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名の由来、練りワサビ、ワサビ栽培、採取時期、採り方、料理、おろし方、薬用効果、写真館
  夏に涼しく、冬に暖かい、豊富な湧水が流れる山地の渓流や水しぶきのかかる岩場沿いに大群落をつくる。艶のあるハート形の若葉と白花の群れが美しく、清流のシンボルと呼ぶにふさわしい山菜である。刺身、寿司、そばなどを食べる時に欠かせないワサビは、和食に欠かせない日本固有の香辛料である。

 昔から香辛食品、薬用として珍重されてきた山菜で、江戸時代から栽培されていた。天然のワサビは、栽培物と区別する意味も含めて、ヤマワサビ、サワワサビなどと呼んでいる。
名の由来

 918年「本草和名」には、「深山に生え、銭葵の葉に似ていることから山葵の名が生まれ、のちに和佐比の名前がついた」と記されている。

 また、①ワルサハリヒビク(悪戯疼)の略で、辛いことを表す。②ワサアフヒ(早生葵)で、春早々に花をつけ、葉の形がアオイに似ているため。③ワサ(早生)とヒビナ(ヒリヒリと辛い菜)から転訛。④「沢葵」よりサワサヒに転訛し、ワサビに再転したなど、多数の説がある。それだけ古くから利用された証であろう。
練りワサビ

 チューブ入りの練りワサビの主原料は、セイヨウワサビ(ワサビダイコン)。サワワサビの使用量がセイヨウワサビより多い製品は「おろし本わさび」、逆にセイヨウワサビの方が多い製品は「おろしわさび」と呼ばれている。
▲横倉ワサビ(藤里町横倉)

食用のワサビ栽培のはじまり

 慶長年間(1596~1615)、静岡市有東木の村民が、山葵山と呼ぶ山の渓谷一面に自生しているワサビを採集して、井戸頭の湧水に移植して試験栽培したところ、思いのほか順調に生長繁殖したので、村民たちは谷川の水を引いて小規模な栽培を行ったという。

 1697年の「本朝食鑑」に栽培法が詳しく記されていることから、17世紀末には、ワサビ栽培が普及し、栽培方法も現在とほとんど変わらない様子が伺える。江戸末期に書かれた「草木六部耕種法」には、伊豆と静岡市が既にワサビの大生産地であることを伝えている。
▲沢筋のサワグルミ林に大きな群落をつくるヤマワサビ
採取時期

 採取時期は、春から初夏、白い花を咲かせる頃。根は残して主に葉と茎を利用する。根の旬は、夏以降で辛味や風味が増す。サワワサビのβ-アミラーゼは、9月頃が最高になるという研究結果がある。消化力増進効果を狙うなら9月採取がベストということになる。
採り方

 野生のワサビの根は、意外に細く小さい。持続可能な利用を考え、根は太いものだけを選び、数本採るだけに止める。ワサビの本命は、根を除いた若葉と花茎・・・だからナイフや鎌で刈り取るのがコツである。
料理

 茎と葉を細かく刻み、湯通し又はさっと茹でてから、冷水で冷やす。おひたしや和え物、一夜漬け、粕漬けに。若葉は天ぷら、根はすりおろし、刺身の薬味に。花は料理の彩りに使うと食欲をそそる。大量に採取した時は、粕漬けや万能つゆに漬け込むと美味い。
山ワサビの醤油漬け

 山ワサビをよく洗い、食べやすい長さに刻む。刻んだワサビをザルに入れ、上から熱湯をまんべんなく注ぐ→ストックバックに入れ、万能つゆを注ぐ→冷蔵庫で冷やす・・・一晩寝かせば出来上がり
ワサビのおろし方

 ワサビの香りと辛味は細胞が壊れた時に効果が発揮されるので、できるだけ細胞をすりつぶすように、目が細かい陶器(セラミック)のおろし器や鮫皮を張ったおろし金を用いると風味が増す。ワサビの頭部(茎側)が最もみずみずしく新鮮なので、太い頭部側からすりおろすのが美味しい。砂糖や塩をごく少量、あるいはレモン汁を添加すると辛味が増す。
▲イワナの刺身とヤマワサビ

 ヤマワサビの辛味成分である「アリルからし油」が魚の生臭さを分解し、食欲を増進させる作用がある。また、独特の香りと辛味が胃を刺激し、食欲と消化をサポートしてくれる。
ワサビと鮨

 ワサビと鮨が結び付いたのは19世紀。文化年間、江戸深川で押し鮨のサバの生臭みを消すために用いられた。握り鮨の起源は、文政年間の初め、酢でしめた飯にワサビを乗せ、コハダの切り身やエビと一緒に握ったのが始まりと言われる。ちなみにマグロが鮨ネタとして登場するのは天保年間(1830~1844)。
薬用効果

 香辛料、芳香健胃、食欲増進、防腐・殺菌、鎮痛、リュウマチ、神経痛など。漢方では山葵根(さんきこん)と呼ばれている。
ヤマワサビ写真館
参 考 文 献
「ワサビのすべて」(木苗直秀ほか、学会出版センター)
「薬効もある山野草カラー百科」(畠山陽一、パッチワーク通信社)
「山菜・薬草 山の幸利用百科」(大沢章、農文協)
「ひと目でわかる 山菜・野草の見分け方・食べ方」(PHP研究所)
「山渓名前図鑑 野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社) 
「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「山菜ガイドブック」(山口昭彦、永岡書店)
「山菜採りナビ図鑑」(大海淳、大泉書店)
「日本の山菜100 山から海まで完全実食」(加藤真也、栃の葉書房)
「山菜と木の実の図鑑」(おくやまひさし、ポプラ社)
「採って食べる 山菜、木の実」(橋本郁三、信濃毎日新聞社)
「おいしく食べる山菜・野草」(世界文化社)