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鳥海山を再びブナの森へ

20周年を迎えた鳥海山にブナを植える会 ・決意を新たに
 
 鳥海山にブナを植える会(須田和夫会長)では、10月25日に設立20周年記念植樹会を開催した。植樹会場であるにかほ市の鳥海山3合目付近にある霊峰公園には県内外から142名が参加し、ブナの森を造るため550本の苗木を植栽した。
 鳥海山にブナを植える会は、戦後の復興資材などで伐採されて失われたブナ林を再生しようと地元の有志が平成6年に立ち上げた会で、現在は一般会員・賛助会員・団体会員をあわせて644人・25団体を擁している。毎年恒例の10月の植樹活動や関係団体の植樹活動への指導を行っているほか、植栽地の管理や苗木生産活動を実施している。
 今年は設立20周年を迎え、記念植樹会と記念式を開催した。
 
 
   
  各班に別れての植樹活動。鍬やスコップで穴を掘り、ていねいに植えた後、記念写真。
 
   
  この班の方はさいたま市大宮からの参加者だ。木を植える活動が好きで、今年はこれで3回目ということ。県外へも積極的に出かけ木を植えている。「この会が20年も続いているのは、すばらしいこと。会員の頑張りに拍手を送りたい。」
 
   
  奈良県生駒市の佐藤さん、昨年も車で駆け付けてくれた。今年は、生駒市の仲間と参加です。テレビの取材を受けていました。
 
   
  家族で植樹、自分の植えたブナと一緒に長い時を刻むことだろう。
 
   
  すっかり冬支度となった鳥海山、奈曽渓谷ではまだ紅葉が望まれる。鳥海山は、これから厳しい冬を迎える。
 
  設立20周年記念式典  
  11月8日は、にかほ市象潟公民館で開催された記念式典には、会員など総勢90名が集まった。記念式典のオープニングでは、鳥海山にブナを植える会の20年の活動を振り返るスライドの上映や、「朗読ボランティア いずみ」が、「森が海をつくる」という絵本の読み聞かせを行った。

 
  開会式では須田和夫会長が、「象潟は鳥海山からの恵みを享受してきた。しかし、戦後の木材需要の増大に伴い鳥海山麓のブナは伐採され、その跡地に針葉樹が造林されたが、生育に困難を極めている。かつての豊かなブナの森を復元させたいとの強い思いからこの会を設立した。・・・今では、仁賀保高等学校の生徒や象潟の小・中学校の生徒も鳥海山にブナを植える活動を続けている。・・・継続は力。設立時の夢を実現するため、こつこつと続けていきたい」と、力強くあいさつした。
 
   
  来賓の横山忠長にかほ市長は、、「ブナ林の恵みを後世に伝える取り組みに敬意を表する。ブナ林復活の行動は、人々の心をかき立て、全国にも会員の輪が広がっている。これはまた、郷土を思いやる心を育み、地域の活性化につながっている。・・・木を植え、森をつくるには大きな努力が必要。一歩一歩夢に向かって着実に進んでいただきたい」と祝辞を述べた。
 また、秋田県地球温暖化防止活動推進センターの桃崎富雄理事長は、「私も何度か植樹会に参加したが、鳥海山に木を植えようと集まってきた皆さんが楽しそうに植樹を行い、交流を深め合っているのを見ると、また参加したいという気持ちになる。・・・この20年という年月は長いようであるが、森づくりから見るとほんの緒についたばかり。今後ともこの活動が継続することを期待している」と祝辞を述べた。
 
  シンポジウム「豊かな暮らしと鳥海山」 
 基調講演
   
  式典修了後、「豊かな暮らしと鳥海山」をテーマに記念シンポジウムを開催、秋田県立大学蒔田明史教授を講師に、「森の時間、ヒトの時間」と題して基調講演が行われた。
 講演では、蒔田教授の専門である「ササの生態学」研究をもとに、「ブナが300年の寿命といわれているが、ブナ林の地表を覆うササが一斉開花し枯死するのは100~200年。この時期をチャンスに世代交代するが、そのチャンスはブナの一生のうち1~3回。こういうスケールが森の時間」。また、研究室の学生の調査をもとに県内各地の森林ボランティアが植栽したブナ林の生育状況の結果を示し、「生存率は高い。ただ、鳥海山のブナは他地域と比較して生育は劣る。これは土壌や風の影響ではないか」と解説。また、「自然というものを地球規模で考え、守るために地球規模で行動しなければならないが、その前に身近な自然を感じ、地域の自然に目を向けてその力を充分理解することが大事」と述べ、「会の地道な活動を未来へつなげて欲しい」と語った。
   
   
  基調講演終了後、蒔田教授をコーディネーターに、5人のシンポジストが登壇、短い時間でそれぞれの視点から鳥海山の自然について語った。(写真向かって左から、自然写真家・自然ガイドで酒田市の斎藤正弘さん、秋田県漁業協同組合象潟支所代表の斉藤敬一郎さん、本荘由利森林組合副組合長の小番勲さん、県由利地域振興局森づくり推進課の藤井吉人さん、鳥海山にブナを植える会副会長の佐藤文夫さん。)
 斉藤敬一郎さんは、「植樹して水がきれいだと美味しい岩牡蠣だ捕れると思っている」と漁業者の立場から意見を述べ、藤井吉人さんは、「鳥海山麓でもニホンジカの目撃情報が寄せられている。食害が拡がることが懸念される」と情報を伝えた。佐藤文夫さんは、「鳥海山は大きな水瓶となってもらいたい。この活動を続けることができたのは、秋田県水と緑の森づくり税を活用させていただいている。感謝している」と述べた。
 また、会場では斎藤正弘さんの写真展も開催された。
 最後に、須田会長は「この回は20年を迎えてやっと成人。夢の実現に向けてさらなる発展につなげたい」と結んだ。  
  あきた森づくり活動サポートセンター発行の『あきた 森のシンフォニーVol,1』では、鳥海山にブナを植える会の特集記事を掲載しております。購読ご希望の方は、ファックス018-882-5571までお申し込み下さい。(住所・氏名・TEL番号必須)