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山野の花シリーズ⑭ オオカメノキ、ミズキ、ヤマボウシ

INDEX オオカメノキ、ミズキヤマボウシ
 新緑の頃、ブナの林床を白い花と亀のような大きな円い葉、夏には赤い実で彩る落葉低木。横に長く伸びた枝に白い花が新緑に映えて美しい。
オオカメノキ(ムシカリ、スイカズラ科)

 山地に生え、高さ3~6mになる落葉低木。枝先から散房花序をだし、小さな両性花をつけ、その周りにアジサイに似た白い装飾花をつけて美しい。枝が水平に伸びて、特長のある枝分かれを繰り返す。大形の葉は、丸みを帯び、葉脈が谷のように窪み、基部はハート形にくぼむ。縁は細かく裂ける重鋸歯(じゅうきょし)となる。果実は、8月頃赤くなりだし、熟すと黒くなる。
生育場所 山地~亜高山のブナ帯
花 期 5~6月
名前の由来

 卵円形の大きな葉を亀の甲羅に見立てて、「大亀の木」と書く。葉がよく虫に食われることから、別名「虫食われ」、それが転訛し「ムシカリ」という。
果実

 果実は、夏に赤く色付き上向きにつく。柄まで赤く色づくので、とてもよく目立つ。やがて黒く熟すと、色々な鳥たちが食べにやってくる。葉は美しく紅葉する。
▲オオカメノキの装飾花は5裂し、ほぼ同じ大きさ ▲ケナシヤブデマリ
 オオカメノキとケナシヤブデマリは、非常に似ている。判別のポイントは、白い装飾花。ケナシヤブデマリの装飾花(上の写真)は、5裂するが、裂片の1個だけが極端に小さく、一見4裂しているように見える。
用途・・・芽立ちの頃の枝は、生け花に使われる。庭木、弓、輪かんじき、薪炭。
ミズキ
ミズキ(水木、ミズキ科)

 初夏、雑木林で一際目を引くのがミズキの白花の群れ。扇状に枝を広げ、階段状の独特の樹形になる。枝先の散房花序に小さな白花を密につける。この若枝は冬に色鮮やかな紅色を帯びてとても美しい。ミズキが紅いのは、山の神様がお産をするとき、ミズキの枝を折って敷き並べた上でお産したためだという。

花期 5~6月 高さ15~18mになる落葉高木
名前の由来

 樹液が多く、特に春先に枝を折ると水のような樹液が滴ることから、「水木」と書く。
 果実は核果で直径6~7mmの球形。10~11月に黒く熟す。実の枝は赤く、サンゴのような形をしている。
暮らしとミズキ

 冬に枝が赤くなると、餅や飴をつけて正月に繭玉を飾る。これは、作物の豊作を予祝するもので,蚕の成長と同時に農作物の順調な生育を祈願する意味がある。また昔の子どもたちは、冬期、この枝を折ってカギをつくり、カギとカギで引き合う「冬枝相撲」をして遊んだ。材が柔らかいので細工物に利用される。
用途・・・庭木、街路樹、建築材、薪炭、食器、箸、下駄、杖、こけし、印鑑
ヤマボウシ
ヤマボウシ(山法師、ミズキ科)

 初夏を代表する木の花で、高さ7m以上になるミズキ科の落葉高木。6~7月頃、枝先に白色で花弁のような大きな4枚の総苞が葉の上を飾り、とても美しい。幹が直立し、横枝は、水平に伸びて、ミズキ同様階段状樹形を示す。
▲白い花が多数咲き、森の中で一際目立つ。公園樹や街路樹として植えられている。
花期 6~7月 高さ5~10mになる落葉高木
名前の由来

 和名は山法師の意味で、頭状の花序を僧の頭に、白い総苞片を頭巾に見立てたもの。果実が食用になるので「ヤマグワ(山桑)」とも呼ばれている。
 ヤマボウシは、街路樹でよく見掛けるハナミズキと同じ仲間で、「ハナミズキの和風バージョン」とも呼ばれている。花は、ハナミズキより一ヶ月ほど遅い。
参 考 文 献
「週刊 日本の樹木01 ブナ」(学研)
「山渓カラー名鑑 日本の樹木」(山と渓谷社)
「秋田農村歳時記」(ぬめひろし他、秋田文化出版社)
「秋田の山野草300選」(秋田花の会) 
「読む植物図鑑」(川尻秀樹、全国林業改良普及協会)
「山の道 山の花」(伊藤幸司、晩聲社)