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名の由来、繁殖力が低い、毒草・バイケイソウ、採取時期、見分け方、採り方、料理、冷凍保存、薬効
  ユリ科ネギ属の多年草で、全草に強いニンニク臭があり、若い茎葉と鱗茎は古くから山菜として珍重されている。バッケやカタクリと同様、山菜初期の貴重な食用植物である。しかし、自生場所の選り好みが激しく、素人が探してもなかなか見つけることができない。

 ところが、奥山の山菜と思ったら大間違いで、潮風を浴びるような海岸沿いの雑木林や松林内に隠れるように群生している。自生環境が良ければ群落をつくるが、近年、採取圧が強く資源が少なくなっている。「残して採る」ことを心掛けたい山菜の筆頭である。
名前の由来

 修行僧がギョウジャニンニクを食べると、滋養がつき過ぎて修業にならないため、食べることを禁じられていたという。しかし、山岳信仰の荒行に耐えるには、こっそり隠れて食べていたので行者蒜(ぎょうじゃびる)と呼ばれていた。蒜(ひる)は僧侶の隠語で「忍辱(にんにく)」といったので、行者忍辱(ぎょうじゃにんにく)となった。

 北海道では、アイヌの人たちが料理に用いたため、アイヌネギ、エゾネギなどと呼ばれている。
▲いでは文化記念館(山形県鶴岡市)

 群馬県の尾瀬沼では「尾瀬蒜(おせびる)」、栃木県日光二荒山では「二荒蒜(ふたらびる)」、京都比叡山では、山岳信仰の山伏修験僧に由来する「叡山大蒜(えいざんおおびる)」と呼ばれていた・・・これは、キョウジャニンニクが山の野菜・薬草として古くから利用されていたことを物語る。
繁殖力が低い

 自然では繁殖力が非常に低く、春先に強い日差しが射し込む湿地で、6月以降は木陰となるような場所を好む。ギョウジャニンニクは、地際の茎の表面が赤くなるのが大きな特徴。発芽してから5年ほどは、葉が一枚しか発生しない。葉が二枚になるまでは、6~7年もかかる。

 従って、持続可能な利用をするためには、葉が一枚しかないものは「残して採る」ように心掛けたい。
▲採取圧に弱いギョウジャニンニクの例

 群生の規模はほとんど変わらないが、茎は細く、一枚葉がほとんどを占めるようになっている。残念だが、こういう群落は、しばらく採るのを控えるしかない。赤い花はカタクリである。
毒草・バイケイソウ類に注意

 バイケイソウの新芽は、オオバギボウシ(地方名ウルイ)やギョウジャニンニク(地方名アイヌネギ)と似ており、極めて中毒事故が多い。開いた若芽は、コバイケイソウ、スズランとも似ているので注意。上の写真は、紛らわしいバイケイソウの若芽・・・ギョウジャニンニクと同じ環境で同時期にはえるので紛らわしい。
▲カタクリと毒草・バイケイソウの大群落

採取の時期

 雑木林の葉が開く前は、林床に春の陽射しが一杯に降り注ぐ。そうした林床に、カタクリやキクザキイチゲなどの春告げ花が一斉に咲きはじめると、ギョウジャニンニク採りのシーズンとなる。しかし、毒草・バイケイソウを間違えて採取し、後にベテランから指摘されたのか、林道脇に束になって捨てられたバイケイソウをよく見かける・・・ご用心を!
▲毒草・コバイケイソウの若芽にも注意

 亜高山帯の湿った草原に群生。花期は7~8月。中毒症状は、下痢、けいれん、流涎、呼吸困難。
▲毒草・バイケイソウ ▲ギョウジャニンニク

見分け方

 バイケイソウは、良く見れば、ボリューム感がありニンニク臭もないことから区別できる。容易に採取できる群落は、ほとんどが毒草・バイケイソウである。ギョウジャニンニクは、根際が赤い網目状の繊維に覆われ、ニンニクのような強い臭いが判別の決め手である。
▲早春の山菜「カタクリとギョウジャニンニク」

 ギョウジャニンニクは、パッケやカタクリと並び早春を代表する山菜である。
 雪解けが最も早い日本海側の小河川・・・その雪解けの清流とキクザキイチゲやカタクリ、バッケなどの春告げ花を撮影するために、毎年出掛けている。運が良ければ、ブナの新芽を求めて海岸沿いに集まるサルの群れにも出会える。そして帰り際に、早春の味・ギョウジャニンニクを摘む。この山菜は、まさに「春の芽吹き」を象徴する山菜である。
採り方

 葉が一枚しかつけないものと、二枚のものがあるが、茎が太く、葉が二枚のものを選んで採取する。また、掘り取って根こそぎ採らないように、必ずハサミまたはナイフで一本、一本根元をていねいに切り取ること。一ヵ所の範囲で採るのは1/3以内にとどめること・・・「残して採る」ことが持続可能な山菜採りの基本である。
強烈な臭いに注意
 採取したギョウジャニンニクを車内に無造作に置くと、ニンニク臭が染みつき、なかなかとれなくなるので注意。それほど野生のものは、臭いが強烈で圧倒されるほど強い。匂いをシャットアウトするには、車外のバックミラーなどにしっかり縛りつけて置くことが肝要である。
料理

 シャキシャキとした食感と、独特の鮮烈な香りは病み付きになる美味しさ。香りが強く、油とのなじみもよいので、バーベキューや焼肉などと相性が良い。茎の根元の部分は生食、茹でておひたし、醤油漬け、酢味噌和え、豚バラの油炒め、チャーハンの具、天ぷら、バター炒め、オムレツ、卵とじ、餃子の具など。
ギョウジャニンニクと豚バラの油炒め・・・根際の網目状の繊維を取り除き、適当な長さに切る。豚バラを炒めた後、ギョウジャニンニクを入れて炒め、万能つゆなどで味付けする。細く刻んだ油揚げを加えると味に厚みが増す。炒め過ぎないのがコツ。

ギョウジャニンニクのオムレツ・・・若葉を細かく刻み、卵をといて、塩、コショウで焼く。

醤油漬け・・・ギョウジャニンニクの葉を軽く湯通しする。密閉容器に葉をひと並べに入れ、醤油または万能つゆをひたひたになるくらい注ぎいれる。蓋を閉め2~3日ぐらいで出来上がり。
冷凍保存

 根元のハカマをとってよく洗い、沸騰したお湯に茎から入れて20秒ほど茹でる。冷水に浸してからよく水切りをして、ラップに包み急速冷凍する。使うときは、凍ったまま刻むなどして調理する。
薬用効果

 栄養価に優れ、β-カロテン、ビタミンB6、C、K、葉酸、アリシン、アリルフィド類を多く含む。血行促進、抗菌力、抗血栓作用、高血圧予防、不眠症、冷え症に効く。
ギョウジャニンニク写真館
参 考 文 献
「薬効もある山野草カラー百科」(畠山陽一、パッチワーク通信社)
「山菜・薬草 山の幸利用百科」(大沢章、農文協)
「ひと目でわかる 山菜・野草の見分け方・食べ方」(PHP研究所)
「山渓名前図鑑 野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「山菜ガイドブック」(山口昭彦、永岡書店)
「山菜採りナビ図鑑」(大海淳、大泉書店)
「日本の山菜100 山から海まで完全実食」(加藤真也、栃の葉書房)