本文へスキップ

山野の花シリーズ⑫ 鳥海・八幡平アザミ・・・

INDEX 鳥海アザミ、八幡平アザミオニアザミノアザミ
チョウカイアザミ(鳥海薊、キク科)

 鳥海山特産の大型のアザミで、花は下向きに咲く。高さが1m以上にもなる大型の草本植物である。アザミの花は、一般的に淡いピンク色がほとんどだが、チョウカイアザミは鮮やかな赤紫色で、花の色にも特徴がある。このアザミに似ている種は、オニアザミとハチマンタイアザミ。
▲チョウカイアザミは、7月~8月、鳥海山の八丁坂~七五三掛、外輪山コースに多く見られる。
名前の由来

 美しい花だと思って近寄ると痛いトゲに「驚く=あさむ」が転訛して「アザミ」。その他、「あざむく=アザミ」など数説がある。鳥海山に生えるアザミの意味で、「鳥海薊」と書く。ちなみに漢字の「薊」は、「草冠と魚と刀」からなっているが、その意味は、魚のようにトゲトゲした骨があり、刀のように刺す草を表している。
アザミを見分ける難しさ

 アザミは、住む環境が異なると形が変わってしまうという。植物には多かれ少なかれこの性質を持っているが、アザミ属はとりわけこの性質が顕著に現れる。日本列島のアザミ属は、いまだ名前がないものを含めると百種以上にもなるという。ちなみに中国は台湾を含めても約50種に過ぎない。

 国立科学博物館の門田裕一氏は、日本にアザミ属の種が多い理由を・・・①日本列島がアジア大陸から切り離され、大陸とは異なる独自の進化の道を歩んだこと。②世界でも指折りの多雪地帯であることから、古い時代からの植物が雪に守られ生き続けていること。③多種多様な環境に適応して、植物たちは地理的に分化していることを指摘している。
ハチマンタイアザミ
ハチマンタイアザミ(八幡平薊)

 2002年に発見された新種「ハチマンタイアザミ」。このアザミの特徴は、総苞からネバネバした粘液が出て虫を捕まえるとのこと。その特徴から、1997年に発見した高橋喜平氏は、仮称「ムシトリアザミ」と呼んでいた。
▲ハチマンタイアザミは、源太清水周辺に自生している 

発見者・高橋喜平氏の記録

 1997年7月26日、岩手県西和賀町の高橋喜平氏が源太清水の小屋に寄って、冷たい清水を飲もうとした時、側溝沿いに下向きに咲いている大型のアザミに気付いた。どのアザミにも昆虫が付いて死んでいた。この現象はただごとではないと直感し、調べることを決断。とりあえず「ムシトリアザミ」と名付けたという。
▲ハエ取りリボンのように粘り、たくさんの虫を捕える

 アザミの専門家・門田裕一氏に標本を送って調べてもらうことにした。2002年、門田氏が現地を訪れ観察した結果、新種であることが分かった。その決め手は、腺体という構造が細長い卵形で、チョウカイアザミやオニアザミより大きく、かつよく発達している点である。

 この腺体から粘着液が分泌され、ベットリとしてよく粘ることから、ハエ取りリボンのような役割を果たす。だから「ムシトリアザミ」と名付けたのもよく分かる。
オニアザミ
オニアザミ(鬼薊、キク科)

 花はアザミ類の中では最大級の大きさで、茎の先に下向きにつく。総苞はよく粘る。主に日本海側の山地から高山の草地に分布し、根生葉は大きく、葉には鋭いトゲがあり、茎を抱く。
生育場所 山地から高山の草地
花期 7~9月 草丈50~100cm 
名前の由来・・・全体に大きく鋭いトゲがあり、ゴツイ感じがすることから、鬼に例えて鬼薊と書く。

ノアザミ
ノアザミ(野薊、キク科)

 花は美しい紫色で良く目立つ。総苞片は反り返らずピタッとくっつき、粘液を出してべとつく。アザミの仲間では、春から花が咲くのは本種だけなので、他と間違うことがない。

生育場所 山野の土手、道端、あぜ道など
花期 5~8月 草丈50~100cm
名前の由来・・・野に生えているので「野薊」と書く。

参 考 文 献 
「八幡平の不思議 新種アザミ発見」(高橋喜平、岩手日報社)
「秋田の山野草300選」(秋田花の会) 
「秋田の山野草Ⅱ」(秋田花の会)