山野の花シリーズ⑥ ミズバショウ・ザゼンソウINDEX ミズバショウ、ザゼンソウ |
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春から初夏、雪解け水が小沢をたくさんつくり、やがて谷筋の流れは、瀑布となって渓谷を流れ下る。雪解け水が滴る湿地では、純白の衣をまとった森の精霊たちが、一斉に舞い降りたように咲き乱れる。萌黄色の新緑と残雪の白、清冽な雪解け水と相まって、その清楚な姿は、仏や神を連想させるほど美わしい。 | ||||||||||
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![]() ハンノキ林内のミズバショウ群落は、国道のすぐ傍にあるので、撮影に便利。ハンノキ林の面積は約10ha、そのうちミズバショウの群生面積は約3haで、約6万株と言われている。林内に木道があり、ミズバショウとザゼンソウの群落を気軽に鑑賞できる。ただし、撮影のために湿地に入ることはできないので、望遠レンズあるいは高倍率のデジカメが便利である。 月明かりの夜は、純白の苞が雪明りのように明るく輝き、幻想的だという。そんな幻想的な夜に鑑賞すれば、俳句や素敵な詩がスラスラと書けるであろう。ぜひお試しを! |
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世界自然遺産白神山地のミズバショウは、残雪と萌黄色の新緑が眩しい5月~6月上旬頃に咲き誇る。だから「夏の思い出」で歌われているような夏ではなく、春の花である。 | ||||||||||
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![]() 「夏がくれば 思い出す/はるかな尾瀬 遠い空 ・・・水芭蕉の花が 咲いている/夢見て咲いている水のほとり・・・ 夏がくれば 思い出す/はるかな尾瀬 野の旅よ ・・・水芭蕉の花が 匂っている/夢みて匂っている水のほとり・・・」 |
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![]() 萌黄色の新緑と残雪、沢筋の雪解け水が流れる緩やかな斜面の湿地には、ミズバショウとリュウキンカの大群落がある。東成瀬村三合目コースは、六合目から焼石沼までの至る所にミズバショウとリュウキンカの群落がある。特に焼石沼周辺は圧巻である。また岩手県側中沼登山口コースは、雪解けの窪地、湿地に飽きるほどミズバショウの群落がある。 |
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▲田苗代湿原(藤里町)のミズバショウ 岳岱自然観察教育林から黒石林道終点、藤里駒ヶ岳(標高1,158m)の登山道入口までわずか3.4km。ここから徒歩15分程度で湿原に達する。ミズバショウやショウョウバカマ、ニッコウキスゲなど湿原に咲く高山植物を気軽に見ることができる。駒ヶ岳は、古くから信仰の山で、山頂には女神がすみ、田苗代湿原は「神様の田」と言われている。昔から岳参りをしてその年の豊凶を占ったという。 |
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![]() 花が終わったミズバショウ群落をよく観察すると、クマが食べた痕跡(上の写真)が至る所にある。クマは、白い仏炎苞や花を食べるのではなく、花後のボリュームのある緑の葉を好んで食べる。5月下旬から6月にかけて、ミズバショウのほか、ザゼンソウ、エゾニュウ、アザミ類も好んで食べる。これら植物の共通点は、背丈が高い、水分が多い、葉が厚いなどの特徴がある。 |
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渓流沿いの森の中の水際や湿原の際などには、ズラリと大きな葉が群生しているが、上右の写真のように、クマに滅茶苦茶に踏み荒らされているのもよく見掛ける。沢歩きで、ミズバショウ群落やタケノコが生える笹薮を歩く場合は、クマに注意! | ||||||||||
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![]() ミズバショウは、全草が有毒に分類され「食べると口がはれ、腰痛を起こし下痢する」。「秋田たべもの民俗誌」(太田雄治)によれば、はるか昔のことではあるが、この草も食べていた記録があった。由利郡矢島町の一部で、この葉の若芽を、米の白水でゆでて、味噌和えなどにして食べたと記されている。ただし、決して真似をしないように注意! |
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▲秋田市植物園(仁別植物園)のミズバショウ | ||||||||||
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▲プラザクリプトン「学習の森」の湿地に群生するミズバショウ | ||||||||||
ザゼンソウ | ||||||||||
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白い仏炎苞が茶色になるとザゼンソウになる。だから、ザゼンソウは、ミズバショウと同じ仲間で、混生している場合もある。しかし、ミズバショウよりずっと自生地が少ない。乾燥した所にも適応している。傷をつけると臭い匂いを出し、アメリカではスカンクキャベツと呼ばれている。 | ||||||||||
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![]() 花は黄褐色の小さな花で、葉が伸びないうちから咲く。頭巾形の花びらに見える部分を、仏炎苞という。仏炎苞の中に花の集団がある。仏像の光背(こうはい)に似た暗紫褐色の仏炎苞に包まれ、悪臭がある。花後、葉が大きくなる。 花期 3~5月 |
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![]() 僧が岩穴で座禅を組んでいるような花であることから、座禅草と書く。別名は、達磨大師に見立てて、達磨草と書く。北米先住民は、ザゼンソウをよく薬草、調味料として利用しただけでなく、魔術的なお守りとして用いたという。この独特の姿は、日本人でも座禅を組む修行僧や達磨大師をイメージしたのだから、神や仏を連想する何かを秘めているのであろう。 |
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![]() ザゼンソウは、開花する時に真ん中の部分の温度が約25℃まで上昇し、周囲の雪を溶かすという。と、同時に悪臭も発生し、その臭いと熱によって花粉を媒介するハエ類をおびき寄せる。ザゼンソウは雪の中でも、いち早く顔を出す発熱と悪臭を放つ戦略で、数の少ない昆虫を独占し、受粉の確率を上げているのである。 |
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![]() 湿地の左岸から流入する小沢は、源流部までザゼンソウが群生し、足の踏み場もないほど規模は大きい。普通は、ミズバショウとともに湿地に群生している場合が多いが、この小沢は、比較的乾燥した斜面にザゼンソウのみが優占している。 |
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▲ミズバショウとサゼンソウの混生(仙北市刺巻湿原) | ||||||||||
参 考 文 献 | ||||||||||
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