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山野の花シリーズ⑦ リュウキンカ

 芽吹き始めたブナ林、萌黄色の新緑に染まる谷では、雪解け水で一気に水かさが増す。その源流部では、純白のミズバショウと、黄金色のリュウキンカの花が大きな群落となって、一気に花の楽園を形成する。雪解けの冷たい清流に浸り、春の光を十分に浴びて咲く光景は、雪国の清流を象徴する花である。この花の群れに出会うと、沈黙の冬からやっと山笑う季節が訪れた幸福感に充たされる。
リュウキンカ(立金花、キンポウゲ科)

 リュウキンカは、深山の渓畔、湿地から高山の湿地に生える。ミズバショウと混生する場合が多く、雪解け水が流れる水辺や湿地に大きな群落をつくる。湿原では、白色のミズバショウが咲く頃、一緒に黄金色の大きな花が咲き、大変美しい。花には花弁がなく、花弁状のガク片が普通5枚ある。一回り大きなものは、エゾノリュウキンカと呼ばれているが、見た目での区別は困難だといわれている。
花期 5~7月。雪解け後に咲くので花期は長い。草丈 50~80cm。
名前の由来

 仲間のエンコウソウは這うように茎を伸ばすが、本種は茎が立ち上がり、金色の花を咲かせることから、立金花と書く。
▲葉が大きくなると、フキの葉に似ていることから「ヤチブキ」とも呼ばれている。
生育地

 リュウキンカは、ある程度流水のある湿地や水辺を好み、ミズバショウと共生している場合が多い。生育地は、白神山地、八幡平、森吉山、大平山、乳頭山、焼石岳等。
花言葉・・・「必ず来る幸福」
▲リュウキンカの群落から清楚な白い仏炎苞が顔を出す
山菜としての利用

 北海道では若芽を山菜として食用にしているが、秋田ではほとんど食べない。食べ過ぎると下痢などの症状を起こす場合があり、草花として鑑賞するだけにとどめた方が良いだろう。もちろん、高山植物保護区での採取は厳禁なので注意。
玉川ダム・戸瀬公園のリュウキンカ

 玉川ダム宝仙湖の上流部にある戸瀬公園では、5月下旬頃、清流のシンボル・リュウキンカとシラネアオイが満開に咲き誇る。リュウキンカは、公園内を流れる清流沿いに群生している。
白神山地のリュウキンカ

 春の陽光を一杯に浴びてリュウキンカが咲き乱れる谷は美しい。白神山地では、渓流沿いの湿地や湧水が流れる斜面などに自生している。白神山地の沢々に自生するリュウキンカは、写真のように大型でエゾノリュウキンカといわれている。同じ頃、この谷を詰めると、オオサクラソウやトガクシショウマの群落にも出会える。
太平山系白子森の源流に咲くリュウキンカ

 イワナを追っていると、人跡稀な源流部の水辺にひっそりと咲き誇るリュウキンカの群落に出逢うことがある。その鮮やかな黄金色は、幸福の象徴でもあり、よく記念撮影したのを思い出す。
焼石沼周辺はリュウキンカとミズバショウの一大群生地

 焼石沼(標高1245m)周辺は、三界山、南本内岳、焼石岳、西焼石岳から湧き出す雪解け水が、この平らな湿地帯に流れ込み胆沢川の水の源になっている。その清冽な水に恵まれた湿地一帯は、雪渓が残る山々と雪解け水がほとばしる一帯にリュウキンカとミズバショウの一大楽園が出現する。
▲北側から焼石沼に流れ込む小沢沿いには、大株のリュウキンカが群生している。
戸島大堤のリュウキンカ(秋田市河辺戸島大堤、2015年4月19日撮影)

 最も身近に観察できるリュウキンカは、戸島大堤の浸透水が山の法尻に沁み出す一帯に2ヵ所の大きな群落がある。雪解け水を湛えた戸島大堤から、地山を通ってゆっくり沁み出す浸透水は、濾過され清流に近い。周囲には、ミズバショウも点々と自生している。
▲戸島大堤 ▲地山から浸透水が沁み出す法尻に自生している。
リュウキンカ写真館
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「山渓名前図鑑 野草の名前 春」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)