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山野の花シリーズ⑲ オオバミゾホオズキ、オサバグサ・・・

INDEX  オオバミゾホオズキ、オサバグサズダヤクシュバイカモ
オオバミゾホオズキ(大葉溝酸漿、ゴマノハグサ科)

 初夏、イワナ釣りで沢を歩いていると、沢沿いの水辺に大小の群落をつくっている光景に出くわす。大きな唇形の黄色の花の群れは、良く目立つ。花の長さは約3cm。上唇は2裂、下唇は3裂する。葉は卵形。イワナが生息しているような清流に自生している。
開花期 6~7月
2010年6月の思い出

 イワナが遊ぶ渓流にオオバミゾホオヅキの花々が咲き始めると、イワナもタケノコも旬を迎える。・・・魚止めの手前で納竿した後、源流部に咲くオオバミゾホオズキの花を撮る。何気なく右岸の笹藪を覗くと・・・クマがタケノコを食べた皮の残骸があった。早朝、クマは谷沿いの笹藪で大好物のタケノコを貪る・・・その痕跡は明瞭なクマ道となっていた。

 ・・・今頃、クマはタケノコを腹一杯に食べて昼寝をしているはず・・・クマには失礼だが、ザックから厚手の袋を取り出し、笹藪に飛び込む。やや長刀になりかけてはいたが、柔らかい先の部分を折り採りながら藪を徘徊する。あっという間に1時間余りが過ぎた。

 それにしてもタケノコは重くかさばる。家に帰って処理すれば、2/3余りは捨てるのだが。今度は、小沢が流れ込む湿地に、ミズの大群生が目に止まった。赤くて太いものを間引くように採取する。どうも食える物に目が向き、遅々として前に進まない・・・。お陰でサブザックは、破れんばかりに膨らみ、荷の重さでヨレヨレになりながら車止めに辿り着く。
名前の由来

 葉が大きく、果実がホオズキ(酸漿)に似ていることから、「大葉溝酸漿」と書く。
花言葉 純粋な人
オサバグサ
オサバグサ(筬葉草、ケシ科)

 日本特産の1属1種。葉はシダの葉に似ている。真ん中に筋があり、左右に羽根状の葉がつく。花茎の上部に花が多数つく。花は白い花びらが4枚あり、花の下に長い花柄がついている。シダではないが「花が咲くシダ」にも見えるので、確かに珍しい植物である。ある所にはあるが、ない所には全くないのも不思議な草花である。
生育場所 亜高山の針葉樹林やブナ帯の下草、稀に沢沿いにも自生している。
花 期 6~8月 草丈15~25cm
名前の由来

 シダの葉に似たオサバグサの葉を、縦に二つに切り分けると、機織りに使う筬(おさ)に似ていることから、「筬葉草」と書く。
日本特産の変わり物・・・東の横綱・オサバグサ

 葉だけ見るとシダ植物に見間違える。それだけでも変わり物の筆頭だが・・・これに良く似た植物が世界中どこにもないという。オサバグサ属は、オサバグサ一種で、日本に自生するだけという変わり物。そんな日本特産でかつ変わり物の植物の筆頭は・・・東の横綱がオサバグサ、西の横綱はキヌガサソウだと答える専門家もいる。こういうランク付けもオモシロイ。
ズダヤクシュ
ズダヤクシュ(喘息薬種、ユキノシタ科)

 群生することが多く、花も葉も特徴的で印象に残る草花である。花は白色で、花弁は糸状。ややまばらなブラシ形の花序をつくる。ガクが花のように見える。花後に実がつく。葉は切れ込みの浅いモミジ形で、根元から出る葉と茎につく葉とがある。同属の仲間なし。
花 期 6~8月 草丈10~30cm
名前の由来

 長野県では、ゼンソク(喘息)のことをズダという。この植物は、喘息に効くので、「喘息薬種」と書く。昔から、咳止めの民間薬として利用された。
バイカモ
バイカモ(梅花藻、キンポウゲ科)

 「バイカモや 蛙飛び込む 清流の音」・・・下手な俳句でも詠みたくなるようなシーンであった。昔は高倍率ズームがなく、カメラを持って目一杯近づいたが、全く動く気配がなかった。カエルも人間と同じく、清流と花が殊の外気に入っているらしい。

 バイカモは、湧水など水のきれいな所に生え、山間の冷たい清流を好む。茎は緑色で細長く、流れに沿って下流になびく。葉は糸状で、茎の節から1本の長い花柄を水面上に出し、梅花状の白い花を開く。

花 期 6~8月 草丈1~2m
名前の由来・・・5弁の白い花を梅の花に例えた藻類という意味で、「梅花藻」と書く。
食 用・・・クセがなく、よく洗って生で使用する。三杯酢又はマヨネーズで和えると、シャキシャキした食感を楽しめる。味噌汁も美味い。
参 考 文 献
「奥羽山脈 雪国の草花」(雪国の草花刊行会)
「ハイキングで出会う花 ポケット図鑑」(増村征夫、新潮文庫)
「山渓名前図鑑 野草の名前 春・夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「秘境・和賀山塊」(佐藤隆・藤原優太郎、無明舎出版)
「すぐ役立つ山の花学」(小野木三郎、東京新聞出版局)