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山野の花シリーズ120 ノビル、スベリヒユ

  • ノビル(野蒜、ユリ科)
     畑の土手などに生える「野生ネギ」の一種で、古くから身近な山菜として有名である。葉から根まで食用になる。全体にネギ特有の強い匂いがある。野原や道端にごく普通に生えるのでよく利用される。しかし、スイセンなどの有毒植物とも似ており、誤食事故が少なくないので注意が必要である。初夏に花茎を伸ばし、その先に丸い花の穂がつく。花つきが悪く、ツボミの大半は開かないまま肥大してムカゴになる。ムカゴが地面にこぼれると根を出し、新しい株として育つ。日本全土に分布。 
  • 名前の由来・・・野に生える「ネギの仲間=蒜(ひる)」という意味で、「野蒜」と書く。 
  • 花期・・・5~6月 
  • 草丈・・・30~60cm 
  • 茎葉・・・鱗茎から線形の葉を伸ばす。地面から10cmほど真っすぐに伸びた後、くねって葉の先端が地面につくほど曲がって伸びる。茎、葉ともに中空である。葉の断面は陵があり、三日月形。葉を揉むとネギのような匂いがする。 
  • よく似たアサツキ・・・真直ぐに伸びる。葉の断面は筒状で丸い。秋田では、ノビルもアサツキの若芽も「ひろっこ」と呼ばれている。
  • ・・・花茎の先端に球形の散形花序を1個つける。淡い紅紫色を帯びる白色。花被片は6個で、淡い紫色の筋がある。 
  • ムカゴと混在・・・普通、花と紫褐色のムカゴが混在する。中には、花は咲かずにムカゴだけのものもある。花が咲いても種はできず、ムカゴと鱗茎で増える。 
  • ムカゴ・・・花茎の先端にできる赤褐色の小さな粒をムカゴと呼ぶ。直径5mmほどの粒が固まってつく。鱗茎と同様、食用になる。
  • 種発芽・・・普通は地面に落ちてから発芽するが、稀に茎にムカゴが付いたまま発芽する。
  • 食用・・・開花前の若芽を掘り取る。鱗茎は洗ってヒゲ根と薄い皮を取り除く。生で味噌をつけるだけでも美味しい。葉つきのまま天ぷら。茹でて、酢味噌和え、おひたし、マヨネーズ和えなどに。 
  • スベリヒユ(スベリヒユ科)
     インド原産で、古い時代に日本に渡来した。畑や道端など至る所に生える。茎は地面を這って広がり、マット状になる。花は一日花で、雄しべに触れるとゆっくり曲がって寄り集まってくる。虫に花粉を効率よく託すためと言われている。干ばつ被害が出るような干からびた大地でも元気に育つ。だから水戸黄門こと徳川光圀は、救荒植物として本種の栽培を奨励したという。畑にいくらでも生える本種を、屋根の上で乾燥保存して飢饉に備えた。ヨーロッパや東南アジアでは、食用蔬菜として改良されたタチスベリヒユが栽培されている。日本全土に分布。 
  • 名前の由来・・・葉を親指と人差し指とでつぶすと、ヌルリとした葉肉が現れて、指が「滑る」草であり、実が「ヒユ」の実に似ていることから、「スベリヒユ」の名がついた。 
  • 花期・・・7~9月 
  • 草丈・・・5~20cm 
  • 茎葉・・・艶のある紅褐色を帯びる茎が地面を這うように広がり、先は斜上する。葉は多肉質で、柄はなく光沢がある。互生する葉は、ヘラ状で上部に集まってつく。 
  • ・・・枝の先に小さな黄色の花を3~4個つける。5つの花弁は、先端の中央がへこむ。花は、日か当たると開き、午後には閉じる。 
  • 美味しい雑草・・・ヌメリと酸味が味わえる。初夏から初秋、花が咲く前の地上部をナイフで切り取る。茹でて水にさらし、おひたしや酢の物、和え物、バター炒め、煮浸し、卵とじに。 
  • 乾燥保存・・・茹でてから日干しにすると保存できるだけでなく、美味しさも増す。水で戻して利用する。
参 考 文 献
  • 「食草・薬草・毒草が分かる野草図鑑」(金田洋一郎、朝日新聞出版)
  • 「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
  • 「春の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
  • 「夏の野草」(永田芳男、山と渓谷社)
  • 「山菜ガイド」(今井國勝・万岐子、永岡書店)
  • 「うまい雑草、ヤバイ野草」(森昭彦、サイエンス・アイ新書)
  • 「山渓名前図鑑 野草の名前/夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
  • 「江戸草花図鑑」(岩槻秀明、エクスナレッジ)