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山野の花シリーズ28 チョウカイフスマ、ミヤマキンバイ

INDEX チョウカイフスマ、ミヤマキンバイ
チョウカイフスマ(鳥海衾、ナデシコ科)

 鳥海山の特産種で、乾燥に強く、他の植物が生育できないようなところに群落をつくる。細くて柔軟な根をもち、大きな株を作る。葉は対生し、茎とともに毛がある。花の色は白く、花径は15mmほどで、5弁花が星形に開く。母種は、メアカンフスマだが、それより葉が一回り大きく目立つ。大きな群落に出会うと、一面白い星がキラキラと輝いているように見え、実に美しい。
生育場所

 標高2,000m以上の新山や外輪山周辺の荒涼とした岩礫周辺には、鳥海山の特産種「チョウカイフスマ」が群生している。何度も大噴火を繰り返す過酷な環境の中で、一際美しく咲き誇る生命力は感動に値する。
花 期 7~8月 草丈5~10cm  
名前の由来

 鳥海山に産し、葉がノミノフスマに似ていることから、「鳥海衾」と書く。ノミノフスマは、小さい葉を寝る時にかける夜具・フスマ(衾)に見立てたもの。
鳥海山の「夏の妖精」、校章にも採用

 星形の白花・チョウカイフスマは、鳥海山の「夏の妖精」とも呼ばれている。背丈は低いが、花の形が実に美しい。学校の校章にも多く採用されている。その一つ遊佐町立蕨岡小学校の校章は、チョウカイフスマと早蕨(さわらび)を組み合わせたデザインになっている。その思いは、チョウカイフスマのように、困難に耐えて強くたくましく、早蕨のように、すくすく育ってほしいとの願いが込められている。
▲ミヤマキンバイとチョウカイフスマの混生
▲イワブクロとチョウカイフスマの混生

 「火山性の崩壊地や礫地には、コマクサ、タカネスミレ、イワブクロ、チョウカイフスマが現れることが多い。」(「日本の山と高山植物」小泉武栄、平凡社)
▲溶岩ドームのような荒々しい新山・・・鳥海山は活火山

活火山と火山特有の植生

 火山は、噴火によって災害を引き起こす恐ろしい現象だが、噴火が終われば、その跡に美しい景観、湖、滝、火山特有の植生を残してくれる。日本百名山の半分以上が火山で、国立公園もその大半が火山である。「火山では火山活動によってしばしば植生が全面的に破壊され、その跡には時間の経過とともに植物が戻ってくる。したがってそこには遷移の初期または途中の段階にあたる特殊な植物群落が成立することが多い。」(「日本の山と高山植物」小泉武栄、平凡社)

 秋田県内には、十和田、秋田焼山、八幡平、秋田駒ヶ岳、鳥海山、栗駒山 の6つの活火山がある。うち、4つが花の百名山に入っている。鳥海山の固有種・チョウカイフスマや秋田駒ヶ岳のコマクサ群落などは、活火山特有の代表的な植物である。
ミヤマキンバイ
ミヤマキンバイ(深山金梅、バラ科)

 花は鮮やかな黄色で、5枚の花弁が盃形に開く。丸い大きな株となり、よく目立つ。葉は、イチゴの葉にそっくりな3枚の小葉からなり、円形で先は鈍い。表面に光沢があり、縁に鋸歯がある。
生育場所 高山の砂礫地、草地
花 期 6~7月 草丈10~20cm  
名前の由来・・・高山に生え、花が金色の梅花に似ていることから、「深山金梅」と書く。
花言葉 幸せ
 鳥海山の新山や七高山周辺は、このミヤマキンバイの黄花とチョウカイフスマの白花が一際目立つ 。秋田駒ヶ岳では、6月中旬頃、横長根はミヤマキンバイの一大群生地で、この花が咲くと黒い砂礫地がパッと明るくなる。
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「山渓名前図鑑 野草の名前 夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社) 
「日本の山と高山植物」(小泉武栄、平凡社)