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山野の花シリーズ34 モウセンゴケ・ハクサンフウロ・・・

INDEX モウセンゴケ、ハクサンフウロムシトリスミレ
モウセンゴケ(毛氈苔、モウセンゴケ科)

 日本の代表的な食虫植物。葉の表面に赤紫色の腺毛が多数ある。その腺毛の先から甘い香りのするネバネバした粘液を出す。その甘い香りで誘い、小さな虫を捕える。腺毛や葉身が虫をがんじがらめにするように内側に巻き込む。2~3枚の葉が協力して虫を絡め取ることもある。消化された虫は、腺毛から吸収され栄養になる。

 賢い植物で、食べられるものと食べられないものを区別できる。例えば、石ころや金属片を葉の上に置くと、最初腺毛が少しだけ動くだけで粘液も追加で分泌されない。花は白色で、ゼンマイのように巻いた花茎上部に総状につき、下から咲いていく。
生育場所

 山地~高山の日当たりの良い湿地。栄養が乏しく、酸性の湿原でもモウセンゴケは生育する。花の咲く頃、食虫の葉は粘りを増し、赤く色付いてくるので、湿原全体が赤味を帯びたように見える。食虫植物の代表的な存在だけに愛好家が多い。小さい頃は、ナメクジに食べられるという。
花 期 7~8月 花茎を真っ直ぐに伸ばして、花径10~15ミリくらいの白花をつける。
名前の由来

 本種が群生している場所は、赤い毛織の毛氈(もうせん)を敷いたように、地面低く生える様子を苔に見立てたもので、「毛氈苔」と書く。小さい虫からトンボサイズまで捕獲する。トンボサイズの昆虫は一週間ほどかけて体液を吸う。
食虫植物

 わが国の食虫植物は2科20余種に及ぶ。補虫の方法は、モウセンゴケやムシトリスミレのような粘着式、ハエトリソウやミミカキグサのようなワナ式、ウツボカズラのような落とし穴方式の三種類。

 モウセンゴケは、泥炭地で水気の多い所や水分の多い強酸性の石礫地などに好んで生育している。このような悪条件の中で生きていくためには、養分の不足分を補虫によって賄うようになったといわれている。動物が植物を食べるのは当たり前だが、植物が動物を捕食するという不思議な生態は、心惹かれるものがある。

 モウセンゴケの葉の周りについている腺毛から分泌される粘液には、タンパク質を分解する酵素が含まれているので、モウセンゴケの栄養になる。高橋喜平氏の観察によると、捕食される昆虫は、圧倒的にトンボが多いという。ただし、その理由は不明とのこと。
ハクサンフウロ
ハクサンフウロ(白山風露、フウロソウ科)

 花は、一般的に鮮やかな紅紫色の5弁花で、よく目立つ。花弁に縦の縞模様があるのが特徴。花弁のつけ根の部分には白い軟毛が生える。花の真ん中に10本の雄しべが放射状に並ぶ。ツボミの時は垂れぎみにつくが、花が咲くと上を向く。葉は、掌状に5裂し、裂片は2~3回中裂する。

 男鹿には、1948年、原寛博士が発表したハマフウロの1品種オガフウロがあるが、見た目では区別が困難。現在は、区別化していないことが多いという。
▲花の色は、薄いものから濃いものまで多様である。
生育場所 高山の草地
花 期 7~8月 草丈20~50cm
名前の由来

 石川県の白山で発見され、花がフウロソウに似ていることから、「白山風露」と書く。フウロソウとは、花の上の露が風で動くという美しい情景にちなんで、「風露草」と書く。  
花言葉 変わらぬ信頼
ムシトリスミレ
ムシトリスミレ(虫取菫、タヌキモ科)

 日本の代表的な食虫植物で、葉の表面がネバネバした消化粘液を分泌し、小さな虫を捕食する。花は青紫色でスミレに似ているが、タヌキモ科の植物。

生育場所 高山の湿った草地や岩場
花 期 7~8月 草丈5~10cm
名前の由来・・・花がスミレに似ており、葉が虫を捕食することから、「虫取菫」と書く。(写真:大石礼之輔)

花言葉 幸福を告げる
参 考 文 献
「八幡平の不思議 新種アザミ発見」(高橋喜平、岩手日報社)
「秋田の山野草300選」(秋田花の会)
「山渓名前図鑑 野草の名前 夏」(高橋勝雄、山と渓谷社)
「山渓カラー名鑑 日本の野草」(山と渓谷社)
「高山植物ポケット図鑑」(増村征夫、新潮文庫)