名の由来、菅江真澄、探し方、採り方、ヤマビルに注意、アク抜き、料理、長期保存、薬効、写真館 |
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ワラビの茎は地下を横に這う地下茎で、質の良いデンプンを貯えている。一般にワラビの食べる部分は、茎ではなく葉。万葉の昔から親しまれている万人向けの山菜である。「石ばしる 垂水の上の さ蕨(わらび)の/萌え出づる春に なりにけるかも/志貴皇子」 ワラビは土中の根茎が芽をつけながら地中に伸びて繁殖するので、生育環境が良いと、あっという間に広がる繁殖力旺盛な山菜である。しかし、近年、杉の植林地の成長や里山、放牧地などの荒廃に伴いワラビの生育場所が少なくなっている。そうした荒廃地に人の手を加えた観光ワラビ園が人気を博している。狙い目は、杉の伐採跡地・・・伐採してから数年経てば、立派なワラビ畑に変身する。 |
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名前の由来 ワラビは、「ワラ」が茎をさし、「ビ」が食用になること・・・つまり「茎が食用になる」という意味に由来するという説がある。また、アク出ししたワラビの色が、燃やしたワラに似ていることから「ワラ火」に由来するという説とか、ワラビの若芽を「童菜(ワラベナ)」という方言から「ワラベ」が転訛したという説がある。 |
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菅江真澄「太良のワラビ」(1802年、しげき山本) 太良の山深く、川沿いの道をたどり、木こり・炭焼き・鉱夫らの通う崖の道や、淵瀬の岩にわずかばかり足跡がついているのを踏んで進み、門前坊というところに出た。春の頃は、たいそう良いワラビが萌え出るという。その名の僧が、はじめに折り取ったゆえの地名であろうか、ワラビのホタ(ほけた葉)が茂りあっていた。 |
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菅江真澄「アクのない白ワラビの由来」(1810年、男鹿の鈴風) (白ワラビの)由来は、昔、ある法師に宿を貸した女が、海が荒れてワカメをとることができない。何を汁の実にして旅の僧をもてなそうかと思案していると、僧は「いまたどってきた山路にたいそうワラビが多かった。それを採ってきたら」という。女は笑って「アク抜きしなければ苦くてすぐに食べられるものではない」と答えた。 「いや、その必要はない」といって、僧は山に出掛けて行き、ひとつかみほど採ってきて、「このワラビは決して灰をささずに煮ろ」といったので、そのまま、鍋に入れて火にかけた。やがて食膳に出したところ、味もたいそう良かったという・・・今の世になっても、汁菜にするくらいの量の、灰につけないでもよいワラビが萌え出るという。 |
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▲赤茶けた枯葉は、前年に枯れたもので、これを目印に探す 探し方 植林して5~6年の杉林や灌木の茂み、笹薮の中などがワラビ採りのフィールドで、前年の秋に枯れた赤褐色の枯れガラを目印に探す。プロが狙うのは藪の中に生えている通称「ヤブワラビ」。日当たりの良いワラビ園などで採れるものよりも太くて粘り気も多い。 |
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▲ヤブワラビ・・・深山の湿り気のある林縁に生えている太く長いものが柔らかく美味しい | |||||||||||||||||||
採り方 まだ葉が開かないコブシ状で、太いものを選び、自然に折れるところから折り取る。ワラビ採りは、採れば採るほど生えてくる。例え採り尽しても、三日もたてば採り頃のワラビが生えてくる。こうして採り続けていると、5月中旬頃から8月まで楽しむことができる。 |
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▲血をたっぷり吸って大きくなったヤマビル ヤマビルに注意! ワラビなどの山菜採りで注意を要するのがヤマビル被害・・・気付いた時には血だらけの被害を受ける。ヤマビルは、皮膚をY字型に傷つけて吸血するが、その際、血液の凝固を防ぐ物質(ヒルジン)を分泌するため、ヒルが離れても出血が止まらない。 秋田での生息地は、五城目町、上小阿仁村、井川町、昭和町、秋田市。特に雨上がり時に注意。ヤマビルファイターやヒルノックなどの忌避剤(寄せつけない薬)を使用すれば効果がある。山仕事をする人たちは、脚絆に塩を入れで足に巻いておけばヒルが寄ってこないという。 |
