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INDEX ヤマツツジ、エゾエンゴサクキバナイカリソウソバナニッコウキスゲヤマユリ
ヤマツツジ

 全山新緑に包まれる晩春から初夏にかけて、色鮮やかな朱赤色の花を開く。最も目につく野生のツツジ。半常緑の低木で、高さ1m~3mほどになる。春に出る葉は秋に落葉し、夏に出る葉の多くは越冬する。色鮮やかな花は食用になる。
名の由来

 古い時代から「ツツジ」と呼ばれている。万葉集には「山越えて/遠津の浜の/石つつじ/吾が来るまでに/含みてあり待て」など。「次々に咲く」から転訛したという説や、花の形態から「筒咲く」から転訛したという説などがある。
レンゲツツジは有毒・注意

 初夏の高原に群生するレンゲツツジは、花や葉に毒性があり、ウシやシカも食べない。痙攣毒を含み、呼吸停止を引き起こす。花には蜜があるので危険・・・養蜂業者は、レンゲツツジが自生している場所は必ず避けている。
料理

 花をかむと、さわやかな酸っぱさが口に広がる。花から花冠を抜き取って、花の姿のまま、サラダにして食べたり、チャーハン、ピラフ、コンソメ風スープなどに散らして風流を味わう。ただし、有毒植物のレンゲツツジの花と間違えてはならない。また手作りケーキのトッピングにするなど、花の雅趣でお客さんをもてなすには素晴らしい素材である。

菅江真澄「酒飲みはヤマツツジの花を好む」(「おがらの滝」1807年)

 山菜を採るため、山ふみにきた人も集まって来て、佇んで見ていると、八つばかりの女の子が藤布衣を着て、短い布の黒染めの前垂をして、少しも恥ずかしがる様子もなく踊った。人々は、これを肴にして飲み、帰ろうと立ち上がっては、タチハといって飲み、ヤマツツジをとってきて、枝のついたままの花をむしゃむしゃと食っては飲んだ。酒を飲む人たちは、ツツジの花を好むものという。
■ヤマツツジ・フラワーソース

 摘み集めた花冠を煮たてる。煮汁が濃く色づいたら引き上げて絞る。その花汁と花の煮汁を合わせたジュースに砂糖を加えて煮ると、美しいソースができる。このソースをヤマツツジ・アイスやシャーベットに利用する。
エゾエンゴサク
エゾエンゴサク

 毒草の多いケシ科の中では数少ない食用種で、漢方の生薬名は「延胡索(えんごさく)」。木漏れ日が入る林床や沢沿いに、地を這うようにして美しい花を咲かせ、大きな群落をつくる。
名前の由来

 球根を加工したものを漢方で「延胡索(えんごさく)」という。東北以北に自生しているから「蝦夷(エゾ)」をつけた。漢字では「蝦夷延胡索」と書く。
採り方・・・春から初夏、開花時に全草を摘む。
料理

 アクも少なくクセもない。さっと茹でて水にさらし、おひたし、ごま和え、マヨネーズ和え、酢の物、花はサラダに散らし入れる。
薬用効果

 浄血、鎮痛、通経、頭痛、腹痛、胃潰瘍。漢方の生薬名「延胡索(えんごさく)」。
キバナイカリソウ
キバナイカリソウ

 名前の由来は、花の形が船の錨(いかり)に似ていることと、花の色が淡い黄色だからキバナイカリソウ。イカリソウの名前は、平安初期から江戸末期まで数種以上の文献に登場している。花の形が独特で、美しかったことから観賞用として栽培されていたという。
料理

 若芽、若葉を食べる。花を野菜サラダに散らし入れると、さわやかで美しい。
▲薬草の展示・・・企画展「秋田のくすり今昔物語」(秋田県立博物館)より ▲生薬名はインヨウカク。薬草は地上部を乾燥させたもので、滋養強壮薬として用いられる。
ソバナ
ソバナ

 ソバナの「ナ」は「菜」で、食用になるとの意味がある。名前の由来は、蕎麦菜(そばな)、杣菜(そまな)などの説がある。
料理

 若芽を天ぷら、茹でて辛子しょう油、スープ、煮びたしなど。花をサラダに散らし入れる。
ニッコウキスゲ
ニッコウキスゲ

 栃木県日光周辺に多く、葉がスゲに似ており、黄色の花を咲かせることから、「日光黄菅」と書く。別名「禅庭花」ともいうが、由来は不明。
料理

 開花直前のツボミ、開き始めの花を摘み、天ぷらなどフライ料理に。ポタージュなどのスープに浮かべる。さっと茹でて、冷水にとり、おひたし、辛子ドレッシング、酢味噌、寒天寄せなど、鮮やかな花の色を楽しむ。
ヤマユリ
ヤマユリ

 山に咲くユリの意味で「山百合」と書く。低山などに育つ大型のユリで、白花に黄色いスジと赤い斑点が入り、芳香を放つ。鱗茎は、縄文時代に既に食用にされていたという。
料理

 開く直前のツボミを利用・・・重曹を入れて茹で、30~40分冷水にさらし、コンソメ風のスープに浮かべる。茹でたツボミと花びらを辛子ドレッシング、梅酢などで味わう。

 10~11月、鱗茎を掘り、鱗片をはがしてよく洗う。にんじん、ゴボウ、玉ネギなどとかき揚げにする。茹でて酢味噌和え、甘露煮、茶わん蒸しなど。
▲タンポポ(サラダ、和え物、きんぴら。煎じて服用すれば胃腸病、便秘、ぜんそくに効く)
▲オドリコソウ(茹でて和え物、おひたし) ▲ウワミズザクラ(花や果実を食用に、葉は煎じて服用すれば、せきを鎮める薬効がある)

花が美しい食用植物

 ニリンソウ、カタクリ、エゾエンゴサク、ヤマワサビ、オオバタネツケバナ、キバナイカリソウ、ユキノシタ、フキユキノシタ、ダイモンジソウ、スミレ類、エゾノリュウキンカ、ツリガネニンジン、オオバキボウシ、コバキボウシ、ウツボグサ、ツルニンジン、ソバナ、フジ、ハリエンジュ、ウワミズザクラ(若葉と花)、ニッコウキスゲ、コオニユリ、ヤマユリ、ツユクサ、ヒルガオ、キキョウ、ホタルブクロ、ノカンゾウ、タンポポ、オドリコソウなど。

 ただし、高山植物保護区での採取は厳禁なので注意。
参 考 文 献
「薬効もある山野草カラー百科」(畠山陽一、パッチワーク通信社)
「山菜・薬草 山の幸利用百科」(大沢章、農文協)
「ひと目でわかる 山菜・野草の見分け方・食べ方」(PHP研究所)
「山渓名前図鑑 野草の名前」(高橋勝雄、山と渓谷社) 
「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「山菜ガイドブック」(山口昭彦、永岡書店)
「山菜採りナビ図鑑」(大海淳、大泉書店)
「日本の山菜100 山から海まで完全実食」(加藤真也、栃の葉書房)
「山菜と木の実の図鑑」(おくやまひさし、ポプラ社)
「採って食べる 山菜、木の実」(橋本郁三、信濃毎日新聞社)
「おいしく食べる山菜・野草」(世界文化社)