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山野の花シリーズ⑰ イワキンバイ、ドクダミ・・・

INDEX  イワキンバイ、ドクダミヤグルマソウコケイラン
イワキンバイ(岩金梅、バラ科)

 岩肌を削った林道沿いの岩場や沢沿いの岩場などを、艶やかな黄色で彩る。根生葉は、菱状卵形で縁にはとがったあらい鋸歯がある。裏面は、粉白色で伏毛がはえている。花は黄色の5弁花。
生育場所 山地帯の岩場
花期 6~7月 草丈10~30cm
名前の由来

 岩場に生え、花が金色の梅花に似ていることから、「岩金梅」と書く。
▲イワキンバイ ▲ミヤマキンバイ

紛らわしい黄色のバラ科植物

 イワキンバイに似ている種は、キジムシロ、エチゴキジムシロ、ミヤマキンバイ、種類が多いイチゴ系の植物など、見た目だけでは見分けが難しい草花が多い。一般に、山地帯の岩場に咲くのがイワキンバイ、高山帯の岩場に咲くのがミヤマキンバイである。いずれも小葉は、3枚セットになっている。イワキンバイの葉は細長い楕円形で先が尖っているのに対し、ミヤマキンバイは円形で先は鈍い。
ドクダミ
ドクダミ(毒痛・毒溜、ドクダミ科)

 葉に相対して花茎を伸ばし、先端に白い花弁のような4枚の総苞片を開き、中央に淡い黄色の小さな花が円柱状に集って咲く。日向より陰地を好み、大きな群落をつくる。草全体に独特の悪臭がある。ゲンノショウコやセンブリなどと並び有名な薬草の一つ。
花期 6~7月 草丈30~50cm
名前の由来

 体内の毒素や痛みをとる草という意味で「毒痛」と書く。また、薬草として利用されているものの、不快な悪臭があることから「毒溜」とも書く。
薬効

 解毒効果があり、胃腸を整えるため、お茶代わりによく飲まれている。虫刺されには、葉をよくもんで汁を塗ると虫刺されに、浴槽に葉を入れて入浴すると腰痛に、煎汁はカイセン、タムシによく効くとされている。
ヤグルマソウ
ヤグルマソウ(矢車草、ユキノシタ科)

 茎の高さが1mにもなる大型の植物で、5枚の小葉がセットになって一つの葉になる。その葉の形が矢車形をしているので、花がなくても容易に判別できる。花も大型で、花序は円錐状に多数が密につく。最初はクリーム色だが、次第に水平に開いて白くなる。
生育場所 山地の沢沿いなど湿り気のある林内や林縁
花期 6~7月 草丈 80~100cm
名前の由来
 葉の形が鯉のぼりの柱につける矢車に似ていることから、「矢車草」と書く。  
コケイラン
コケイラン(小蕙蘭、ラン科)

 初夏、ブナ林のやや湿った所で見られる。葉は細長く、その脇から花茎を伸ばし、先端に多数の小さな花をつける。花は横向きに下から咲いていく。エビネを小型にしたような印象を受ける。葉が笹に似ているので「ササエビネ」の別名がある。

花期 5~7月 草丈30~40cm
▲コケイランが生えていた太平山系の谷とイワナ

 閉塞性動脈硬化症を患い、ろくに歩けなくなった時のことである。2011年6月26日、太平山系の小さな沢にイワナ釣りに入った。少し歩いては、岩に腰をかけて休む。もちろん、イワナを釣ったら大休止。まるで亀より遅い沢歩きだった。そんな時、目の前の大岩の上に咲いていたのが目に止まった。これまでみたことがない花・コケイランだった。

 いつものように、足早にイワナを追い続けていたなら、見逃していたに違いない。怪我の功名・・・歩けなくなると、それはそれで、これまで見えなかった風景が見えてくる。そんなことを教えてくれた思い出の花である。
名前の由来

 東洋ランの中に「蕙蘭(ケイラン)」という分野のランがある。その小さい花を咲かせるランだから「小蕙蘭」と書く。  
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「奥羽山脈 雪国の草花」(雪国の草花刊行会)
「山渓名前図鑑 野草の名前 春・夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
「秋田農村歳時記」(ぬめひろし他、秋田文化出版社)