本文へスキップ

山野の花シリーズ31 ニッコウキスゲ

ニッコウキスゲ(日光黄菅、ユリ科)

 夏山を一面黄色の絨毯を敷き詰めたような大群落は、いつ見ても素晴らしく登山者に人気の高い花である。一日花で、朝咲いて夕方にはしぼんでしまう。葉は2列に扇形にでて長さ60~70cm、鮮やかな緑色で上半部は湾曲して垂れる。葉の間から花茎をだし、先は短く枝分かれする。濃い橙黄色の花を3~10個つけ、下から順にラッパ状に開く。花は径7cmぐらいの漏斗状鐘形。花被片は6個、いずれも倒卵状被針形で上部で少し反り返る。
▲一株に7つほどのツボミをつけ、一日一個づつ花が咲いていく。だから見頃は一週間程度。
生育場所 山地~高山の草地や湿地(写真:鳥海山)
花 期 7~8月 草丈50~80cm  
名前の由来

 栃木県日光に多く、黄色い花を咲かせ、葉がスゲ(カヤツリグサ科)に似ていることから、「日光黄菅」と書く。別名はゼンテイカ(禅庭花)。
▲ニッコウキスゲは、一日花なので開花している時期が短い。ただし、満開時に当たると、夏山の花見として最高の絶景を楽しむことができる。
花言葉 晴れた日の喜び、心安らぐ人
山菜としても美味しい草花

 開花直前のツボミ、開き始めの花を摘み、天ぷらなどフライ料理に。ポタージュなどのスープに浮かべる。さっと茹でて、冷水にとり、おひたし、辛子ドレッシング、酢味噌、寒天寄せなど、食感と香りが素晴らしい。さらに鮮やかな花の色を楽しむこともできる。また、根の部分がかなり美味しいらしい。ただし、高山植物保護区での採取は厳禁なので注意。
▲人間だけでなくニホンジカも大好物らしく、霧ヶ峰や尾瀬などでは食害が深刻。お花畑の周囲に電気柵を設置してニホンジカの侵入防止対策を実施しているという。
秘境の花園「天狗湿原」のニッコウキスゲ(八幡平大深沢源流)

 無人境に広がるお花畑は、とにかく静か。空気も雰囲気もまるで違う。花の群れは、湿原を渡る風に揺れ、時折カッコウの鳴く声が静寂を破る。夢心地に浸りながら、のんびりシャッターを押す。
気軽に鑑賞できるお花畑①・・・八幡平・大場谷地のニッコウキスゲ

 北に向かって玉川ダム・宝仙湖、玉川温泉を過ぎると、ほどなく左手に花の絨毯が目に止まる。大場谷地は、湿原に木道が整備され、誰もが気軽に高山植物を鑑賞できる。大場谷地の標高は1000m前後。
気軽に鑑賞できるお花畑②・・・八幡平・黒谷地湿原のニッコウキスゲ

 黒谷地湿原登山口は、八幡平アスピーテライン黒谷地バス停にある。登山口の駐車場は、30台ほど駐車できるスペースがある。入口からいきなり花の楽園モードに突入する楽しいコースである。
鳥海山のニッコウキスゲ

 標高1700m、鳥海湖を望む御浜小屋周辺及び標高1690m前後の八丁坂周辺(上の写真)のニッコウキスゲが素晴らしい。
和賀山塊 薬師岳・和賀岳のニッコウキスゲ

 薬師岳の標高1200m前後の風衝草原に広がるニッコウキスゲ(上の写真)の群落と、和賀岳山頂(1440m)の北斜面に咲くニッコウキスゲの群落が素晴らしい。
秋田駒ヶ岳のニッコウキスゲ

 男岳北面の草地が最大の群生地。上の写真は、そのニッコウキスゲ群落から田沢湖を望む。その他男岳に向かう南北の斜面にニッコウキスゲの群落が点在している。(写真:大石礼之輔)
▲レンゲツツジとニッコウキスゲの競演・・・これまた美しい。
▲ニッコウキスゲとワタスゲ群落
▲夏の湿原は、コバイケイソウの花が終わると、ニッコウキスゲの花が次々と咲き始める。夏山を代表する大形の花・コバイケイソウとニッコウキスゲは、いつ見ても華やかで美しい。だから、何度拝んでも飽きることがない。
参 考 文 献
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「山渓名前図鑑 野草の名前 夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
「高山植物ポケット図鑑」(増村征夫、新潮文庫)