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山野の花シリーズ⑩ シラネアオイ、ラショウモンカズラ

INDEX シラネアオイ、ラショウモンカズラ
 ゼンマイ採りのシーズン、残雪の谷を歩いていると、よく見掛ける大型の花である。雪国のブナ林では、それほど珍しくもなく、ごく普通に見られる。美しい大輪の花を咲かせ、その開花期間は意外と長く、楽しめる時期も長い。だから、愛好家が非常に多い。(写真は白神山地追良瀬川源流部)
▲日本を代表する名花「山と渓谷を彩るシラネアオイ」
シラネアオイ(白根葵、シラネアオイ科)

 1科1属1種の日本特産種。一般的に淡い青紫色の花を咲かせるが、中には濃い紫色から白色まで、花色の多様性に富んでいる。茎は直立し、柄のある2枚の葉と柄のない1枚の苞葉がつく。主として日本海側の雪の多い深山に生える。花の頃は、高さが20cmほどだが、花が終わると60cmほどに伸びる。
 花は大きく、4枚の花弁のように見えるのはガク片で、花弁はない。花の中には、多数の雄しべと2個の雌しべがある。実はプロペラのような形をしている。
生育場所・・・雪解けの遅い雪崩斜面や窪地、湿地帯の端でよく見掛ける。
▲ツボミ状態のシラネアオイは、紫色が濃く感じる。
花期 5~7月
名前の由来

 日光の白根山で初めて発見され、葉がフユアオイに少し似るので、白根葵と書く。別名で「山芙蓉(やまふよう)」、「春芙蓉(はるふよう)」ともいう。本家の白根山では減少傾向にあるという。
花言葉 優美・完全な美。だから女性を褒めるなら「シラネアオイのように美しい」と言えば、最も喜ぶらしい。
シラネアオイの白花

 普通は紫色だが、稀に突然変異の白花に出会うことがある。上の白花は、和賀山塊シトナイ沢源流の険しい崖に生えていたもの。この時は、それほど貴重だとは思っていなかったが、その後、白神山地や八幡平で、それぞれ一度だけ出会っただけである。それだけに貴重なものであろう。
▲残雪が残るV字谷・・・雪崩斜面にゼンマイと一緒に咲くシラネアオイ。
▲白のシラネアオイ。 ▲純白のツボミ ▲開花した白のシラネアオイ
▲森吉山・登山道沿いを彩るシラネアオイ ・・・森吉山では標高1300mの稜線まで分布している。
▲紫色の花が特に濃いシラネアオイ。白い花は、ニリンソウ(白子森の源流部)。
▲左の写真は、白に近い淡い色のシラネアオイ(白神山地)、右は純白のシラネアオイ(八幡平)。
ラショウモンカズラ
ラショウモンカズラ(羅生門蔓、シソ科)

 大きな紫色の花を多数つける。この花を横から見ると、人の顔の下唇のように見える。その下唇に白い毛が密生し、長さ4~5cmの大きな花をつけ良く目立つ。茎は四角形で地上を這い、節から根を下ろし、葉は対生する。
生育場所 山地の林の縁
花期 4~5月 草丈20~30cm
名前の由来

 平安京の正門である羅生門の奥に鬼が住み着いていた。渡辺綱が、羅生門に乗り込み、悪さをする鬼の腕を切り落とし持ち帰った。その鬼の腕に似ている花を咲かせ、茎がツル(カズラ)状に伸びることから、羅生門蔓と書く。
花言葉 幸せを招く
▲日本の滝100選「安の滝」(北秋田市阿仁)に行く途中の中ノ又沢に咲いていたラショウモンカズラ

 森吉山系は、奥が深く地形の悪いクラと美しい滝が多い。その奥阿仁の秘境を旅した菅江真澄は、「水尻滝、幸兵衛滝、中ノ又の安の滝などと見るべきところは多いが、流れが深く道も遠いので行かれなかった」と残念がるほど、昔は秘境中の秘境であった。ラショウモンカズラは、里山周辺にも咲いているポピュラーな花だが、かつて秘境と言われたような沢の奥地にも咲いている。
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「奥羽山脈 雪国の草花」(雪国の草花刊行会)
「山渓名前図鑑 野草の名前 春」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)