車場分岐点)から八合目の区間は、マイカー規制が午前5時半~午後5時半まで行われている。私たちが乗ったマイクロバス二台は、許可を得て代替バスの後について八合目駐車場へ向かった。
登山前のマナー・・・靴底を洗う

 秋田駒ヶ岳では、近年、外来植物が侵入・拡大している。その原因は、知らないうちに登山靴についた泥と一緒に外来植物の種が持ち込まれたからだという。全員、靴底を湧水で洗い流した。
 登山は、平地のウォーキングとは違い、筋肉や関節に大きな負担がかかる。急な坂道や滑りやすい岩場、疲れている状態での下山は、ケガの危険性が高くなる。ケガ防止のために、入念な準備体操を行ってから登山を開始した。
▲班は4班編成で、リーダーとサブリーダーが先頭及び最後尾についてサポート

 下山者や先を急ぐ登山者には、全員声を掛け合い道を譲りあった。先行者の話によると、山頂はガスと強風が吹き荒れていたという。
▲ウメバチソウ
▲オクトリカブト
▲アキノキリンソウ ▲サラシナショウマ ▲ハンゴンソウ
▲エゾニュウ ▲エゾオヤマリンドウ ▲シロバナトウウチソウ
▲ウゴアザミ ▲花を愛でながら歩く
亜高山帯から高山帯への観察ポイント

 八合目駐車場付近は亜高山帯で、ダケカンバやミヤマハンノキなどの低木林となっている。八幡平などでは、ブナ林の上部にアオモリトドマツ、コメツガなどの針葉樹が発達するが、秋田駒ヶ岳には針葉樹林帯がみられない。

 阿弥陀池に向かうにつれて、ダケカンバは姿を消し、ハイマツ、ハクサンシャクナゲ、キャラボクなどが出現し、阿弥陀池周辺や浄土平周辺まで来ると、高山帯の素晴らしいお花畑に一変する。
▲片倉岳展望台・・・ガスって何も見えず、残念!
▲赤い実をつけたナナカマド ▲色付き始めたミヤマダイコンソウの葉
▲早くも紅葉のドラマが始まったようだ。
▲エゾオヤマリンドウの群落を過ぎると阿弥陀池に至る木道に達した。
▲阿弥陀池小屋

 一寸先は闇・・・というほどガスが濃く、さらに山から吹き降ろす風が凄まじかった。先ほどまで汗をかいていたが、立ち止まると震えるほど寒くなった。山頂の風とは恐ろしいもので、気が付かないうちに体温を急激に下げ、ついには低体温症を引き起こす。ゆえに全員、持参した雨具を着る。
▲ガスと強風が吹き荒れる中、楽しい?昼食タイム
 各班のリーダー、サブリーダーが集まり、今後のコースを協議。横岳周辺は、下から吹き上げる風が強く危険なため、浄土平を一周してから、来たコースをそのまま引き返すことに決定した。
▲トウゲブキ ▲シロバナトウウチソウ ▲ハクサンシャジン
▲ウサギギク ▲エゾツツジ

 浄土平周辺は、雪解けが遅かったらしく、夏の花々が咲いていた。 
▲濃霧の浄土平をゆく ▲ミヤマリンドウのつぼみ
▲全員無事に下山し記念撮影。

 山は、いつも暖かく迎えてくれるわけではない。山は、多くの恵みを与えるだけでなく、時には女岳の噴火など、人智を超えた災いももたらす。だからこそ、山を畏れ敬う「畏敬」の念と、素晴らしいお花畑を演出してくれる恵みに「感謝」する心を忘れないようにしたい。
参 考 文 献
「自然観察ガイドシリーズ 秋田駒ヶ岳自然観察マップ」(秋田駒ヶ岳・乳頭山自然環境保全協議会)
写真集「秋田駒ケ岳 花紀行」(山田隆雄、無明舎出版)