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秋田白炭窯吉田式、黒炭と白炭の特徴、炭の特性、窯出し体験、炭の効能、炭だんご、炭電池、花炭かご
 2014年2月15日(土)、森の学校第14回森と健康を考える「炭焼き体験」が由利本荘市赤田地内で開催された。参加者は、一般参加者・スタッフ合わせて40名が参加。

 荒廃していた里山の再生を行っている森を歩き、伐採した竹を炭にする黒炭窯などを見て回るカンジキ体験や、白炭窯の窯出し体験、炭の様々な効能、酸性土壌の改良などに使われている炭だんご、炭電池でプロペラをまわす実験などについて学んだ。

●内容/炭の窯出し体験と炭の効能 ▲対象/一般、親子
◆主催/秋田県森林学習館・プラザクリプトン(018-882-5009)
◆協賛/(一社)秋田県森と水の協会 
◆協力/ロッカ森保全ボランティア、秋田県森の案内人協議会、本荘海岸林を守る会
 幸い好天に恵まれ、最高のカンジキ体験日和となった。応援スタッフからカンジキの履き方の指導を受けながら長靴に固定する。手には、伐採した竹の杖を持って出発。
▲伐採した竹は黒炭窯で竹炭にしてリサイクル
▲良く手入れされた竹林

 由利地域特有のモウソウチクは、里山管理の衰退、放置によってモウソウチク自体が密になって荒れるだけでなく、周囲の放置された里山林をのみこみながら勢力を拡大。放置されたスギ林にモウソウチクが侵入すると、風が吹く度にしなってスギに当たり成長を妨げるという。

 ロッカ森保全ボランティアが主体となって組織した「赤田竹伐隊」では、そうしたモウソウチクの伐採などを行い、荒れた里山を様々な樹木が生い茂る豊かな森に再生することを目的に活動が続けられている。
 冬は、深い雪に覆われ、自然観察をする者にとっては、一見つまらない季節のように思うが・・・葉や花だけでなく、冬芽の観察だけで樹木を見分けることができるという。

 右の写真は、特徴のある冬芽の観察方法を指導しているところ・・・葉っぱの柄がついていた痕(水や養分を送っていたパイプの葉痕)が冬芽とセットで良く見ると、色々な動物やサンタクロースの顔に見える。冬芽の観察は、想像力を働かせて見るとオモシロイ。
▲黒炭窯 ▲黒炭窯でつくった竹炭

 原木のモウソウ竹は、土中の鉄分、カルシウム、ナトリウム、ミネラルなどをたくさん吸い上げ、さらに水に溶けやすいことから、入浴用に適している。発熱量は、木炭の4000キロカロリーを遥かに上回る7000キロカロリーで、燃料としても優れている
秋田白炭窯吉田式

 炭焼き体験が行われる小屋には、高温度で焼き、火もちのよい白炭を作る秋田白炭窯吉田式がある。この炭窯の伝承者は、「炭博士」と呼ばれた故鈴木勝男さん。彼は、1955年、初めて焼いた木炭が秋田県の品評会で1位を獲得。さらに、全国品評会で2位。1位は和歌山の備長炭であった。

 有名な「備長炭」は、和歌山産のウバメガシを原木にしたものだが、「秋田備長」と呼ばれる炭の原木は、ナラやカシである。農林規格による備長炭の定義は「硬さ」・・・硬度15度以上とされている。その規格をクリヤーした「秋田備長」も立派な備長炭といえる。
 
 プロパンガスが広く普及したのは昭和30年代の後半。それまでは、煮炊きの燃料は主に薪と木炭であった。薪はカマドで、木炭は七輪や火鉢、囲炉裏やコタツでも使った。木炭は、炭窯に原木をびっしり詰めて火を入れると、黒炭の場合は5~6日で焼き上がる。焼け具合は、排煙口から出る煙の色を見て判断する。

 木炭には、黒炭と白炭がある。
焼き上がる頃、口を開けて再び火を入れて高熱で焼き、窯から出して素灰を掛け火を消すのが白炭、窯を密閉したまま火が消えて冷えるのを待つのが黒炭である
黒炭と白炭の違い、特徴

 黒炭は、軟らかく、着火しやすいが、火力が弱く、長持ちしない。その分値段が安く、一般にキャンプのバーベキューなどに使われている。

 白炭は、硬く、着火しずらいが、安定した温度を長時間保ち、新しい炭を途中補填しても、温度が下がらず焼きムラもできないため、蒲焼きや焼き鳥に適している。また、ガスがほとんど出ないので、室内のホリゴタツや火鉢に最適である。
炭とは、炭と日本人

 炭焼きは、無酸素状態に近いから木材そのものは燃えない。木材の成分が熱によって分解され、ガスや煙となって取り除かれ、炭素成分だけが固体となって残る。これが炭である。体積は約1/3に減るが、木材そのものの組織構造は変わらない。

