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山野の花シリーズ100 タンポポの仲間

INDEX エゾタンポポ、セイヨウタンポポ、雑種、シロバナタンポポ、オクウスギタンポポ
  • エゾタンポポ(蝦夷蒲公英、キク科)
     本州中部以北から北海道の道端、野原、山地などに生え、昔から秋田にも自生している在来種(日本固有種)。日本の在来種は、北からエゾタンポポ、カントウタンポポ、トウカイタンポポ、カンサイタンポポなど20種ほど もある。セイヨウタンポポは総苞が反り返るが、在来種は総苞の外片が反り返らない点で区別できる。ただし身近な道端や空き地、機械化された田んぼや畑周辺に生えているのは、ほとんどがセイヨウタンポポである。残念ながら在来種のエゾタンポポはなかなか目にする機会がなくなった。その原因として、セイヨウタンポポは無性繁殖が可能で、かつ花の期間が長く、悪条件にも強いなど優位性が指摘されていた。しかし、最近の研究によれば、セイヨウタンポポの「繁殖干渉」による影響が大きな原因の一つであることが明らかになっている。 外来種、在来種を問わず、花から根っこに至るまで、古くから食用・飲用・生薬として利用されている。
  • セイヨウタンポポとエゾタンポポの見分け方・・・セイヨウタンポポは、頭花の下にある総苞の外片が下方へ大きく反り返るのが特徴。エゾタンポポは、頭花やツボミの下を覆う総苞と呼ばれるウロコ状あるいは瓦状の部分が、上に真っ直ぐに伸びて花に密着し、下に反り返らないのが特徴である。
  • 名前の由来・・・北海道に多く生育することから「蝦夷」。タンポポの語源は、白く球形の果実穂を、拓本などに使う「たんぽ」に見立てて「たんぽ穂」という説や、太鼓をたたいた音に由来する説など、多数の説がある。 
  • 花期・・・5~6月 
  • 草丈・・・20~30cm 
  • ・・・根元から長く伸び、羽状に深く裂ける。 
  • 茎上部・・・花に近い部分の茎上部には綿毛が密生する。 
  • ・・・黄色の花は、セイヨウタンポポより大きいのが特徴。舌状花と呼ばれる小さな花が多数集まって頭花を形成し、茎の頂に一つずつつく。 
  • 総苞・・・頭花の下を覆う総苞と呼ばれるウロコ状あるいは瓦状の部分が、上に真っ直ぐに伸びて花に密着し、下に反り返らないのが特徴。 
  • 花にはよく昆虫が訪れる 
  • 生薬「蒲公英(ほうこうえい)・・・全草を日干し乾燥させたもの。健胃・解熱・発汗・利尿・胃腸の改善、滋養などの作用があるとされている。アスパラギン、鉄、マグネシウム、カリウムのほか、ビタミンA、B、C、Dを多量に含んでいることが知られていて非常に有用な野草である。 
  • 食用・飲用・・・若く軟らかい葉は生のサラダ、茹でたものは、おひたし、各種和え物、花は天ぷら、さっと熱湯をくぐせてから三杯酢に。お茶にも利用される。根はゴボウと同様にきんぴらにする。また胃腸の弱い人にも良いタンポポコーヒーとして利用される。
  • 類似種・セイヨウタンポポの特徴・・・ヨーロッパ原産で、頭花の下にある総苞の外片が下方へ反り返るのが特徴。道端や空き地などで普通に見られるタンポポのほとんどは、セイヨウタンポポである。 
  • 上の写真のとおり、花やツボミの下にある総苞の外片が下方へ反り返るのが特徴。
  • 綿毛・・・小花の集合体である花が終わると、パラシュートをつけた実が多数実り、丸い綿帽子ができる。風が吹くたびに、一斉に飛び立ちに遠くまで飛んでいく。
  • セイヨウタンポポの生態的特徴(写真:空き地に群生するセイヨウタンポポ)
    1. 春だけでなく、夏から冬も開花結実し、多数の種をつける
    2. 成熟が早く、小さな個体でも開花する
    3. 一年を通じて葉を広げ、光合成を行う
  1. 種は在来種に比べて軽く、遠くまで飛ぶ
  2. 種の発芽温度域は幅広く、いつでも発芽できる
  • セイヨウタンポポのスゴ技「無融合生殖」・・・無性生殖の一型で、受精の過程を経ず、単独で種子をつくることができる。つまり、たった1個体で子孫を残すことができる。その種子は、完全に親と同じ遺伝子を持つクローンである。有性生殖に比べ、その増殖スピードは2倍の速さだという。
