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 2014年1月18日(土)、森の学校第13回目「冬の森かんじき体験&動物足跡ウォッチング」が秋田県森林学習交流館・プラザクリプトンを会場に開催された。一般参加者は親子ら32名が参加。

 今年は、県内陸南部を中心に記録的な豪雪に見舞われているが、当日朝も見通しが効かないほど雪が降り続いていた。それだけに、動物の足跡がかき消さたのではないかと心配されたが、幸いウサギやテン、タヌキなどの足跡を観察することができた。さらに、雪の上をウサギが走り去る姿を目撃した幸運な参加者もいた。

●内容/冬の森かんじき体験と動物の足跡を探す、木工クラフト体験 ▲対象/一般、親子
◆主催/秋田県森林学習館・プラザクリプトン(018-882-5009)
◆協賛/(一社)秋田県森と水の協会 協力/秋田県森の案内人協議会
  動物が歩いた足跡、羽跡、爪跡、食痕、糞などの痕跡から、どういう動物が、どのような行動をしたか、どのような生活をしているかなど、その動物の生態を読みとることをアニマル・トラッキングと言う。今日の講師は、動物の専門家・千葉克己先生(秋田市自然科学学習館・自然観察指導員)と大森山動物園の山成さん。
 「冬の森かんじき体験&動物足跡ウォッチング」の前に室内で、カラスやキジ、スズメ、トウホクノウサギ、キツネ、イヌ、ホンドテン、ニホンリス、ホンドタヌキ、アカネズミなどの足跡の特徴を予習した。

 秋田で問題になっているのは、ニホンジカとイノシシの侵入。イノシシは湯沢市秋ノ宮で1頭捕獲され、湯沢市高松地区でも目撃されている。また、ニホンジカは、白神山地でも侵入が確認され、ブナの食害が懸念されている。秋田県自然保護課では、鳥獣保護管理に活かすため県民の目撃情報の収集を行っているのでご協力を・・・「イノシシ・ニホンジカの目撃情報について
 左下から右へ歩いた足跡はキツネ、右下から左上へ矢印型の逆方向に歩いている足跡はキジ。どちらが先に歩いたかを推理すれば・・・キツネは匂いを嗅いで食べ物を探す習性があるので、キジが歩いた後に歩けば、交差する周辺で必ず足跡が乱れる。ところが、その痕跡はないので、キツネが先に歩いた後、キジが歩いたことが分かる。
 予習の後、プラザクリプトンから歩いて樹木見本園の森に向かう。幸運にも朝の大雪は止み、時折青空が顔を覗かせる「かんじき体験」日和になった。
▲和かんじき・・・雪国で昔から雪の上を歩くために使われてきたのが「和かんじき」
 樹木見本園の入口で、インストラクターや森の案内人らから和かんじきの履き方の指導を受けながらヒモで足をしっかり固定する。
 和かんじきを履いていても今年のような大雪になると、ラッセル(雪のかき分け)に大変難儀する。特に新雪をかき分けながら進む先頭ほど重労働を強いられる。
▲最初に見つけたのは、トウホクノウサギの足跡 
トウホクノウサギの足跡

 今回、森の中で最も多く見られた足跡がトウホクノウサギ・・・その足跡は、前足が小さく、後ろ足が極めて大きいのが特徴。ジャンプして前進するため、小さな足跡二つが縦に並び、大きな後ろ足二つは横に並んでいる。
▲ホンドテン(田沢湖)
▲ホンドテンの足跡 ▲左がテン、右がノウサギ

ホンドテンの足跡

 ホンドテンは両足をきっちりそろえて跳躍するので、左右に斜めに並んだ2対の足跡が点々と並ぶように続いているのが特徴。普通はシャクトリムシに似た走行をする。特に開けたところでよく見られる。スピードをあげたときは、ノウサギの足跡に似たものになる。
ホンドタヌキ

 キツネは足跡が一列に並ぶが、タヌキは二列に並ぶ。今日のように深い雪では、足や身体を引きずった帯状の線を描く。千葉先生によれば、斜面を上ったとすれば線は乱れるはずだが、乱れていない。だから複数のタヌキが向こうの方からこちらに向かって斜面を下り、途中で二手に分かれて歩いて行ったと推測できるという。
▲雪は深かったが、アニマルトラッキングの間だけ好天に恵まれ、実にラッキーであった  
 時折、雲間から光が射し込むと、雪の上に森の影が映り、トウホクノウサギの足跡もその陰影でくっきりと見えた。大雪をラッセルしながら先頭を歩いていた集団から突如、「ウサギがいたぁ~」との歓声があがった。幸運にもトウホクノウサギを見た子どもたちは、「初めてウサギを見たよ」と興奮気味に語っていた。
▲動物の足跡をズームレンズで撮る

 雪の上の足跡は、近くから観察するより遠くから眺めた方がはっきりと分かる。写真も同じで、遠くからズームアップで、かつ斜光線を利用して足跡が立体的に見える角度から撮れば、くっきり撮れる。
▲ツキノワグマの足跡(八幡平・葛根田川) ▲ヒグマの足跡(北海道シュンベツ川)

アニマルトラッキングは一年中できる

 アニマルトラッキングは、雪の上だけではない。動物の足跡は、冬以外に湿地や水田、湿った登山道、沢沿いの砂地などで見ることができる。また、木の幹の爪痕、食痕、糞などは一年中観察できる。参考までにツキノワグマの観察事例を紹介する。
▲冬眠から目覚めたツキノワグマの足跡(4月上旬、白神山地)




▲ブナの木につくられたクマ棚
 樹上で枝先の実を手前に引き寄せ折って食べる。その枝を自分の尻に敷くので、枝が折り重なり鳥の巣状になる。そのクマ棚で眠ることもある。
▲ブナの木を上り下りしたクマの爪痕
▲越冬穴の存在を誇示するクマのサイン ▲クマが剥いだ樹皮と鋭い爪痕(八幡平・ブシ谷地)
▲クマがタケノコの皮をむいて食べた食痕(6月) ▲クマがエゾニュウを食べた食痕(7月)
▲100%タケノコを食べたクマの糞 ▲カモシカの毛が大量に入ったクマの糞
 
質問 「ウサギは何を食べているのですか」

 葉や木の芽、樹皮などを食べている。冬は、葉がないので木の冬芽や小枝を鋭く噛み千切って食べている。余談だがマタギは、サンショウやクロモジの香り高い木の芽をエサにしている寒中のウサギが一番美味しいという。

 「生物は各個体が単独で存在しているのではなく、個体を取り巻く個体間関係、種間関係、外部環境との相互関係といった複雑な相互関係の中で生存している。その中には助け合いもあれば寄生もあり、゛歯と爪で血塗られた゛関係さえ日常的といえる。こうした゛生物のありのままの姿゛を知ることは、とかく物事を一面的に解釈しがちな我々の習慣に反省を与えてくれるかもしれない。」(「森の動物出会いガイド」子安和弘、ネイチャーネットワーク)
▲かんじき体験の後、木工クラフト体験(オリジナル鉢カバーづくり)も行われた。
参 考 文 献
「アニマルトラック&バードトラックハンドブック」(今泉忠明、自由国民社)
「森の動物出会いガイド」(子安和弘、ネイチャーネットワーク)