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▲先端のホダを取り除く | ▲重曹をふりかける | ||||||||||||||||||
▲熱湯を注ぎ蓋をして一晩おく | ▲アクが抜けたワラビ | ||||||||||||||||||
ワラビのアク抜き ワラビは洗って硬い根元を切ってから、指先で先端部分のホダをとる。大きめの容器にワラビを並べる。木灰又は重曹をふりかける。熱湯をワラビが完全に隠れるまでムラのないように全体に回しかける。蓋をしてそのまま翌朝まで置く。翌朝、アク水を捨て、ワラビを冷水の中につけて数回水をとりかえるか、1~2時間流水にさらしてから使う。 |
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発がん物質を含むが・・・アクを抜けば大丈夫 ワラビに発がん物質が含まれていることは医学界の定説とか。けれども、この発がん物質はワラビのアクの中に含まれている。先祖伝来のアク抜きをすれば、ほぼ完璧に除去されるという。食べ過ぎにご用心。 |
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料理 ワラビ本来のヌメリと風味を味わうには、おひたしが一番。また、独特の粘りを生かすには「たたき」が絶品。おひたし、たたき、しょうが和え、マヨネーズ和え、味噌汁・納豆汁の実、煮物など。 ■ワラビたたき・・・細かく刻んで味付け味噌と一緒にミキサーにかけ、少量のサンショウを加える。 |
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ワラビの塩漬け(右上の写真は直売所で売られている塩漬けワラビ) ワラビはたくさん採って樽に漬け込み、長い冬の食糧として蓄える。採ってきたワラビを次々と樽に積み重ね、その度に真っ白になるほど塩をふって重石を置く。褐色の水がしみ出て蓋の上まで上がってくるが、そのままにして次のワラビを積み重ねていく。塩蔵中にアクが抜ける。これを食べるには、熱湯で茹でて水にさらし、塩分を抜いてから調理する。 |
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▲長期保存「塩干しワラビ」 塩干しワラビと戻し方 塩漬けにしたワラビをさらに揉みながら乾燥させて保存性を高めたもの。戻すには、水から沸騰するまで茹でて、その湯を捨てる。また水から沸騰するまで茹でて、その湯に一晩つけてから調理する。 保存はゼンマイと同じく天日干しがベスト かならず根元を切って、ゼンマイの要領で茹でてから乾燥する。乾燥ワラビは、カリウムや鉄分が10倍以上になり栄養価が高い。 |
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菅江真澄「ワラビ、ウド、ヤマベ、イワナ」 「様々な薬草を採取し、鬼川辺の主もない宿に再び泊まった。男たちは、6月に近い季節なのに雪の中で早蕨(芽を出したばかりのワラビ)を折り、ウドの若芽をつんできて煮たり、軒近い川瀬でヤマベ、イワナを釣ってきてあぶった」・・・ブナ帯の特徴は、自然の恵みが豊かなこと。その恵みに依存した食生活を記録している。 |
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■薬用効果 カリウムが多く、高血圧予防になる。利尿、腫物、切り傷、虫刺され。葉や根茎を採り、天日乾燥したものを煎じてお茶のように飲用する。生の葉をつぶして、その汁を患部に塗る。 |
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参 考 文 献 | |||||||||||||||||||
「薬効もある山野草カラー百科」(畠山陽一、パッチワーク通信社) 「山菜・薬草 山の幸利用百科」(大沢章、農文協) 「ひと目でわかる 山菜・野草の見分け方・食べ方」(PHP研究所) 「山渓名前図鑑 野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社) 「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会) 「山菜ガイドブック」(山口昭彦、永岡書店) 「山菜採りナビ図鑑」(大海淳、大泉書店) 「日本の山菜100 山から海まで完全実食」(加藤真也、栃の葉書房) 「山菜と木の実の図鑑」(おくやまひさし、ポプラ社) 「採って食べる 山菜、木の実」(橋本郁三、信濃毎日新聞社) 「おいしく食べる山菜・野草」(世界文化社) 「あきた山菜キノコの四季」(永田賢之助、秋田魁新報社) |