山野の花シリーズ123 ウマノスズクサ
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- ウマノスズクサ(馬の鈴草、ウマノスズクサ科)
野原や河原の土手などによく生えるツル草。全草が粉白を帯び、茎や葉に臭気がある。秋田が北限の毒チョウ・ジャコウアゲハの食草として、よく知られている。ガクはラッパ状で、基部は球形に膨らみ、先端は斜めに切れた形で三角状に尖る。実は球形で6裂し、糸状に6裂した花柄が吊り下がる。本州から沖縄に分布。
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- 名前の由来・・・果実の様子が、馬の首にかける鈴に似ていることから、「馬の鈴草」と書く。花が咲いても結実するわけではないので、果実を目撃した人はごく稀だと言われている。
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- ツル草・・・細くて丈夫な茎はツル性で、初め直立し、次第に上部で他の草木に絡みつきながら這いあがる。
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- 葉・・・細長いハート形(三角状卵形)で、基部の両側が耳状に張り出し、鋸歯はない。
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- 花・・・葉腋から花柄を出し、その先に花を1個、横向きにつける。花弁はなく、先がラッパ状に開き、まるでジャズサックスのようなオモシロイ形をしている。その筒型のガクの内部は、紫褐色の長い軟毛が密生する。大きく開いた口から虫が入りやすいが、内部の毛は逆向きに密生しているので出にくいものになっている。
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- 虫に対する巧妙な罠
1日目の花は、入り口から筒にかけて内向きの毛がびっしり生えている。匂いに誘われてハエが奥に進むと、球形に膨らんだ部屋に入る。道を戻ろうとしても、逆毛に阻まれ、ハエはその部屋に閉じ込められる。その部屋の中央に雌しべの玉座があるので、強引に別の花の花粉を玉座に届けさせるという罠である。
夜になると、雌しべはしなび、雄しべが成熟する。ハエは花粉シャワーを浴び、甘い蜜の返礼に続いて、逆毛が急にしなびてバリケードがなくなる。やっと通路を戻り、外に出られるようになる。花粉をつけたハエは、再び別の花に入って騙される。それでも実をつける率は低く、普通は地下茎の先に子苗を作って増えるという。
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- なぜ結実率が低いのか・・・普通地下茎を伸ばして増える。ということは、巧妙な罠を仕掛けて虫を待つ周囲の花たちは、同一個体からの受粉が多くなってしまう結果、結実する率が低くなるというわけ。やはり花粉を運んでもらう虫を騙すような戦略は、ウインウインの関係よりも成功する率が低いということだろう。
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- 毒草・・・全草にアルカロイド系の毒であるアリストロチンなどを含み、誤食すると便に血が混じり、重症だと呼吸困難から死に至ることもある。
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- ジャコウアゲハの食草・・・幼虫は、ウマノスズクサという毒のある草を食べ、体内に毒を蓄積する。この毒は成虫になっても体内に残り、ジャコウアゲハを食べた捕食者は中毒をおこすと考えられている。このように食草の毒を蓄えることを「選択的蓄積」という。
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- 植物が虫から食べられないように毒で防衛すると、逆にそれを自らの防衛に利用するジャコウアゲハのような虫が現れる。さらに、毒のあるジャコウアゲハに擬態するチョウや蛾まで現れる。こうして植物と昆虫は、共にウインウインの関係だけでなく、お互いに対立しながらも共進化してきたのである。
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| 参 考 文 献 |
- 「食草・薬草・毒草が分かる野草図鑑」(金田洋一郎、朝日新聞出版)
- 「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
- 「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
- 「身近な野の花のふしぎ」(森昭彦、サイエンス・アイ新書)
- 「山渓名前図鑑 野草の名前/夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
- 「野に咲く花の生態図鑑 春夏篇」(多田多恵子、ちくま文庫)
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