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山野の花シリーズ④ キクザキイチゲ・アズマイチゲ

INDEX キクザキイチゲ、アズマイチゲ
 早春、ブナ帯の木々が芽吹く頃、到る所で落葉から顔をのぞかせるキクザキイチゲの群落。「春のはかない草花」(スプリングエフェメラル)の代表的な早春植物である。同種に、フクジュソウ、カタクリ、ニリンソウ、エゾエンゴサク、ショウジョウバカマなどがある。天気が悪ければ花は開かず、首を垂れる。
キクザキイチゲ(菊咲一華、キンポウゲ科)

 早春に咲き、白から紫色の花が1個つき、花弁はなく、ガク片が花弁状に見える。茎葉は3枚輪生し、深い切れ込みになる。ニリンソウ、カタクリと並び大きな群落を形成する。カタクリと混生する場合も少なくない。良く似た仲間にアズマイチゲがあるが、詳細は後述する。花期は3~5月。草丈は10~20cm。
名前の由来

 キクザキイチゲはキンポウゲ科だが、花びらがが菊のような形で咲き、1本の茎に1輪をつけるので、菊咲一華と書く。別名は、菊咲一輪草(キクザキイチリンソウ)。
雪解けの清流を彩るキクザキイチゲ

 雪解けがピークを迎えると、水かさが増し、凄まじい轟音を発して流れ下る。裸の森を吹き抜ける風・・・白いイチゲの群れは、一斉に踊り始める。それは、春の訪れに歓喜乱舞しているかのように見える。
百花繚乱

 雪解けが早い五能線沿いの小河川・・・裸の森の林床には、春の光が100%降り注ぎ、一年中で最も明るい。キクザキイチゲやカタクリなどの春告げ花たちは、この機を逃さず百花繚乱のごとく咲き乱れる。その花園を散歩していると、まるで桃源郷を歩いているような錯覚に陥る。そうなると、百花繚乱の花園を借景に昼食をしたくなる。
花園は五感を刺激し、食事の満足度アップ

 食事の場所は、百花繚乱の花園のど真ん中・・・雪解けの水をコッフェルに汲み、お湯を沸かす。雪代の音、鳥の囀り、ときおりブナの新芽を貪るサルの鳴き声を聞きながら、ミニカップラーメンを汁にオニギリをほおばる。食後は、360度花園を眺めながら、のんびりコーヒーを飲む。しこたま美味い!!・・・早春の花園は五感を刺激し、食事やコーヒーの満足度をグッと高めてくれる。ぜひお試しを!
仙北市西木町八津・鎌足かたくり群生地「カタクリとキクザキイチゲの混生」
鷹匠の里・羽後町上仙道桧山「キクザキイチゲとフクジュソウ、カタクリの混生」

 雪が解けたばかりの林床から福寿草、キクザキイチゲ、カタクリが一斉に顔を出す。長い冬を耐え、待ちに待った山村の春・・・こんなスプリング・エフェメラルの光景に出くわすと、まるで春の女神が舞い降りたような幸福感を味わうことができる。
八峰町山村広場・御所の台ふれあいパークキクザキイチゲの八重咲き

 早春の草花は、カタクリ、キクザキイチゲ、白の八重咲きでボリューム感があるイチゲ、スミレサイシン、エンレイソウ、エゾエンゴサクなどを観察できる。
北秋田市阿仁のキクザキイチゲ

 早春、村の子どもたちは、この花摘みをして遊んだ。子どもたちは「雨降り花」といって、花摘みの後雨が降ってくると信じていたという。また里の人たちは、種まきの時期に咲くので、「種まき花」と呼んだ。それほど山村では、馴染み深いポピュラーな花である。
藤里町真名子「キクザキイチゲの大群落」

 藤里町真名子の白神山水近く・・・雪が解けたばかりの斜面一面にキクザキイチゲが咲き乱れる。さらに横倉棚田に向かうと、残雪と福寿草、パッケの群落が美しい。
男鹿市門前五社堂

 男鹿は暖かいので、どこよりも早く春告げ花が咲き乱れる。早春、男鹿市五社堂では、白と紫色のキクザキイチゲ、アズマイチゲ、カタクリ、スミレサイシン、エゾエンゴサク、キバナノアマナ、ニリンソウなど、スプリング・エフェメラルの草花たちをじっくり観察・撮影できる。
▲キクザキイチゲの花の色は、白、薄い紫、濃い紫など色の多様性に富む 
アズマイチゲ
アズマイチゲ(東一華)

 キクザキイチゲと良く似ているが、アズマイチゲは白色のみ。両種を見分けるポイントは、アズマイチゲの葉・・・葉の先が丸く細かく切れ込まず、やや下に垂れている。また、花の下にある茎に毛があればキクザキイチゲ、なければアズマイチゲ。
名前の由来

 東日本で発見され、花は1本の茎に1輪しかつけないので、東一華。その後、西日本にも分布していることが判明したという。
▲アズマイチゲの大群落(仙北市西木町八津・鎌足)
▲フクジュソウとアズマイチゲ
その他 キクザキイチゲ写真館
▲大平山系の某沢源流部に咲くキクザキイチゲ
▲撮影地・玉川温泉 ▲撮影地・仙北市田沢湖町刺巻湿原
▲エンレイソウとイチゲ ▲濃い紫色 ▲八重咲きの白花
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「奥羽山脈 雪国の草花」(雪国の草花刊行会)
「森吉山の自然」(「森吉山の自然」を発行する会)
「山渓名前図鑑 野草の名前 春」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)