 日本人と炭との関わりは、世界一と言われている。炭火は煙や炎が少なく、日本の木造家屋に適していたからであり、また、魚をよく食べる日本人の食生活にも合っていたからだと言われている。
炭の特性

 炭には、小さな孔がたくさん空いていて、たった1g当たりで約250m2(畳150畳分)という大きな表面積を持っている。だから悪臭などの分子が炭を通過する時、吸着すると同時に、微生物が着生しやすい。これが、木炭が吸着性、保水性、透水性、通気性など、目的に応じてさまざまな優れた特性を有する所以である。
 焼け具合は、排煙口から出る煙が青くなり、においがなくなる頃になると、ようやく焼け上がりに近づいたサイン。煙が出なくなると、入口を開けて空気を入れて、一気に温度を上げていく。この作業をネラシという。

参考「木酢液

 製炭の際に出る煙から抽出した淡黄色や赤褐色の透明な液体。入浴剤やスキンケア、水虫治療、土壌改良剤、犬小屋の消臭・殺菌、食品の鮮度保持、防菌・防カビ、染料などに利用されている。
窯出し体験

 窯から取り出す時は大きく窯口を開けて、1200度前後の高温で燃焼中の木炭を取り出す。だから窯出しの作業は極めて熱く、大変な作業・・・ナイロン製の衣類や樹脂製のメガネなどは解けてしまうという。窯出しの道具は、先がL字型のカギのついた長い鉄の棒(エンブリ)で炭をかき出していく。窯の奥行きは、高温の窯出し作業をする分、黒炭窯より短いという。
 水分を含んだ土と灰の混ざった消し粉をかけて消火させる。消し粉をかけた時に白い粉が付くため白炭と言われる。消し粉の上に銀紙で包んだサツマイモを置き、焼き芋をつくった。
 白炭の特徴は、白みを帯びた灰色の炭で、鳴らすと「カンカン」「キンキン」という金属を叩いた時のような軽やかな音がするという。この音が品質の良さを表している。

炭の効能

・水道水の嫌な臭いをとり、美味しい水にしてくれる
・直接炭を入れてご飯を炊けば美味しくなる
・下駄箱、冷蔵庫、トイレ、車などに置けば脱臭効果がある

・流し台、タンス、押入れ、床下などに置けば調湿効果がある
・花壇、植木鉢、田畑などに粉炭をまけば土壌改良材
水の浄化(八郎湖の水質浄化に活用)

野菜の日持ちが良くなる・・・野菜は、冷蔵庫に入れても「エチレンガス」を発生し、傷みを早めてしまう。炭を野菜室に入れると、このガスを吸着してくれるので野菜の日持ちが良くなる。炭を微粉末化した専用の炭シートは、吸着能力が炭の1.5倍近く高い。

良く眠れる木炭枕・・・鈴木勝男さんが開発したヒット商品。その他入浴剤、電磁波遮断などに利用。
炭の講習その1

 ロッカ森保全ボランティアの大場さんから、黒炭と白炭の特徴や窯の違いなどについて分かりやすく解説してもらった。
炭の講習その2

 ロッカ森保全ボランティアの代表・高野さんから、酸性土壌の改良などに利用されている「炭だんご」のつくり方について解説してもらった。ちなみに右上の写真が「炭だんご」で、美味しそうに見えるが食べられません。
▲豚汁を食べながら、美味しく、楽しく意見交換 
炭電池でプロペラをまわす実験

 炭を使った電池だから「炭電池」と呼ばれている。発電に炭を使うと言っても黒炭は×。白炭を使う。材料は、白炭、アルミ箔、キッチンペーパー、塩、水。
 塩水にキッチンペーパーを浸し、絞って白炭の一端を残してくるむように巻き付ける。キッチンペーパーの上からアルミ箔を巻き付ける。その際、アルミ箔をギュッと握ってキッチンペーパーに密着させるのがポイント。これで炭電池が完成。
 炭電池は、炭がプラス、アルミ箔がマイナスになる。これをモーターの付いたプロペラにつなぐと、プロペラが回った。 なぜ炭電池は発電するのだろうか・・

 塩水はアルミを溶かす電解液・・・アルミは塩水に溶けることで電気を出す。炭は、スポンジのように穴だらけで酸素も豊富。その炭の中にある酸素に電気は吸収される。つまり、電気を出すものと受け取るものを導線でつなげると電気の流れをつくることができる。
▲参加者にプレゼントされた「花炭かご」(赤田蓮池窯)
 森の学校2013は、炭焼き体験を最後に閉校します。この一年間、編集者自身が大変勉強になりました。次年度の「森の学校2014」は、新しい企画を盛り込んで4月に開校します。これからも、「森に遊び、森に学ぶ」「森も山村も元気」になるような情報発信に努めますので、乞うご期待ください。 
参 考 文 献
「炭の不思議」(炭活用研究会、日刊工業新聞社)
「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「写真ものがたり 昭和の暮らし2 山村」(須藤功、農文協)
HP 森業・山業優良ビジネス先進事例ナビ・・・秋田市鈴木勝男さん