  • 雑種もできる・・・3倍体のセイヨウタンポポと2倍体の在来タンポポは、交雑するはずがないと思われていた。ところが1990年代後半に両者の雑種の存在が明らかになった。誰も気が付かないうちに、両者の中間的な特徴をもつ雑種タンポポがあちこちで見つかるようになった。
  • 一見エゾタンポポに見えるが、群生している①・・・一般的に在来のエゾタンポポは群生しにくい。よく見ると、ツボミや花の下の総苞が開いている。恐らく雑種であろう。 
  • 一見エゾタンポポに見えるが、群生している②・・・同じくツボミや花の下の総苞が開いている。恐らく雑種であろう。 
  • 雑種①?・・・ツボミや花の下の総苞が反り返ってはいないが、向きがバラバラに開いているから雑種と思われる。
  • 雑種②?・・・総苞が半端に上向き
  • 雑種③?・・・まるでエゾタンポポのように総苞が開かないタイプ。関東ではニセカントウタンポポと呼ばれているので、ニセエゾタンポポと呼びたくなるような雑種である。
  • 雑種タンポポ・・・総苞外片の外見的特徴
    1. ほとんど上向きで、内片に密着する(外見上は在来種にそっくり)
    2. 一部が内片から離れるか、又は斜め上向きに立つ
    3. 横向きに開き、上向きと下向きが混じる
    4. 大きく開き、斜め下に向く
  • 外見はセイヨウタンポポでも・・・在来タンポポと外来タンポポが混生している地域では、一見セイヨウタンポポに見えても、DNAを調べると、その大部分が在来タンポポとの雑種であることが分かってきたという。 
  • 雑種性セイヨウタンポポ・・・交雑によって在来種の遺伝子を取り込み、本来の性質を超えるハイブリットモンスターと化し、在来種の生育環境を侵略しているような構図が見えてくる。 
  • 繁殖干渉とは
     名古屋大学博物館の西田准教授らの研究によれば、セイヨウタンポポらに追いやられている在来タンポポの雌しべは、外来種の花粉を間違って受け入れてしまう。その後、種子を作るのに失敗し、子孫の数を減らす。そうすると次世代の個体はますます周りをセイヨウタンポポらに囲まれ、その場から急速に追いやられてしまう。この現象は「繁殖干渉」と呼ばれている。 
  • シロバナタンポポ(白花蒲公英、キク科)
     花が白く、西日本に分布するのがシロバナタンポポで、秋田など東北地方に分布するのがオクウスギタンポポである。シロバナタンポポは、本州の西南部、四国、九州などでは最も普通で、タンポポの花は白いと思っている人が多いという。受粉しなくても子孫を残せるので、分布を北に広げていると言われている。花は、全体的に白いが中心は淡い黄色。オクウスギタンポポは、数が少なく、秋田では絶滅危惧種1類に指定されている。 
  • 花期・・・3~5月 
  • 総苞・・・やや離れる(開出)。総苞片に三角状の突起が目立つのも特徴。 
  • ・・・白い花をつけ、中央の花柱部は黄色である。1つの頭花に舌状花は約100個で、他種と比べて比較的少ない。ゆえに結実する種子も比較的少ないが、5倍体で単為生殖が可能である。
  • 参考:オクウスギタンポポ・・・花は白〜淡黄色で、中心部は黄色。本種はシロバナタンポポと同じく単為生殖を行うが、総苞外片に突起がない。 
参 考 文 献
  • 「春の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
  • 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
  • 「したたかな植物たち」(多田多恵子、ちくま文庫)
  • 「うまい雑草、ヤバイ野草」(森昭彦、サイエンス・アイ新書)
  • 「セイヨウタンポポはなぜ強い-在来植物が外来種に追いやられるメカニズムを発見-」(名古屋大学Press Release)
  • PDF「みんなで調べる たんぽぽを探そう!」(群馬県立自然史博物館)